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散文詩

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#色彩

君を捨てる 《詩》

君を捨てる 《詩》

「君を捨てる」

君を捨てる 

其の傷跡は誰にも見えない

深さや形を変えてなおも
消える事無く記憶の中に生きている

僕は独り君との足跡を辿る

悲しみ 

動揺 

葛藤を含む象徴的な暗号

誰にもわからない様に詩的に変換し
吐露する事

それが唯一の
逃げ場である事を僕は知っていた

斬殺 斬首された風の無い深淵

其処に残された血を

跡形も無く流し去る激しい雨

僕は捨てられ 僕は君を

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小さな鍵 《詩》

小さな鍵 《詩》

「小さな鍵」

君が自由である事 

それが僕の求める

ただひとつの事だった 

君の中にひっそりと隠された
秘密の小さな鍵

其の秘密の持つ
孤独さを浮かべた君の微笑みを

僕は見逃さなかった

色彩が奪われた訳じゃ無い

白も黒も同じ色には変わりない

それにやっと気が付いたんだ

僕等はお互いの欠片を交換し合い 

其の欠片を大切に胸にしまった 

誰にも気付かれない様に
 

僕等の記憶

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I’M FLASH 《詩》

I’M FLASH 《詩》

「I’M FLASH」

彼女は僕の名前を呼んだ 

確かに彼女の声だった

その言葉は複雑で精巧な

巨大な装置が動かしている

世界の空中に浮かんでいた

僕はその名前を
側からぼんやりと眺めていた

彼女は

僕の名前をもう一度だけ呼んだ

見慣れた辺りの景色の中で
しばらく眠っていた

そんな感覚に包まれて

僕は目を覚ました

全ては夢である事を知った

彼女の柔らかな唇と声は

全世界

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最終章 《詩》

最終章 《詩》

「最終章」

其処に君が居ると

思い込むんじゃ無くて

其処に君が居ない事を

忘れてしまえばいい

それが僕の恋の始まりだった

僕等を隔てる
距離や周りの雑音は消え去り

僕は常に君を感じる事が出来た

遠くに輝く星はいつも

僕の手を伸ばした少し先にある 

決して触れる事の出来ない虚しさに 

押し潰されそうになっていた

数々の記憶の中から

質の良いものだけを

セレクトして再生した

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鏡の国 《詩》

鏡の国 《詩》

「鏡の国」

すすきの穂を揺らした十月の風

金木犀の香り 

銀杏の色彩

微かな
冷たさを含んだ風を感じていた

細長い雲が線を引く青

空は高く 
高過ぎる空を見上げていた

その情景が映し出す過去の特異点

喪失の中に絡まる愛憎は

やがて再生に似た世界の終わりを
導く柔なか弧を描く

細い塀の上を辛うじて
バランスをとりながら歩く

静かに暗唱を繰り返す

鏡の国に君は居た 

そして今

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月見草 《詩》

月見草 《詩》

「月見草」

いつも僕は青空を望んでいた 

其処に澄み渡る
青がある事が当然の様に

燃える太陽 

その光を受けて暗闇の星は輝く

眠れない僕達は

夜空の月を連れて
真夜中に外へ出かけた

真白な淡い光に
つつまれて夢を見る 

月見草

静かな森の湖 

独りじゃない 嬉しかった

ふたりは朝が来るまで愛し合った

僕等の真実 君の好きな青と白 

その色で世界は出来ていた

そして 

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落ち葉 《詩》

落ち葉 《詩》

「落ち葉」

癖のある髪  

瞳にかかる前髪

夢行きの列車 色彩 景色

初めて僕に微笑んでくれた夜

君と歩いた街並み

君とよく行ったお気に入りのカフェ
君の好きな あの歌

君の仕草と口癖 
真似して笑わせた
 
君の選んでくれた服

君の好きな色

至るところに溢れた思い出

あれから僕も少しは強くなったよ

本当だよ 
君が居なくても大丈夫 

なんて

独り言 呟き 消せない想い

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かつてライオンだった少年へ 《詩》

かつてライオンだった少年へ 《詩》

「かつてライオンだった少年へ」

君の居る街には 
まだ雨が降っていますか

陽の光 
花や木の葉の色彩が見えますか

街の雑踏 
風の音が聞こえますか

穏やかな時は流れていますか

其処にも死はありますか

捨て去った麻薬や拳銃

かくれんぼの続き

僕は今でも君を探しています
きっと君を見つけてみせます

見つけた時には笑ってください

始めて会った時と同じ笑顔で

僕は何も聞かずに
君の手

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