Ryé

旅についてのエッセイ『一度は行きたいあの場所』、語学のあれこれに関する『語学の散歩道』…

Ryé

旅についてのエッセイ『一度は行きたいあの場所』、語学のあれこれに関する『語学の散歩道』と『原書のすゝめ』などのシリーズを連載中。語学と取り組む日々です。 (現在キャパオーバーのためフォローバックをしておりません。大変申し訳ありません…)

マガジン

  • <ロダンの庭で>

    心に浮かんだあれこれを綴ったエッセイ集。 不定期投稿。

  • 原書のすゝめ

    語学は楽しい♪ +読書は楽しい♪ =原書は楽しい♪♪ をコンセプトに記事を書いてみました。Let’s enjoy reading in the original language, shall we? 投稿は不定期♪

  • 語学の散歩道

    語学と触れ合うことで出会った人、気づいたことや感じたことを綴ったエッセイ集。日々の生活にちょっとしたと彩りを与えられたら、という願いを込めてしたためました。毎月20日投稿予定。

  • Le jardin de l’écriture

    木曜日の夜のせいなのか、テーマのせいなのか、私たちの「文学で学ぶ表現力」のクラスは常に絶滅危惧種に指定されている。毎回さまざまな仏語圏の作家の作品を読みながら、課題の作文を通して表現力を身につける授業のまとめ。課題の仏文学の抜粋と作文を掲載しただけのシンプルな内容です。毎月20日掲載。(クラスが存続している限り掲載予定!) 全10話。 Bienvenue au monde de la littérature française!

  • 創作の小沼

    うっかり作ってしまった創作物たちを放り込んだ小さな沼。創作のインスピレーションは果たして沼からも生まれるのでしょうか?

記事一覧

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旅のはじめに

 人生は、ときに旅になぞらえられる。しかし、果たしてそうだろうか。私は、日常生活の中に旅を見出すことはない。むしろ、旅は平凡な日常から抜け出す手段だと思っている…

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十歳になった頃、文章を書くことに挫折した。 それから二十年以上、私の挫折は続いた。 ところが、フランス語を学びだした頃から、私は少しずつ自分の文章を、自分の欠片…

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語学の散歩道#22 本物はどいつだ?

映画において「ホンモノ」かどうかを問うのは難しい。そもそも映画は「ニセモノ」だからだ。 初夏の太陽が街路樹からこぼれ落ちるさわやかな朝、『ブラック・スワン』を見…

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<ロダンの庭で> 虚飾のカサノバ

卵が先か、鶏が先か。 人がイメージを作るのか、イメージが人を作るのか。セルフイメージ* というのはどこからくるのだろう。 自分から見た自分と他人から見た自分のイメ…

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Le jardin de l’écriture :#<付録> 海を越えて

  ここ数年、さまざまな事情により、海外へ出かけるのは大変である。 そこで今回は、シリーズ完結編の付録版として、旅をテーマにした作品を取り上げ、旅へのノスタルジー…

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原書のすゝめ:#25 A Bear Called Paddington

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語学の散歩道#21 ボレロを踊る

フランスの作曲家、モーリス・ラヴェルによるバレエ音楽『ボレロ』。 1928年に作曲され、「世界一長いクレッシェンド曲」と評された名曲である。 この曲で最も驚嘆すべき…

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東風吹かば 匂い起こせよ 梅の花
梅の季節はとうに過ぎてしまいましたが、明日は東の方で風が立ちそうです。よきかな〜

本日以下の品を受け取りました。お心当たりのない方は必ずこちらへお越しください♪

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<ロダンの庭で> 新・風姿花伝

ふと顔を上げると、山肌に鶯色や若緑色がみっしりと苔生している。 まるで三毛猫である。 雑木林を纏った山の新緑は、実に美しい。 春は、一年で最も新しいことを始めた…

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1か月前
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先日のトップ会談で出会ったアオサギ。確実に写真に収めるジェーン嬢の横でひたすら笑い転げる私。学名のcinereaからフランス語のCendrillon灰被り姫になったのか?
私たちのシンデレラストーリーはここから✨
羽ばたけ、アオサギ!
羽ばたけ、ウミネコ!
※画像はwikiより😆

Ryé
1か月前
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Le jardin de l’écriture :#10 ささやかなる日常の謎

Jean-Baptiste Del Amo は、1981年にフランスのトゥールーズに生まれた。本名はJean-Baptiste Garcia、モンペリエで育ったフランス人の作家である。文学課程を履修したの…

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1か月前
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原書のすゝめ:#24 The Secret Adversary

