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はる
2020年10月31日 00:10
「志摩」「はい」「この前は…ごめん。なんか卑屈になっちゃったよね。せっかくタクシー呼んでくれたのに…ごめん。志摩のことが嫌とかそういうのではないから。ほんとに…ただちょっと、感情的になっちゃって。ごめん」「いえ。オレも勝手にいろいろ言って。すみませんでした。」「ふふ。大丈夫。」「あ、これ。約束してたやつ。お誕生日プレゼントです」「ありがとう。開けていい?」「もちろん」
2020年10月29日 22:55
「しーまーさ、」「あぁ?」「うわっ、ご機嫌斜めだ」「うるせえ」「どうしたの?」「ムカついてんだよ…」「誰に?」「…言ってただろ。15年前奴だよ。あの人があんな風になったのは奴のせいだ。」「証拠もないのに〜?偉く断定的だねえ。志摩さんらしくない」「あんなんじゃ自滅するだろ…」「それはオレもわかる。あれは自殺行為だよ。外傷はないけど、心が。」「何言っても、仕
2020年10月28日 23:53
「すみませんお待たせしました」「彼女さん?痴話喧嘩?」「上司です。痴話喧嘩する相手にまで至っていません。」「そう。頑固そうだもんね。彼女」「…そうなんですよね〜」「まあ、お兄さん頑張って。濡れちゃったけど」「ははっ笑 まあ、そうですね。はい。」こればかりはタクシーのおじさんの言う通りだ。本当に頑固。少しは近づけるかなと思ったのに逆にシャッターを下ろされた。
2020年10月28日 23:51
停滞前線のように停滞した人生。ずっと雨。予報が雨なのに油断して傘を持たなかった私。夜に、残業終わりに、オフィスを一歩出たところからすぐに降りしきる雨。ザーザーどころではない地面が掘り返されるんじゃないかくらいの激しい雨だった。真っ暗なところにひとりで雨に通せんぼされてダサかった。 まあ別に傘がなくたって濡れるだけだ。濡れたからなんだ。どうせな
2020年10月27日 23:09
次の日の朝、伊吹のデスクの前に立ちはだかった。「お、志摩さんおはよー」「お前さあ」「ん?」「どういうつもりだよ。はるかさんに、あんなこと言って。昨日の。」「どういうって、…そういうつもりだけど?」「本気なのか?」「うん」「あー…本気度が本当にわからん。軽い。うん、がめっちゃ軽い」「志摩さんもなんでしょ?」「は?」「立候補、するんでしょ?」「オレは別に
2020年10月26日 23:54
今日もおんなじようなことをおんなじような時間にやって意味があるのかないのかわからないようなことを延々とワードに打ち付ける。 仕事とはこういうものだろうか。何事にも意欲がなくなっていく事はいい事なのか悪い事なのか。意欲がないのはダメだけど欲がないのはいいのか?誰かデスクに近づいてきた。「ねえねえ」「なあに?伊吹」「この前言ってた、記憶?のことなんすけどー、」「
2020年10月25日 23:48
別に何があったわけじゃない。確か、関係を持つか持たないか、で断ったことがあってだって高校生だったし万が一があったら責任取れないしそういうところが死ぬほど私は律儀だった。でも、間違ってはいないと思っている。なんとなく関係がおかしくなったのはそのときからだった。でも、それだけが原因ではないとも思う。本当はもっと前から嫌われていたのかもしれない。疲れたっていう表現を
2020年10月24日 23:15
「はい、これ」「ん?どうしたの伊吹」「あげるね。キーホルダー。ラルフローレン、好きなんでしょ?」「あー、…この前のストラップのこと?」「そう。なんか…。悲しそうだったから。同じのはなかったけど…。カギと一緒につけるならこっちの方が長さ合うかなあって。」「え、わざわざ…ありがとう。本当にいいの?もらっちゃって」「うん。先輩のために買ったから。」「ありがとう」「志摩さん
2020年10月24日 00:10
「大事なものだったんじゃないんですか?これ」「ちょっと…なんで志摩が持ってるのよ。会議に行く前にゴミ箱に入れたのに」「…伊吹が」「え?」「伊吹がゴミ箱からまた拾って…。もったいないじゃないですか。ラルフローレン。」「志摩…ストラップの重要なさあ、ヒモが切れてるわけ。使い物にならないでしょ」「修理するとか」「…不可能よ」「これ、かわいいのに」「でしょ?私のセンスが
2020年10月22日 22:41
「本当に、すみませんでした。」「もういいよ。別に。」「…」「監督責任は私にあるわけだし。そんなね?重要なミスでもないと私は思うわけ。それに、ミスしたら死ぬってわけでもないしさ。全然いいわけよ。普段よくやってくれてるし、それだけで十分なの。ね?」「悔しくないんですか」「悔しい?どうして?」「だって…オレが!オレがもう少し…情報負けなんてしてなければ勝てたのに!」「あれはど
2020年10月22日 22:40
「あいつ、お前のこと気になってるらしいよ?」「は?んなわけないじゃん」「いやいや。本当。オレ聞いたもん。告ったほうがいいぞ。」中学のとき、隣の席の奴がそう言った。隣の席の奴と、憧れの彼は小学校が一緒で仲が良かった。私はバカだった。かっこいいと思ってた人が憧れてた人が私を気に入ってるだなんてそんな、なんの証拠もない話を鵜呑みにした。2年生に上がる少し前確か1月
2020年10月21日 22:34
「あのー、はるかさーん」「あ、え?…志摩?」「大丈夫ですか?」「あ、うん。大丈夫。え?なんか用だった?」」「いえ、そういうわけではないんですけど。なんかぼーっとしてたから。」「あー、ごめん。仕事しろってね」「いやーでも終業時間ですし。帰りましょう。疲れてるんじゃないですか?」「もうそんな時間か…。そうだねー…疲れると無駄なこと考えたり思い出したりして、だめだね。」「
2020年10月21日 22:33
生きている世界が違った。明らかに、見たこともない、きらきらと輝いて見える人だった。中学のときの私なんて同級生が13人しかいない小学校を出て4つもの小学校が合体するような中学校で世間を何にも知らないでいた。髪を二つ結びにするのをやめたのも中学に入ってすぐだった。廊下側から窓際を見るとその人はいた。見たこともないくらいかっこよかった。窓際の席で、隣の可愛い子と話すあなたを