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愛し愛され輝いて生きるガイドブック

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#夫婦

「シャイニング・ワイルドフラワー~千だって~」第二十話 今の自分を超えたい!

「シャイニング・ワイルドフラワー~千だって~」第二十話 今の自分を超えたい!

今の自分を超えたい!

忠刻ダーリンを失った本多家は、跡取りを弟の政朝様が継ぐことに決まった。私は勝姫を連れ、政朝様にお祝いの挨拶に行った。
おめでとうございます、と頭を下げた私に政朝様は恐縮し、笑顔で言った。
「義姉上、いつまでもこの姫路城に留まり下さい」
政朝様も忠刻ダーリンに似て心優しい方なの。
政朝様のすぐ横に座っていた義父上は、最愛の妻熊ママを失いげっそりとやつれていた。そして勝姫を手招

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「シャイニング・ワイルドフラワー~千だって~」第十九話 涙は明日への力になる

「シャイニング・ワイルドフラワー~千だって~」第十九話 涙は明日への力になる

涙は明日への力になる

「千姫様、あなたは亡くなった秀頼公のお恨みをかっております」

その言葉を聴いた時、背中がゾッと泡立った。
この人の言うことを聞いてはいけない、という思いと、すがりたい、という思いが強烈に交差した。
本能は「近寄ってはいけない!」と赤信号を出し続けた。でも、私は彼女の前に座ってしまった。すぐそばには、ピタリと刑部卿局が張り付いていた。

私の中で、ワイルドフラワーは確かに咲

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「シャイニング・ワイルドフラワー~千だって~」第十八話 愛は試すものではない

「シャイニング・ワイルドフラワー~千だって~」第十八話 愛は試すものではない

愛は試すものではない

私は幸せだった。
忠刻ダーリンや、熊ママや本多パパも幸せだったと思うの。

この時期、姫路城は喜びと愛と光に満ちていた。
姫路城下の民達も、城の外で私達の行列に出会うと、あたたかいまなざしを送ってくれた。
播磨の地はいくつか細かい争いはあったものの、穏やかで作物も豊かに実る良き国だったの。
それはきっとこの土地の神様が、私達をあたかかく受け入れてくれたからだと思うわ。
だか

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「シャイニング・ワイルドフラワー~千だって~」第十一話 生きているだけで、もうけもの

「シャイニング・ワイルドフラワー~千だって~」第十一話 生きているだけで、もうけもの

生きているだけで、もうけもの

刑部卿局に支えられ城を出たわたしは、五十代くらいのおじさんに迎えられた。
「おお、おお、千姫様!よくぞ、ご無事で!!
ささっ、こちらに。家康様も秀忠様も、千姫様を案じてお待ちになっています」
あとで知った坂崎直盛、というおじさん、このどさくさに紛れ、嬉しそうに私の手を取ろうとした。
その手を、厳しい顔をした刑部卿局がピシャリ!とはたいた。
わたしはこの時呆然自失とし

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「シャイニング・ワイルドフラワー~千だって~」第十話 切ない最後のキス

「シャイニング・ワイルドフラワー~千だって~」第十話 切ない最後のキス

切ない最後のキス

砂漠に散った花びらの残骸を懐に抱え、わたしは大阪城に帰った。
万策尽き城に戻ったわたしを、秀くんが笑顔で迎えてくれた。

何の役にも立たなかったわたしは、泣きながら秀くんに抱きついた。秀くんはすべてをわかっていたように、わたしの背中を優しく撫でてくれた。その時決めた。秀くんと一緒にここで命を断とう、と。
わたしはようやく顔を上げ、秀くんを見た。彼はわたしの瞳の中にある決意を掬い

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「シャイニング・ワイルドフラワー~千だって~」第九話 自分がゴールを決めたら、運命が勝手にわたしを運ぶはず

「シャイニング・ワイルドフラワー~千だって~」第九話 自分がゴールを決めたら、運命が勝手にわたしを運ぶはず

自分がゴールを決めたら、運命が勝手にわたしを運ぶはず

徳川との和睦が終わり、条件通り大阪城の外堀を埋める工事が終わった。
「外はワイワイガヤガヤ賑やかね」そう刑部卿局に話しかけたが、彼女はわたしの言葉が聞こえていないように何かを一心に考えている。わたしが彼女の目の前で手を振って、ハッ!と我に返り「どうかいたしましたか?」なんて言うの。
最近の彼女はどこか、おかしい。沈んだ顔をして無口かと思うと、

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「シャイニング・ワイルドフラワー~千だって~」第八話 運命は自分の思いで、変えられる

「シャイニング・ワイルドフラワー~千だって~」第八話 運命は自分の思いで、変えられる

運命は自分の思いで、変えられる

その年の十一月、ついに徳川と豊臣の戦いが始まった。
初めは徳川が有利だったけど、真田丸で豊臣はよく踏ん張った。
わたしはもちろん豊臣の応援をしながらも、心のどこかでおじいちゃまやパパやママ、弟達のことを考えていた。

