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死にぞこないの趣味の世界

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#ポップス

フランソワーズ・アルディさん、死去

フランソワーズ・アルディさん、死去


伝説のカップル
6月11日、フランスを代表する歌手フランソワーズ・アルディFrançoise Hardyさんが亡くなられた。80歳だった。長年、癌と戦われた末であった。痛みはかなりのものであったらしく、尊厳ある死を認めるよう、求めていらした。

アルディさんは、いつでもどこか寂しげな、そして優しく、優美なかたであった。
少なくともテレビのインタビューを観ていて、私はそういう印象を得た。
ツアーや

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コントレックスの、おもしろいCM

コントレックスの、おもしろいCM

1960年代から
フランスのミネラル・ウォーター、コントレックスのCMはすごい。
1960年代から21世紀まで、かわることなく、BGMがフランソワーズ・アルディの「さよならを教えて」なのだ。

おそらく歌詞で、繰り返される「エックス」という音。
それが「コントレックス」と合ったからだろう。

当初はアルディの次のような「語り」が入っていた。
Quand je bois Contrex je me

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セルジュ・ゲンズブールが好き!

セルジュ・ゲンズブールが好き!



セルジュ・ゲンズブール(1928-1991年)が好きなひとは、とりわけ生真面目で頭のかたい〈優等生〉が支配する21世紀の社会においては、貴重だと思う。なぜなら適宜にゆるく、適宜に軽く、清濁あわせ飲んだ、包容力ゆたかな人だろうから。

以下、彼の独白を創作してみた。

コンプレックス俺、ユダヤ系じゃん。
それに、ブサイクだ。それくらい自分でわかる。
子供の頃、絵描きの父に憧れた。
俺も絵を描いた

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フレンチ・ポップスのレジェンド、ルノー・セシャンRenaud Séchanの魅力

フレンチ・ポップスのレジェンド、ルノー・セシャンRenaud Séchanの魅力


とことん反体制ルノーはつねに左翼的立場からプロテストソングを歌ってきた。
だから21世紀から見ると、「いっけん」古くなってしまった楽曲もある。
例えば「六角形Hexagone」は1975年の発表。
そのなかでルノーが批判した死刑制度は、フランスでは1981年に廃止された。
それゆえ「六角形」はもはやアクチュアルな歌とは言えない。
けれどもジャーナリズムにこだわるルノーの姿に、ある種の普遍性を感じ

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映画『アリバイ・ドット・コム カンヌの不倫旅行がヒャッハー!な大騒動になった件』を観て

映画『アリバイ・ドット・コム カンヌの不倫旅行がヒャッハー!な大騒動になった件』を観て


フィリップ・ラショー春なので心身ともに、だるい。
昨日はつらくて、家から外に出ることすらできなかった。
今日はアツアツのパスタを作って食べようとしたら、口にやけどした。
もう生きていても、愉快なことなんて何もありはしないと思う。
思えば、諦めばかりの人生だった。

憂さ晴らしと思い、軽くワインを飲んで、フィリップ・ラショー(1980年生まれ)のコメディ映画をアマゾンプライムで観た。
『アリバイ・

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やたらと元気だけ良い80年代

やたらと元気だけ良い80年代


春なので天候が不順なせいか、元気が出ない。
仕方がないので元気いっぱいだった80年代を思い出す。
日本でアラレちゃんが「キーン」とやっていたころ、フランスの大衆文化も元気爆発だった。

ジルベール・モンタニェGibert Montagné
1951年生まれ。
彼は目が不自由だ。
でも目が不自由だからと言って、弱さをウリにして、なにか訴訟しているのではない。
訴えているとすれば、「愛し合おうOn

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モクレンの美しさに意味はない -懐かしのディスコ曲「モクレンよ、永遠にMagnolias For Ever」

モクレンの美しさに意味はない -懐かしのディスコ曲「モクレンよ、永遠にMagnolias For Ever」


先日、あるnoteで満開のモクレンの写真を見た。
ふと思い出したのは、「モクレンよ、永遠にMagnolias For Ever」というクロクロ(クロード・フランソワ)の歌であった。

