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知的で優しいフレンチ・ポップスの紹介 -Alain Souchon, « Foule sentimentale »

アラン・スーション(Alain Souchon)の1993年の大ヒット作を紹介したいと思います。
もう30年も前になるんですねえ。
ソ連の崩壊後、グローバル化が進展し、アメリカのライフスタイルが地球規模に拡大する感じだった、そのころの歌です。

テーマは大衆消費社会批判。
難しいテーマです。
だって下手をしたら、お説教ぽくなっちゃいます。
「私も反省したいと思います。これから努力したいと思います」みたいな、偽善者の作文になっちゃう。
それは避けたい。

そもそも誰かを何かを攻撃したくもない。
プロテスト・ソングなんて、幼稚だ。
もう大人なんだから。
それに、自分のいまの気持ちとは違う。

なぜなら所詮、自分も、消費という快楽に飢えたグロテスクな大衆のひとりにすぎないから。
ひとごみに酔い、めまいをおこし、ふらふら歩きながら、ずっとまえから気づいていた。自分だってこの群れのひとりにすぎないのだと。

だから大衆に抵抗するかたちで、自分の優しさを守ろうとしても、孤独になるだけでどうしようもない。

だからといって、べつに自嘲したくもない。
みじめになるだけだ。

そもそも大衆消費社会を批判して、その次にどこへ行くのか。
宗教ですか。ナショナリズムですか。エコロジーですか。
そういうのも違う気がする。熟慮が足りない、ずるい感じがする。
〈学校の先生〉じゃあないんだから。

かくして大衆消費社会批判とはなかなか難しいテーマなのです。
でもスーションは見事にそれをやってのけました。
僕はそこに知性を感じます。

彼は大衆を、愚鈍な連中としてみなすのではなく、実は、繊細で可哀想なひとたちなのだと捉えました。そう、実は、感じやすくて涙もろいのだと。
そこをコンセプトの中心にして、この歌Foule sentimentaleをつくった。

歌詞を最初の部分だけ、ちょっと訳してみます。

On l'a là la vie en rose ばら色の生活
Le rose qu'on nous propose 僕らがオススメされるばら色は
D'avoir les quantités de choses たくさんのモノを所有すること
Qui donnent envie d'autre chose 他のモノが欲しくなるようなモノを

Ah et, on nous fait croire ああそう、僕らは信じさせられるんだ
Que le bonheur c'est d'avoir 幸福とは所有することだと
De l'avoir plein nos armoires 僕らのタンスいっぱいに所有することだと
Dérision de nous, dérisoires 僕らなんて取るに足らないのに 取るに足らない僕らなのに

 
Car, foule sentimentale だって僕らはセンチメンタルな群衆
On a soif d'idéal 理想に渇いているんだ
Attirée par les étoiles, les voiles 星々に、船の帆に、魅せられて
Que des choses pas commerciales 商業的じゃあないものが欲しいんだ
Foule sentimentale センチメンタルな群衆
Il faut voir comme on nous parle 僕らがどんなふうに話しかけられるか見てなくちゃ
Comme on nous parle どんなふうに話しかけられるかをね

 
レトロな感じの美しいメロディーです。
ビデオは好き嫌いがあるかもしれませんが、曲は本当に美しいです。



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