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いつかのための詩集

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どこかで酒と出会うための詩集。
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#夏

【詩】お盆休みの中腹で

【詩】お盆休みの中腹で

ある晴れた日にあなたと墓標の話
空っぽの隕石に殴られて空想の昏倒
目をまん丸くしないので精いっぱいだった
わたしはあなたと一緒にいた

小さな宇宙の中では
いままさに白色の回転茶色の回転
茶色がお茶色じゃないのはなぜだか分かった
煙のにおいをかいでごらんよ

匙ばかりがめぐっていた
金属のボート、メッキがゴールド
あなたの唇はきっと渇き切る
その歌は歌い切られたことがない

ファミレスには夢がある

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私情をはさんで、この夜を抜けて

ポケットの中に素敵な街がある
ずっと夢に見ていた素敵な街が
両手をそこに雑に突っ込んで今
この時だけの夜の街に恋をする

出穂した稲を星空の下で眺める
あたりでは盆の花火大会も終幕
浴衣の袖に流れてく汗が目尻を
くすぐっては眩しい濃紺の衣装

僕のポケットに銀河の街がある
歩道は少しばかりの砂利と星屑
メロンソーダを片手に揺らして
鈴が鳴る草履を得意気に振って

詩情をはさんでこの街を抜ける
髪飾

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空想日記第七番夏・水と幻

空想日記第七番夏・水と幻

練習試合は午後のはじめから

水道水を勢いよく噴射

かかる手ごろな虹を裂きつつ

わたしに一言

ごめんごめんと

伝えるきみ

修学旅行のミサンガが

切れかけては結びなおされる

晴天南中真っ只中の

白昼夢に打たれる

わたしは素顔

あおぞらを描く あおぞらを

校庭の端の

緑色の雑多なホースから

あふれてくるは夕方ののろし

ずいぶんと冷たい

まくる袖にしみこんでいく

少しの擦

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空想日記第三番夏・紙と煙

空想日記第三番夏・紙と煙

押し入れから引き出してきたノートにはあ

の夏の先が書かれていたような気がして、

どうにも僕は開くのをためらっていた、こ

の紙の先はどこへつながっているのだろう

朝の鳥たちはもう夕方に向かって飛んでい

る、誰も追いつけない時間を超えた速さを

身にまとっている、僕の手には花束、いつ

でも花束。君には両手があり手に取るかど

うかは自由な意思に任せられているような

心持がした、と33ペー

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かえり道の詩

かえり道の詩

【今日の投稿のまとめ】
・おれは行を開けない形式が、苦手なのです

では本文。

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歩いている、星空の下で歩いている。腹が八分目を上回っている。痛い。左足を出して、次に右足を出して進む。ツタヤだ。扉が重い。中にはレンタルと販売となんやかんやがある。よくこれでやっていけるものだと感心した。数年来聴いている歌手のアルバムを買う。5000円弱、割と高いと思ってしま

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熱帯夜なんやかんや

熱帯夜なんやかんや

【今日の投稿の3文まとめ】
①ムシムシした夜、寝る前3分の情景を詩にしました。
②性別は想定してません。歳は多分24くらいです。
③空想です。

では、書いていきます。

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熱帯夜なんやかんや

指先からあふれる今日の余りの熱

冷えた足の先にある

明日の気配を少し感じる

熱帯夜なんやかんや

花火みたいにくしゃみがとんでく

飛沫が窓の障子越しの街灯に照らされて

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なつのよるなつのよる

なつのよるなつのよる

アリは憧れるだろうか

ハトに憧れるだろうか

アリは憧れるだろうか

フナに憧れるだろうか

アリは憧れるだろうか

サイに憧れるだろうか

アリは憧れるだろうか

ヒトに憧れるだろうか

ヒトは全てに憧れる

全てはヒトに憧れることはない



いがいにも壮大な

片思いの歴史を少し読み解いて

ぽん

とふくらむ妻の腹にそっと

手を添えたことがあった

なつのよる なつのよる