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散文詩

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2023年9月の記事一覧

マリーゴールド 《詩》

マリーゴールド 《詩》

「マリーゴールド」

窓から射し込む秋の太陽が

薄い光のベールを作りだす

彼女の膝元を
柔らかく包み込む様に

窓の外の光は
静かに地面に降り注ぎ

花壇のマリーゴールドが小さく揺れていた

僕は窓を開け放ち

外の空気を部屋の中へ入れた

彼女は
読みかけの小説に栞を挟み

バックの中に納めた

彼女を抱き抱えて 

玄関脇の車椅子に乗せた

もういいよ 
離婚しても もういいよ

いつも彼

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ふたりの旅 《詩》

ふたりの旅 《詩》

「ふたりの旅」

救いになるのは金なのだろうか

それとも金に似た愛なのだろうか

酷似してはいるが全く違う

満たすと言うところは
同じかもしれない 

外面的であるか
内面的であるかに過ぎない

随分と長い時間が
過ぎて行った気がした

俺はサングラスをかけたまま
真夜中を見ていた

煙草を吸い終えたら旅に出かけよう

逃げるんじゃないさ 
弾き出されただけさ

俺もお前も

誰もがいつも

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スコール 《詩》

スコール 《詩》

「スコール」

ドーナツショップのカウンター

穴が開いてるから
可愛いんだよねって

ドーナツの穴から僕を覗いた

茶色い瞳が笑ってた

駅ビルの旅行代理店の前で

南の島のパンフレットを眺めた

前に首里城に
行った時の事を思い出していた

いきなりのスコールで
ずぶ濡れになって

どちらが雨男なのか雨女なのか

そんな話しをしたよね

サーターアンダギーとか海葡萄  

ブエノチキンとかオリ

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オレンジジュース 《詩》

オレンジジュース 《詩》

「オレンジジュース」

純粋で透明な氷が
オレンジジュースに溶けていく

透かして窓の外を見渡す

不均一な混ざり合いの中 
屈折した街の灯りが見えた

押し付けがましく喋る
テレビのスイッチを切り

君を抱き寄せた

僕は剥き出しになった
正直さを隠しきれず

欲望と正比例する様に

深く君の中に沈み込む

真実を示す必要も無く 

リスクを回避する必要も無い

凡庸を固着させ
切り取った様な絵

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静かな風 《詩》

静かな風 《詩》

「静かな風」

君は僕を利用していた 

そしてまた 

僕も君を利用していただけに過ぎないのかもしれない

言い方が悪いね 少し変えよう

君は耐え難い日常を壊す為に

僕の非現実的な
思考から来る言動と行動を欲した

僕もまた
君の葛藤と煩悶の闇の中に

誰にも表現しえ無い
刹那を感じ惹かれていた

それは最初から
わかっていたのかもしれない

君も僕も 

僕たちふたりの話は 
もう終わりに

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メロディー 《詩》

メロディー 《詩》

「メロディー」

マリンブルーの外壁の先に
海が見えた

何処までも青く僕とは無関係に 

陽の光を受け綺麗に輝いている

ショートヘアーをさりげなく
横に流す仕草

耳元にシルバーのピアスが似合ってた

ピアノの蓋を開け 
白と黒の鍵盤にそっと手を置いた

何処かで聴いた事のあるメロディー

海の音が聞こえる部屋

ウォッカを
グレープフルーツで割ったカクテル

マドラーで
掻き混ぜる指先に光る

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CHANEL 《詩》

CHANEL 《詩》

「CHANEL」

僕は海の底から
空を泳ぐ魚の数を数えていた

意味なんて無い

憧れとかそんなものでも無い
 

ただ無数の魚が描く動線を見ていた

彼女の静かな息づかいだけに
耳を済ませて

此処から出て行く理由なんて
幾らでもあったはず

少しずつ
溶け出した街の中で九月の海が
雨に混じり落ちてくる

希望と願い安らぎを 

絶望と諦め寂しさを 

飲み込んで行く様を見ていた

色々な不運

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透明な風 《詩》

透明な風 《詩》

「透明な風」

ラムレーズンの様な星屑が

とりとめもなく
散らばる丘を歩いた

ギリシャ神話を語る
中古品の三日月 

恐ろしい程の孤独な夜に

羽根のペンで書いた言葉

それは何の概念も持たない

昇っては沈む太陽の軌道

僕は文脈と行間の中で
静かに息をしていた

欠落した感性が脱落を纏い

理不尽を抱き企みを育てる

僕が間違えたドアを開けたとしても 

誰一人として気が付かないだろう

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淡い紫色 《詩》

淡い紫色 《詩》

「淡い紫色」

それは眩しく綺麗な光だった

僕の足元を区切り領域を作り出す

彼女は光の中に居て  
僕は影の中に居た

その影に色は無かった

誰にも害も罪も無い

この世界にふさわしい
愛の歌が街に流れていた

僕は その歌の
タイトルも歌手名も知らなかった

その歌の歌詞さえも
頭の中に残らなかった

彼女の長い髪が
幾何学的な線を描き風に揺れた

交わした言葉は
散文的で表情を持たず

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意識の隙間 《詩》

意識の隙間 《詩》

「意識の隙間」

何処にも行き場所の無い
気持ちの羅列を眺めていた

それは心の中を
いつまでも彷徨い続けた

人間万事塞翁が馬と
書かれた旗を持って歩く老人

すれ違い様に目が合った

僕は煙草が燃え尽きるまでの時間 
君に恋をしていた

もうその娘の名前すら思い出せない

意識の隙間ひとつひとつに

開きっぱなしの本の同じページを

何度も何度も
独りで読み返していた僕が居る

僕は何処で間違

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