1915年5月7日、アイルランド沖を航行中のイギリスの大型客船ルシタニア号が、ドイツの潜水艦によって撃沈された。Uボートから無警告で魚雷が発射され、ルシタニア号は20分…

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<ロダンの庭で> USBメモリと私

人の出会いとは、不思議なものである。 おそらく多くの人にとって、相性の良い美容師と歯医者は見つけるのは難しい。 私は虫歯がないので、歯医者とはとんと縁がないが、…

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語学の散歩道#20 四月の魚

日本さかな検定というものがあるらしい。 元来、暗記も肩書きも苦手な私は、出世魚の区別すらできない。 先だって、仕事の付き合いで訪れた料亭で美味しい刺身をいただい…

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Le jardin de l’écriture :#9 四季の香り

母国語でない言語で文章を綴る。 これは、とんでもなく難しいことである。 ところが、言語の壁をもろともせず文章を操ることができる人々がいる。 それは、作家である。 …

Ryé
2か月前
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旅のはじめに

旅のはじめに

 人生は、ときに旅になぞらえられる。しかし、果たしてそうだろうか。私は、日常生活の中に旅を見出すことはない。むしろ、旅は平凡な日常から抜け出す手段だと思っている。むろん、中には毎日エキサイティングな生活を送っている人もいるだろうが。

 旅は、さまざまなものを与えてくれる。トラブルでさえ良い経験になる。以前の自分よりもっと成長することができる。だから私は、ときどき旅に出たくなる。こんなわけで、旅の

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<ロダンの庭で> 言葉の滴

<ロダンの庭で> 言葉の滴

十歳になった頃、文章を書くことに挫折した。
それから二十年以上、私の挫折は続いた。

ところが、フランス語を学びだした頃から、私は少しずつ自分の文章を、自分の欠片を取り戻し始めた、という話は、以前記事に書いた。(語学の散歩道#8 記憶の欠片、自分の欠片)

最近、少し書くのに疲れたので、小休止を入れながら書き続けようと思っていのだが、実は自分が感じている以上にエネルギーが消耗していたのに気づいた。

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原書のすゝめ:#26 L’homme aux cercles bleus

原書のすゝめ:#26 L’homme aux cercles bleus

珍味というのは好みが分かれる。

それと同じで、独特の読み味にも好みが分かれる、と思う。

フレッド・ヴァルガスの作品を読んだことがある人は、ミステリファンでもそれほど多くはないだろう。フランス人でも好き嫌いが分かれるようだが、TVシリーズにもなっているぐらいだから、それなりに人気を博しているようである。

日本では、ヴァルガスの作品は在庫がなくなると書店の棚から消え、再版されることなく、やがて中

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語学の散歩道#22 本物はどいつだ?

語学の散歩道#22 本物はどいつだ?

映画において「ホンモノ」かどうかを問うのは難しい。そもそも映画は「ニセモノ」だからだ。

初夏の太陽が街路樹からこぼれ落ちるさわやかな朝、『ブラック・スワン』を見た。怖いものが苦手な私はレイトショーでなくて本当に良かったと映画館を出てからホッとした。

それにしても、ナタリー・ポートマンの鬼気迫る演技と踊りは素晴らしかった。そこで、後日知人にこの話をしたところ、バレエ経験のある彼女の友人に言わせれ

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<ロダンの庭で> 虚飾のカサノバ

<ロダンの庭で> 虚飾のカサノバ

卵が先か、鶏が先か。

人がイメージを作るのか、イメージが人を作るのか。セルフイメージ* というのはどこからくるのだろう。

自分から見た自分と他人から見た自分のイメージが違うとき、なりたい自分と今の自分が違うとき、その狭間で苦しんだことはないだろうか。

あるいは、良くも悪くも周囲から、
「そんな人だとは思わなかった」
と言われたとき、本当はどんなふうに思われたいと思っていたのか、と自問しない人

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Le jardin de l’écriture :#<付録> 海を越えて

Le jardin de l’écriture :#<付録> 海を越えて

 
ここ数年、さまざまな事情により、海外へ出かけるのは大変である。
そこで今回は、シリーズ完結編の付録版として、旅をテーマにした作品を取り上げ、旅へのノスタルジーに浸りたいと思う。

Ella Maillard エラ・マイヤールは女性冒険家である。1903年にジュネーブに生まれ、1997年にスイスのシャンドランで死去した。若い頃からスポーツが好きで、19歳でホッケークラブを創設し、オリンピック代表

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原書のすゝめ:#25 A Bear Called Paddington