クロード・フランソワクロクロの曲は夏のブルターニュの浜辺でしばしば流れていた。
(フランスの海岸では個人がラジカセなどで音楽を流すことが禁じられている。その代わり、特定の場所でのみ公認施設が〈みんなが知っている〉歌

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〈ふるさと〉を想うフレンチ・ポップスの紹介 -Patricia Kaas, « Souvenir de l’Est »

〈ふるさと〉を想うフレンチ・ポップスの紹介 -Patricia Kaas, « Souvenir de l’Est »


〈ふるさと〉もうすぐ年末年始です。
帰省なさるかたも多いのでしょうね。
友人のひとりは秋田に、もうひとりは茨木に帰るはず。

〈ふるさと〉、つまり考え始めたところ。そして歩き始めたところ。
大事なのは、それがどこだったのかを自分で確認しておくことでありましょう。苦悩してゆきづまったときに、帰ることのできる場所ですから。

それが一冊の本ならば、それで良いのです。
その本が〈ふるさと〉になりま

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夏の思い出に涙するフレンチ・ポップスの紹介 -Marc Lavoine, « On est passé à l’heure d’été »

夏の思い出に涙するフレンチ・ポップスの紹介 -Marc Lavoine, « On est passé à l’heure d’été »

おそらくほぼ誰も知らない。
だってGoogleで検索しても、誰も何も言っていない。
でも個人的に大好きな曲。

歌のつくりマルク・ラヴォワーヌの« On est passé à l’heure d’été »(夏時間)は、パリの夏の情景を歌った曲です。
たいしたメッセージはありません。ストーリーらしいストーリーもありません。
ただラヴォワーヌの、忘れ得ぬ夏の風物が歌われます。
それだけなのに、なぜ

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イガイなようでイガイじゃないフレンチ・ポップスの紹介 -Mylène Farmer, « L’instant X »

イガイなようでイガイじゃないフレンチ・ポップスの紹介 -Mylène Farmer, « L’instant X »

私の庭ではクリスマスローズが満開です。

さて今回ご紹介するのはミレーヌ・ファルメルの「L’instant X(Xの瞬間) 」です。彼女は大抵、高音で歌いますが、この曲ではめずらしく低音の部分が長くて、それはそれで素敵です。

おもたくつらい一週間の日常が始まる。
だから救いを待望する―、そういう内容の歌詞です。
サンタクロースにお願いする品々のなかに抗うつ剤が入っているのが、妙にリアルですね。

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知的で優しいフレンチ・ポップスの紹介 -Alain Souchon, « Foule sentimentale »

知的で優しいフレンチ・ポップスの紹介 -Alain Souchon, « Foule sentimentale »

アラン・スーション(Alain Souchon)の1993年の大ヒット作を紹介したいと思います。
もう30年も前になるんですねえ。
ソ連の崩壊後、グローバル化が進展し、アメリカのライフスタイルが地球規模に拡大する感じだった、そのころの歌です。

テーマは大衆消費社会批判。
難しいテーマです。
だって下手をしたら、お説教ぽくなっちゃいます。
「私も反省したいと思います。これから努力したいと思います」

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強くて美しいフレンチ・ポップスの紹介 -Patricia Kaas, « Il me dit que je suis belle »

強くて美しいフレンチ・ポップスの紹介 -Patricia Kaas, « Il me dit que je suis belle »

日本人がフランス語の歌に持っているイメージって、なんだかブツブツつぶやいている、そんな感じじゃあないかしらん。
もう少し可愛い表現を使うなら、小鳥のさえずりのようにチュチュチュ、そんな感じ。

その一因はフランス語に「ウ」の音が多いこと。
「私は〇〇である」で、既にJe suis(ジュ・スイ)と二音も「ウ」があるのです。
英語のI am(アイ・アム)にまったく「ウ」がないのと比べれば、違いは明瞭で

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