西願広望

パリ第1大学歴史学博士。 若い方々、また一般の方々との関係を大事にしたくて、パブリック…

西願広望

パリ第1大学歴史学博士。 若い方々、また一般の方々との関係を大事にしたくて、パブリック・ヒストリーを実践しようと、noteを始めました。どうぞよろしく。

マガジン

最近の記事

  • 固定された記事

何故かくも自分の命にしがみつくのか

聖書では「友のために自分の命を捨てること、これ以上に大きな愛はない」(ヨハネによる福音書第15章)と、自己犠牲の大切さを唱えている。 そもそも古代ギリシア以来、西洋では、自分が所属するポリスのために自分の命を犠牲にすることは、民主政の観点からも重視されてきた。 また昭和の日本では、『ジャングル大帝』、『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』、『風の谷のナウシカ』などが、自己犠牲でフィナーレを飾った。 自己犠牲の理念を否定した現代日本しかし21世紀の日本社会は自己犠牲の理念

    • からだと孤独

      この夏は自律神経が三度も壊れました。 もうトシですね。 授乳 昔の話になりますが、モトヨメが赤ん坊に母乳をあげながら、しきりと「疲れる」とおっしゃっていました。 しかし傍から見ると、彼女は横たわったり座ったりして、あとは赤ん坊が生きるために必死で飲んでいるだけです。 どうして疲れるのでしょう。訳がわかりませんでした。 僕は、当時、地球で最も愛していた女性の疲れを理解できませんでした。 だからとても寂しかった。 熱 まったくもってひとの身体は、ほかのひとにはわからない。 例

      • 開高健『最後の晩餐』を読んで

        食と情報 開高健によれば、食を書くには、文章力が必要なのだそうだ。 たしかに「絶品」「筆舌に尽くせぬ」「おいしい」「とろける」ばかりでは、ダメである。 開高健の『最後の晩餐』は食に関するエッセイ集だ。 そのなかで開高は、一般人の口にはふつう入らないものを、読者になるべくわかりやすく伝えようとした。そして圧倒的な情報量を用いて、食材を、料理を、描写した。 本書『最後の晩餐』の最大の問題点は、まさにその膨大な情報量である。 あまりにも情報量のボリュームがすごすぎて、読者が消化

        • スーパーで北海道産の南瓜が安かったので、煮物をつくった。 この逸品をつくるたび、いつもバクバク食べてくれた女の子を思い出す。 今頃、彼女は、スパイシーなカレーが得意な男の腕のなか。 僕の南瓜の煮物は、ほのかな塩味が、甘味を増す。 おなかは思い出でいっぱいさ。

        • 固定された記事

        何故かくも自分の命にしがみつくのか

        • からだと孤独

        • 開高健『最後の晩餐』を読んで

        • スーパーで北海道産の南瓜が安かったので、煮物をつくった。 この逸品をつくるたび、いつもバクバク食べてくれた女の子を思い出す。 今頃、彼女は、スパイシーなカレーが得意な男の腕のなか。 僕の南瓜の煮物は、ほのかな塩味が、甘味を増す。 おなかは思い出でいっぱいさ。

        マガジン

        • おかしな世界
          89本
        • 死にぞこないの趣味の世界
          115本
        • つぶやき
          195本
        • ボクの戦争論
          50本
        • きょういく
          37本
        • 植民地と近代フランス
          24本

        記事

          戦争博物館と郷土愛の謎 ―呉・知覧・鶉野・東大和

          呉 僕が2017年に訪問した呉の大和ミュージアムには、呉の郷土愛への、ある種の〈おもねりへつらい〉がある。 それは呉市の人々を喜ばせるのかもしれないが、僕のような東京生まれ東京育ちの人間をしらけさせる。 ところで呉に大和ミュージアムがあるのは、呉で戦艦「大和」が建造されたからである。 そもそも呉には、1889年、呉鎮守府と同時に造船部が設置された。1903年になると、呉海軍工廠ができた。その後、呉海軍工廠は巨大化し、工員数は横須賀・佐世保・舞鶴の海軍工廠の合計をこえるほど

