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掌編小説

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140字から始まる超短編小説です
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#140字SS

私が書く理由

私が書く理由

結婚して数年後に、癌になった。
それまで私にとって死は、いずれは訪れるだろうが、まだ遥かずっと先のものだった。
それが、ふと顔を上げたら至近距離に立っている。
覚悟をした。遺書を書いた。
手術をした。

あれから10年。死はもはや古い友人のようだ。
私は生を歌い続けるだろう……最期まで。

(おまけで頂いた命をどう使おうかと考え中。とりあえず書いた描いたりしてるところです)

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石を食べるのは【掌編小説】

石を食べるのは【掌編小説】

「石を食べるサイがいる。群れを作って町に現れ、石や岩を食べていく。そして数日すると、別の町へと移動していく」

そんな話を、子供のころ作ったことがある。
童話のつもりだった。不思議な世界の。

今は思う。あれはどこにも居場所がなかった自分の、振り下ろせなかった拳だったのではないかと。

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君に恋する5秒前【掌編小説】

君に恋する5秒前【掌編小説】

「がんばれ!」
応援席の私は、バスケの試合を見守る。
シュート。歓声。
「キャプテン、かっこいいね」
隣の友達がささやく。私達はキャプテンの追っかけだ。
なのに今日は、なぜか君に目がいってしまう。ただの幼なじみなのに。走る姿、真剣な横顔。
「かっこいい」
「だよね」
君にドキドキする。

   ☆ ☆ ☆

試合終了。うちの学校は負けた。応援してた私は、会場から出るメンバーを迎えた。
「お疲れ様」

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恋愛前逃走症【掌編小説】

恋愛前逃走症【掌編小説】

誰にでもフレンドリーに接してしまう。
「こんど飲みましょう」のお誘いメールには、「じゃあ友達も呼びますね」と返信を。
がっかりされても気にしない。

すぐ恋が壊れるのは見えている。
幻滅されたくない。傷つきたくない。
ならば最初からスタートしないほうがいい。

恋がしたい。恋が……恐い。

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君と僕の世界は【掌編小説】

君と僕の世界は【掌編小説】

「僕と君とは、持っている世界がぜんぜん違う。
僕は、君のようには作れない。
君も、僕のものは作れない。

ライバルって喧嘩するかい? 嫉妬もするのだろうか。

それでも僕は、君の世界が好きだよ。
応援してる。いつもエールと拍手を送っているよ。

きれいごとの意見かもしれないけどね」

ほら、僕は偽善者だからさ。と彼はシニカルな笑みを浮かべたけれど。

あの時の言葉は本心だったと、わたしは今でも思っ

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豪華賞品【掌編小説】

豪華賞品【掌編小説】

会社の新年度は、いつも運動会がある。豪華な賞品つきで。
今年は山登りだ。皆どんどん進む。私は日頃の寝不足と体力不足で、途中でリタイア。
実行委員の人が付き添いをしてくれた。
「足、痛みますか」
「少し」
「肩を貸しますよ」
イケメン顔が間近に。ドキッとした。
夫とのなれそめの話。

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義務との相克【掌編小説】

右手にアザができた。

すこし痛い。
病院の薬を塗ると痛みは消えた。
でもやめると再発する。

治らない。

理由が分からないまま、アザは手に何年もあった。

大小の変化はたまにある。広がることもあるが、数ヶ月かけてまた元の大きさに戻る。

考えた。
大きさの変化に、法則性はあるのか?

ハッとした。
自分に合わない仕事についた時や、家族サービスが多い時期に、アザは大きくなっていた。

これはつま

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さよならインラブアゲイン【掌編小説】

さよならインラブアゲイン【掌編小説】

僕たちは今日でピリオドを打つ。彼女のアパートに、僕の物はもうない。

「忘れ物は」
「大丈夫」
淡々と確認する。
誕生日などイベントのたびに贈り合ったモノたちも、みな返した。

「それじゃ。……あっ」
彼女は小さく声をあげ、奥にひっこむと、手に小さな何かを持ってきた。

アトマイザー。
そのキャップをはずし、自分の手首にシュッとひと吹きする。

「これも返したほうがいい?」
「持ってていいよ。もと

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雪の恋【掌編小説】

私は雪女よ。
最期に君は笑った。
だから空に還っていくわ。

雪国育ちだったね。
君の純粋さは、雪のように白かった。
クールな所は、雪の冷たさ。
微笑みは、日の下の雪のきらめき。
君の体は、雪肌のなめらかさ──

君の故郷を歩く。君のかけらを探して。
気がつくと山に迷いこんでいた。
雪が降る。ためらいがちに。
ああ、君だね?

自由になった君は、雪の舞いで僕の肩をたたく。僕の頬をぬらし、唇にふれ、

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空からの「おめでとう」【掌編小説】

空からの「おめでとう」【掌編小説】

「あなたのウェディング姿を見るまでは死ねない」と言った祖母は、私が彼と挨拶にいく前に逝ってしまった。

結婚式の日。教会のドアをあけて、ライスシャワーをあびながら階段を下りた時。

ピールリー……
すんだ鳥の鳴き声。
「あ」
涙がこぼれた。祖母の好きなオオルリだった。
見に来てくれたのだ。

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我が家のソーシャルディスタンス【掌編小説】

我が家のソーシャルディスタンス【掌編小説】

コロナで社会生活に影響が。
でも日本人は「食事中はしゃべらずに箸を動かしなさい」と躾られてるし、手づかみで食べるものもない。ハグはせずにお辞儀を。土足はしない。
疫病対策が日常的にある。

うち? うちも昔から出来てるよ。
食事は毎日無言だし。妻とは1m、娘とは2m以内に近づけないよ。
対策はバッチリさ。

あれなんだろう目から水が……

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あこがれに似て、恋に似て【掌編小説】

あこがれに似て、恋に似て【掌編小説】

彼女は明るくやさしい。
誰にでも。
こんな地味な私にも。

(もっと私としゃべって。笑顔ももっと。どこにも行かないで。他の人としゃべらないで──)
蜘蛛の糸のような思い。ずっと自分のそばにいてほしいと願う。他の人をすべて排除したいという思い。

これは嫉妬だ。友情ではなく。
自分を恥じた。

都会への大学進学を機に、引っ越しをすることに決めた。

「行かないで」
駅のホームで涙ぐむ彼女。
「またね

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お酒のアルバム【掌編小説】

お酒のアルバム【掌編小説】

互いの家に、あけましておめでとうとあいさつに行き、甘酒を飲んだ子供時代。

お父さん秘蔵のウィスキーをなめて倒れ、こってりと母親たちに怒られた中学時代。

久しぶり元気? とビールで再会を祝った大学時代。

ワインボトルを真ん中に、別れ話をした社会人3年目。

緊張しながら並んで三三九度を交わした結婚式。

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タイムマシンに乗って【短編】

タイムマシンに乗って【短編】

──タイムマシンがあったら何をしますか?

突然話しかけてきた男がいた。戦後の闇市で芋を買う金もなくさまよっていた時。
懐のにぎりめしを半分に割って、俺にくれた。
路肩にしゃがんでむさぼり食った。3日ぶりの飯が腹にしみた。

──私は、先祖達のプロポーズをぜんぶ見たい。お見合いや、結婚式でもいい。
通りすがりの人として、おめでとうと言いたい。

男がなにを言ってるのか分からなかった。
家族はみんな

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