マガジンのカバー画像

#リフレイン

24
断ち切れ、その幻想を。
運営しているクリエイター

2020年10月の記事一覧

#リフレイン 14

#リフレイン 14

「志摩」

「はい」

「この前は…ごめん。なんか卑屈になっちゃったよね。せっかくタクシー呼んでくれたのに…ごめん。志摩のことが嫌とかそういうのではないから。ほんとに…ただちょっと、感情的になっちゃって。ごめん」

「いえ。オレも勝手にいろいろ言って。すみませんでした。」

「ふふ。大丈夫。」

「あ、これ。約束してたやつ。お誕生日プレゼントです」

「ありがとう。開けていい?」

「もちろん」

もっとみる
#リフレイン 13

#リフレイン 13

「しーまーさ、」

「あぁ?」

「うわっ、ご機嫌斜めだ」

「うるせえ」

「どうしたの?」

「ムカついてんだよ…」

「誰に?」

「…言ってただろ。15年前奴だよ。あの人があんな風になったのは奴のせいだ。」

「証拠もないのに〜?偉く断定的だねえ。志摩さんらしくない」

「あんなんじゃ自滅するだろ…」

「それはオレもわかる。あれは自殺行為だよ。外傷はないけど、心が。」

「何言っても、仕

もっとみる
#リフレイン 12

#リフレイン 12

「すみませんお待たせしました」

「彼女さん?痴話喧嘩?」

「上司です。痴話喧嘩する相手にまで至っていません。」

「そう。頑固そうだもんね。彼女」

「…そうなんですよね〜」

「まあ、お兄さん頑張って。濡れちゃったけど」

「ははっ笑 まあ、そうですね。はい。」

こればかりは
タクシーのおじさんの言う通りだ。
本当に頑固。

少しは近づけるかなと思ったのに
逆にシャッターを下ろされた。

もっとみる
#リフレイン 11

#リフレイン 11

停滞前線のように
停滞した人生。

ずっと雨。

予報が雨なのに
油断して傘を持たなかった私。
夜に、残業終わりに、
オフィスを一歩出たところから
すぐに降りしきる雨。

ザーザーどころではない
地面が掘り返されるんじゃないかくらいの
激しい雨だった。

真っ暗なところに

ひとりで

雨に通せんぼされて

ダサかった。

 
まあ別に
傘がなくたって
濡れるだけだ。
濡れたからなんだ。
どうせな

もっとみる
#リフレイン 10

#リフレイン 10

次の日の朝、伊吹のデスクの前に立ちはだかった。

「お、志摩さんおはよー」

「お前さあ」

「ん?」

「どういうつもりだよ。はるかさんに、あんなこと言って。昨日の。」

「どういうって、…そういうつもりだけど?」

「本気なのか?」

「うん」

「あー…本気度が本当にわからん。軽い。うん、がめっちゃ軽い」

「志摩さんもなんでしょ?」

「は?」

「立候補、するんでしょ?」

「オレは別に

もっとみる
#リフレイン 9

#リフレイン 9

今日もおんなじようなことを
おんなじような時間にやって
意味があるのかないのかわからないようなことを
延々とワードに打ち付ける。 

仕事とはこういうものだろうか。

何事にも意欲がなくなっていく事は
いい事なのか悪い事なのか。
意欲がないのはダメだけど
欲がないのはいいのか?

誰かデスクに近づいてきた。

「ねえねえ」

「なあに?伊吹」

「この前言ってた、記憶?のことなんすけどー、」

もっとみる
#リフレイン 8

#リフレイン 8

別に何があったわけじゃない。

確か、関係を持つか持たないか、で
断ったことがあって
だって高校生だったし
万が一があったら
責任取れないし

そういうところが死ぬほど私は律儀だった。

でも、間違ってはいないと思っている。

なんとなく関係がおかしくなったのはそのときからだった。

でも、それだけが原因ではないとも思う。

本当はもっと前から
嫌われていたのかもしれない。

疲れたっていう表現を

もっとみる
#リフレイン 7

#リフレイン 7

「はい、これ」

「ん?どうしたの伊吹」

「あげるね。キーホルダー。ラルフローレン、好きなんでしょ?」

「あー、…この前のストラップのこと?」

「そう。なんか…。悲しそうだったから。同じのはなかったけど…。カギと一緒につけるならこっちの方が長さ合うかなあって。」

「え、わざわざ…ありがとう。本当にいいの?もらっちゃって」

「うん。先輩のために買ったから。」

「ありがとう」

「志摩さん

もっとみる
#リフレイン 6

#リフレイン 6

「大事なものだったんじゃないんですか?これ」

「ちょっと…なんで志摩が持ってるのよ。会議に行く前にゴミ箱に入れたのに」

「…伊吹が」

「え?」

「伊吹がゴミ箱からまた拾って…。もったいないじゃないですか。ラルフローレン。」

「志摩…ストラップの重要なさあ、ヒモが切れてるわけ。使い物にならないでしょ」

「修理するとか」

「…不可能よ」

「これ、かわいいのに」

「でしょ?私のセンスが

もっとみる
#リフレイン 4

#リフレイン 4

「本当に、すみませんでした。」

「もういいよ。別に。」

「…」

「監督責任は私にあるわけだし。そんなね?重要なミスでもないと私は思うわけ。それに、ミスしたら死ぬってわけでもないしさ。全然いいわけよ。普段よくやってくれてるし、それだけで十分なの。ね?」

「悔しくないんですか」

「悔しい?どうして?」

「だって…オレが!オレがもう少し…情報負けなんてしてなければ勝てたのに!」

「あれはど

もっとみる
#リフレイン 3

#リフレイン 3

「あいつ、お前のこと気になってるらしいよ?」

「は?んなわけないじゃん」

「いやいや。本当。オレ聞いたもん。告ったほうがいいぞ。」

中学のとき、隣の席の奴がそう言った。
隣の席の奴と、憧れの彼は
小学校が一緒で仲が良かった。

私はバカだった。

かっこいいと思ってた人が
憧れてた人が
私を気に入ってるだなんて

そんな、なんの証拠もない話を
鵜呑みにした。

2年生に上がる少し前
確か1月

もっとみる
#リフレイン 2

#リフレイン 2

「あのー、はるかさーん」

「あ、え?…志摩?」

「大丈夫ですか?」

「あ、うん。大丈夫。え?なんか用だった?」」

「いえ、そういうわけではないんですけど。なんかぼーっとしてたから。」

「あー、ごめん。仕事しろってね」

「いやーでも終業時間ですし。帰りましょう。疲れてるんじゃないですか?」

「もうそんな時間か…。そうだねー…疲れると無駄なこと考えたり思い出したりして、だめだね。」

もっとみる
#リフレイン 1

#リフレイン 1

生きている世界が違った。

明らかに、見たこともない、
きらきらと輝いて見える人だった。

中学のときの私なんて
同級生が13人しかいない小学校を出て
4つもの小学校が合体するような中学校で
世間を何にも知らないでいた。

髪を二つ結びにするのをやめたのも
中学に入ってすぐだった。

廊下側から窓際を見るとその人はいた。
見たこともないくらいかっこよかった。
窓際の席で、隣の可愛い子と話すあなたを

もっとみる