          戦争博物館と郷土愛の謎 ―呉・知覧・鶉野・東大和

          東大和市旧日立航空機変電所訪問記

          ヘッダーの画像は、米軍の爆弾の模型。 「さわらないで(ばくはつはしませんが)」の注が可愛い。 入口から入って最初に見ることができる。 ちょっとほのぼのした気持ちになれて、イイと思う。 志村けんが「さわっちゃ、やーよ」と言っているみたい。 東大和へ今朝、東大和まで行ってきた。 昨日、急に思い立ったのだ。 ひさびさに〈おしのびの〉遠足である。 こういうことが僕にはしばしば起きる。 以前も、大学の組合の仕事でいろいろ忙しかった僕は、急にすべてを放り出して、携帯電話を携帯せずに、

          東大和市旧日立航空機変電所訪問記

          例えば「世界遺産」に認定されれば、ソレはもはや日本だけのものではなくなる。 それって寂しくないですか。 例えばシンガーソングライターは、ある楽曲が売れすぎると、寂しく感じるそうだ。だってせっかくの自分だけの大切な思い出が、カラオケで歌われるから。 いずれ悲しき、薄利多売。

          例えば「世界遺産」に認定されれば、ソレはもはや日本だけのものではなくなる。 それって寂しくないですか。 例えばシンガーソングライターは、ある楽曲が売れすぎると、寂しく感じるそうだ。だってせっかくの自分だけの大切な思い出が、カラオケで歌われるから。 いずれ悲しき、薄利多売。

          台風10号「サンサン」が終わったら、こんどは台風11号「ヤギ」が発生したとか。 12号は「リーピ」、13号は「バビンカ」と名づける予定だとか。 台風を身近に感じて防災意識を高めてもらうのが目的なら、もう少し別な名前を考えたほうがよいのでは? 「ゴジラ」とか。「ラオウ」とか。

          台風10号「サンサン」が終わったら、こんどは台風11号「ヤギ」が発生したとか。 12号は「リーピ」、13号は「バビンカ」と名づける予定だとか。 台風を身近に感じて防災意識を高めてもらうのが目的なら、もう少し別な名前を考えたほうがよいのでは? 「ゴジラ」とか。「ラオウ」とか。

          映画『ジョーカー』を観て

          ジョーカーと大衆運動映画『ジョーカー』(アメリカ、2019年)をアマゾンプライムで観た。 社会からの落ちこぼれがうまく描けていた。 面白いのは、落伍者の主人公が、同じような境遇のひとたちの共感を得て、最終的に落伍者たちによる暴動の象徴にまつりあげられるところである。 実際、近年欧米では、フランスの「黄色いベスト運動」のように、旧来の労働組合とは無縁のロンリーウルフたちが群れを成す暴動が活発化している。 日本の落伍者たちしかし日本では、落伍者は孤独のまま、特攻して、幾人かを

          映画『ジョーカー』を観て

          某女子短で盛りあがった話題。 いつどの機会で、初めてスッピンを見せるか-。 初デートは化粧するわな。 しかしもしもその男とウマがあって一緒に住むとかなったら、いつかはどこかでスッピンを見せねばならないわな。さて、いつどの機会で? 防災対策みたいに「早め」にする? それとも?

          某女子短で盛りあがった話題。 いつどの機会で、初めてスッピンを見せるか-。 初デートは化粧するわな。 しかしもしもその男とウマがあって一緒に住むとかなったら、いつかはどこかでスッピンを見せねばならないわな。さて、いつどの機会で? 防災対策みたいに「早め」にする? それとも?