わたしは城の中でオロオロしながら、自分の身体が二つあれば、いいのに!
わたしが二人いれば、いいのに!そうしたら心置きなくわたしの思いを分け、そこにい

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「シャイニング・ワイルドフラワー~千だって~」第七話 人に嘘をつく時は、まず自分に嘘をついて心をごまかす

「シャイニング・ワイルドフラワー~千だって~」第七話 人に嘘をつく時は、まず自分に嘘をついて心をごまかす

人に嘘をつく時は、まず自分に嘘をついて心をごまかす

慶長十九年八月、秀くんは亡くなった秀くんパパの十七回忌の準備をしていた。十七回忌を行う京都の方広寺は、五年かけて大仏殿を作り、四月に梵鐘が完成させた。
秀くんはそこで大仏の開眼供養をする予定だったの。
ところが、その梵鐘に記された文字が大問題になった。
そこには「国家安康」と記されていたのね。

わかるかしら?
おじいちゃまの名前、徳川家康の「

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「シャイニング・ワイルドフラワー~千だって~」第六話 人生にもし・・・はない

「シャイニング・ワイルドフラワー~千だって~」第六話 人生にもし・・・はない

人生にもし・・・はない

わたしは運命にたかをくくっていた。
たぶん何とかなるわ、てね。
おじいちゃまはわたしに甘い。だから、ほら、わたしの願いも聞いてくれたじゃない?と。
そんなベタベタに甘いわたしは、このまま安穏と秀くんと大阪城で暮らしていけると信じていた。
今のままの暮らしがずっと続くと思っていた。
そんなわけないのにね。
そんなことできないのにね。

おじいちゃまは、いろんなタイミングを計

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「シャイニング・ワイルドフラワー~千だって~」第五話 本当の答えのあり場所、知っている?

「シャイニング・ワイルドフラワー~千だって~」第五話 本当の答えのあり場所、知っている?

本当の答えのあり場所、知っている?

わたしにできることは、徳川のおじいちゃまにお手紙を書くことだった。

豊臣に嫁いでから、おじいちゃまに長らく会っていない。
だけどおじいちゃまはきっとわたしのことを覚えていてくれ、気にしているはずだと確信していた。

「おじいちゃまに、手紙を書きたいの」

形部卿局が侍女に紙と硯を用意され、彼女自ら墨をすってくれた。
その間、わたしは頭の中で、手紙に書く言葉を

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「シャイニング・ワイルドフラワー~千だって~」第四話 いくらセレブでも、お金で買えないものがある

「シャイニング・ワイルドフラワー~千だって~」第四話 いくらセレブでも、お金で買えないものがある

いくらセレブでも、お金で買えないものがある

今朝、ショッキングな話を聞いた。ついに秀くんの側室さんに、お子ができちゃった。その知らせを聞いた時、ズドン!と弾丸で胸を貫かれたように、わたしの心に穴が開いた。覚悟はしていたけど、どっと落ち込んだ。ペタンと畳に座り込み、しょぼくれているわたしに刑部卿局が言った。
「姫様、高台院様にお会いしてこられたら、いかがでしょうか?」

わたしがうなづくと、刑部卿

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「シャイニング・ワイルドフラワー~千だって~」第三話 今を変える魔法の言葉

「シャイニング・ワイルドフラワー~千だって~」第三話 今を変える魔法の言葉

今を変える魔法の言葉

わたし、なかなか妊娠できなかったの。
そもそも秀くんがお泊りする日がほとんどない上に、秀くんがお泊りした夜も、わたし達はおしゃべりばかりしていた。
秀くんに腕枕してもらい、いろんな話をしたり・・・・・・と言ってもわたしが一歩的におしゃべりし、それを秀くんが「うん、うん」と言いながら聞いてる感じ。
だから子どもができるような行為が少なかった。

秀くんは、いつもどこか疲れてい

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「シャイニング・ワイルドフラワー~千だって~」第二話 もっとドラマチックに生きたいの!!

「シャイニング・ワイルドフラワー~千だって~」第二話 もっとドラマチックに生きたいの!!

もっとドラマチックに生きたいの!!

わたしが主に過ごしている部屋は、秀くんがふだん過ごす場所と離れているの。大阪城、けっこう広いのよね。
だから秀くんがわたしに会いに来るのは、時間がかかるの。
これって、どうよ?!
夫婦ですけど、わたし達~。
秀くんが来るのを、ただ待つだけの毎日。
ひーまー(暇)

退屈そうなわたしを見て、刑部卿局がすごろくで遊んでくれたり和歌を詠んだりするけど、どっちもあまり

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「シャイニング・ワイルドフラワー~千だって~」第一話 たくさん恋をするために、生まれてきた

「シャイニング・ワイルドフラワー~千だって~」第一話 たくさん恋をするために、生まれてきた

たくさん恋をするために、生まれてきた

騙されてばっかりで、生きてきた気がする。
大阪城から外の景色を眺め、ため息をついた。運命に流されてきた、という言い方もできるな、長い髪の毛を左の人差し指に巻きつけ、つぶやいた。
そんなわたしを見て、千姫様、お行儀が悪いです!小さな声で乳母の刑部卿局がにらむ。

あ、もうめんどくさー!わたしはクルリと外に背を向け、頬をふくらませ部屋に入った。わたしが部屋に入る

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