京都と姫路で戦争と平和を考える
8月19日は京都
リニューアルしたばかりの、立命館大学国際平和ミュージアムを視察。
まずは特別展「昭和初期の和服柄に宿る戦争」(7/22から8/22まで)を見学。
当時の子供用の和服に、戦闘機がどのように描かれていたかなどが分かる。
子供服だからといって雑にではなく、丁寧に作られている点に感心する。
長野の無言館の分室もある。こんなとこに!と驚く。
常設展では70メートルに及ぶラインに年表とともに戦争の歴史が描かれている。
年表の最初は大航海時代から。そこから帝国主義の時代に入って、日本の植民地支配、15年戦争と、話は流れる。
展示物は小さい物も含めて興味深いものばかり。
よくぞ立命館という私大だけで、ここまで充実させたと感心する。
説明も濃くて充実している。なによりも客観的なところが良い。
リニューアル前の、日本の戦争の被害と加害を情緒的に非難する、どんよりまっくら「みんな、可哀想」という、あのジメジメした湿気がなくなった。
そして日本の対外戦争史の複雑性・多層性を、欧米の帝国主義の流れに目を配ることで客観的に描いており、考えさせる内容になっている。
ところが20世紀後半の歴史になると、急につまらなくなる。
因果関係の物語が消滅するからだ。
その理由は、1945年前までの展示では良くも悪くも日本が主役だったのが、1945年以降は日本が主役ではなくなるからだ。
そして常設展の最後のコーナー「未来の平和」は、がらんどうだ。
極めて恣意的な世界地図が展示されているだけだ。
照明は明るいが、空虚。
あたりまえだ。未来のことは何もわからない。だからカラッポなのだ。
そして若者は明るい平和な未来を作っていくのですぅ~という、無責任な希望の表明で展示は終わる。
「未来の平和」の展示の仕方はいくらでもあると思う。
例えば「平和の失敗の歴史」。サン=ピエール、ルソー、カント、赤十字、第2インターなどなど。過去にも「平和思想」「平和運動」は存在した。しかしどれもこれも失敗して現代に至る。そのことをどのように受けとめて「未来の平和」を作るのか。
あんなに立派なご先祖様だって不可能だったことだ、いまの若者だって無理さ、となるか。
ご先祖様のお仕事から反省すべき点を探して、それを解決しながら「未来の平和」に歩みを進めるか。
あるいは「近未来SFの歴史」だっていいだろう。宇宙戦艦ヤマトに見る、正しい戦争のやりなおし。機動戦士ガンダムの、戦争のなかに人間の変革を求めるお話。攻殻機動隊に見られる、国家の独立と安全保障をめぐる議論。
または、PSYCHO-PASSサイコパスのようなディストピア社会を示して、未来をそのようにしないためにはどうするか、みんなで考えようという話にも持っていける。
20日は姫路
手柄山の平和資料館と慰霊碑
日本全国の空襲を受けた都市の慰霊碑だ。
不戦の誓というわけで、巨大な刀を地面に刺して「抜きません」のメッセージを込めた記念碑だ。逆アーサー王伝説というわけだ。
自衛隊姫路駐屯地の資料館
(※事前予約要)
どこの駐屯地でもそうだが、資料館には予算がつけられていない。可哀想。
ちなみに隊員と同じ食堂で、同じお昼ご飯を食べることもできる。
令和5年9月1日、防衛省は水産物の消費拡大推進を発表した。そのせいかどうか、20日の昼食はカレイの唐揚げ(骨なし)でした。
鶉野(うずらの)飛行場資料館
行政が主役となって「観光プラス教育」のために作ったであろう資料館。
アニメ『風立ちぬ』の影響も感じた。
戦争遺跡としては滑走路跡、対空機銃座跡、防空壕跡などがある。
資料館は小さいけど、右翼にも左翼にも配慮する作り手の苦労の跡が垣間見えた。
例えば、戦闘機が汽車にぶつかって、多くの死傷者がでる事故を起こした、にもかかわらず、軍部はその事故を隠蔽したといった、負の側面に言及するだけでなく、
戦中、戦闘機を製造した川西航空機の技術は、戦後、救難飛行艇にも応用されていますと、正の側面にも言及している(まるで呉の大和ミュージアム)。
ある問い
同行した、学芸員の方が、
「もしも20歳の自衛隊員のために、歴史博物館を作るとしたら、どのようなものにしますか」という問いを提示してくれた。
もちろん「もしも」の話だ。
ただ博物館である以上、コンセプトが大事だ。
「君たちの大先輩も、日清日露戦争のころから、日本国をまもるために頑張ってきたんだ。君たちも頑張りたまえ」みたいな、教育色に満ち満ちた権威主義的なのは、イヤだ。と言うか、そういうのが好きな人のためには、既に靖国の遊就館がある。二番煎じは要らない。
それにイラクへの派遣や、モンゴルあるいはパプアニューギニアなどでの能力構築支援など、こんにちの自衛隊の仕事は日本の防衛だけではない。
「戦争を繰り返してはいけません」もコンセプトとしてはダメである。
だって自衛隊の存在理由の否定になる。
20歳の自衛隊員が相手なのだ。彼らの未来を真っ暗にしてはいけない。
考え込んでしまった。
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