          また悪夢で起きる。 砂に顔をうずめるダチョウのように、誰かの胸に顔をうずめたいと思う。 でも僕のデカイ顔がはいる胸などないな、とも思う。 こんなはずじゃあなかった。僕の憧れの老人像。 中国の仙人のように飄々としていたかった。 ギリシアのエピクロスの庭園に住むのが夢だった。

          また悪夢で起きる。 砂に顔をうずめるダチョウのように、誰かの胸に顔をうずめたいと思う。 でも僕のデカイ顔がはいる胸などないな、とも思う。 こんなはずじゃあなかった。僕の憧れの老人像。 中国の仙人のように飄々としていたかった。 ギリシアのエピクロスの庭園に住むのが夢だった。

          戦友の会話

          アクション映画 疲れているとき、ハイボールを飲みながらアクション映画を観る。 ダイナマイト大爆発~!みたいなシーンが、疲れた頭に心地よいのだ。 戦友が再会するシーンが好きだ。 堅苦しい礼儀作法は要らない。 むしろヅケヅケ突っ込む。 「遅いじゃないか」 「世話が焼けるぜ」 「懐かしいだろう」 「おまえひとりじゃあ、無理だな」 「おい、早くしろよ」 「うるせえ。紳士らしく感謝しな」 「いい女、紹介するから」 「あばよ」 僕がほしい言葉 以前、僕が、noteのスキの数字が

          戦友の会話

          妄想喜劇映画「六本木のアントワネット」

          ものがたり 1793年10月16日、アントワネットがパリで処刑されようとしていた時だった。 突如、神風が吹いて、彼女は21世紀の東京六本木に、タイムスリップ! 「猿の惑星」に落ちたのかとふらふら徘徊しているところを、参議院議員広瀬ひろみが運転する赤いベンツに衝突。失神してしまう。 困ったひろみは、アントワネットを自分の家に連れて行く。 気がついたアントワネットは、ひろみを召使い扱いする。 最初のうちこそイライラしたひろみだったが、アントワネットが決して「いじわる」なのでは

          妄想喜劇映画「六本木のアントワネット」

          戦国鍋tv -パロディについて

          「戦国鍋テレビ」は、関東圏のローカル放送局が制作していたテレビ番組なので、地方の方は知らなかろうと、御紹介です。 もうかれこれ10年ぐらい前の番組です。 「楽しみながら歴史が学べる」がモットー。 ほんとうに歴史が学べるかどうかは別として、楽しめるのは確かです。 笑えました。例えば、アラフィフ抱腹絶倒確実の、これ。 まじめすぎて重すぎて背中の骨が折れそうな「原爆モノ」や「特攻隊モノ」に比べれば、こんなおちゃらけ「戦国モノ」も、悪くはないでしょう。 パロディ精神満載でした

          戦国鍋tv -パロディについて

          美術館と博物館

          美術館 美術館は楽しい。 なぜなら芸術作品は、芸術家が観てもらうことを想定して、作っている。 たとえ芸術家がこの僕に観てもらうことを想定していなくても、それでも誰かに観てもらうことを想定して、作っている。 それゆえそこにはメッセージを発信する側と受け取る側のコミュニケーションがあらかじ前提とされている。つまり「解」の存在を前提とした「ゲーム」が、成立する。 僕は足繁く美術館に通うほうではない。 それでも、例えば数年前に東京駅で開催された、小早川秋聲の戦争画の展覧会は素晴らし

          美術館と博物館

          京都と姫路で戦争と平和を考える

          8月19日は京都 リニューアルしたばかりの、立命館大学国際平和ミュージアムを視察。 まずは特別展「昭和初期の和服柄に宿る戦争」(7/22から8/22まで)を見学。 当時の子供用の和服に、戦闘機がどのように描かれていたかなどが分かる。 子供服だからといって雑にではなく、丁寧に作られている点に感心する。 長野の無言館の分室もある。こんなとこに!と驚く。 常設展では70メートルに及ぶラインに年表とともに戦争の歴史が描かれている。 年表の最初は大航海時代から。そこから帝国主義

          京都と姫路で戦争と平和を考える