原書のすゝめ:#25 A Bear Called Paddington

クマのぬいぐるみは、子供たちの人気者である。たぶん。

子供の頃、私が大切に持っていたのはパンダのぬいぐるみだったと思うが、パンダは中国語で「熊猫」と書くから、まあ同じようなものである。

1957年のクリスマスのこと。当時、BBCでカメラマンとして働いていたマイケル・ボンドは、妻へのクリスマスプレゼントに小さなクマのぬいぐるみを買う。そして、このぬいぐるみにパディントンという名前をつけた。その翌

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語学の散歩道#21 ボレロを踊る

語学の散歩道#21 ボレロを踊る

フランスの作曲家、モーリス・ラヴェルによるバレエ音楽『ボレロ』。
1928年に作曲され、「世界一長いクレッシェンド曲」と評された名曲である。

この曲で最も驚嘆すべきはスネアドラムではないだろうか。コピー&ペーストだけで何小節も書けてしまう楽譜。演奏の途中で少しでも気が散ろうものなら、音符の海に難破するのは間違いない。恐るべし、パーカッション奏者の集中力。

ところで、『ボレロ』は三拍子の曲である

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東風吹かば 匂い起こせよ 梅の花
梅の季節はとうに過ぎてしまいましたが、明日は東の方で風が立ちそうです。よきかな〜

本日以下の品を受け取りました。お心当たりのない方は必ずこちらへお越しください♪

https://note.com/astoria0522/n/n5beb3eec8e5f?sub_rt=share_b

<ロダンの庭で> 新・風姿花伝

<ロダンの庭で> 新・風姿花伝

ふと顔を上げると、山肌に鶯色や若緑色がみっしりと苔生している。

まるで三毛猫である。
雑木林を纏った山の新緑は、実に美しい。

春は、一年で最も新しいことを始めたくなる季節だ。若葉が芽吹くように、私たちの心にも何かが芽生え始める。

そして、ときには自分の能力を顧みず、何でもできそうな気になるものだ。そんなわけで、私はついあれやこれやと手を出してしまう。決して飽きっぽい性質ではないのだが、なまじ

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先日のトップ会談で出会ったアオサギ。確実に写真に収めるジェーン嬢の横でひたすら笑い転げる私。学名のcinereaからフランス語のCendrillon灰被り姫になったのか?
私たちのシンデレラストーリーはここから✨
羽ばたけ、アオサギ!
羽ばたけ、ウミネコ!
※画像はwikiより😆

Le jardin de l’écriture :#10 ささやかなる日常の謎

Le jardin de l’écriture :#10 ささやかなる日常の謎

Jean-Baptiste Del Amo は、1981年にフランスのトゥールーズに生まれた。本名はJean-Baptiste Garcia、モンペリエで育ったフランス人の作家である。文学課程を履修したのち社会文化活動の推進者として働いていたが、その後、人道支援活動のためにアフリカへ。

2006年に『Ne rien faire』でフランス語若手作家賞を受賞。この短編小説は、アフリカでHIV撲滅

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原書のすゝめ:#24 The Secret Adversary

原書のすゝめ:#24 The Secret Adversary

1915年5月7日、アイルランド沖を航行中のイギリスの大型客船ルシタニア号が、ドイツの潜水艦によって撃沈された。Uボートから無警告で魚雷が発射され、ルシタニア号は20分足らずで沈没、乗員乗客1198名が死亡した。このうち128名がアメリカ合衆国の民間人であったことから、国内で一気に反ドイツ感情が高まる。ところが、同国は依然として中立を維持、その後、ドイツが再び無制限潜水艦作戦を開始したため、191

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<ロダンの庭で> USBメモリと私

<ロダンの庭で> USBメモリと私

人の出会いとは、不思議なものである。

おそらく多くの人にとって、相性の良い美容師と歯医者は見つけるのは難しい。

私は虫歯がないので、歯医者とはとんと縁がないが、美容師の方は長いことノマドだった。

ところが、偶然入った店でようやくお気に入りの美容師と出会った。途中何回か担当者が変わったが、かれこれもう二十年以上通っている。

ある日のこと、フランスでの短期研修から戻ってきた担当の美容師さんが、

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語学の散歩道#20 四月の魚

語学の散歩道#20 四月の魚

日本さかな検定というものがあるらしい。

元来、暗記も肩書きも苦手な私は、出世魚の区別すらできない。

先だって、仕事の付き合いで訪れた料亭で美味しい刺身をいただいた。

「これはブリですか?」
と尋ねたら、
「いえ、ヒラマサです」
と返ってきた。

さようで。

ブリもヒラマサもカンパチも、私の目にはまったく同じものにしか見えないのだが、世の中には思いもよらぬ強者たちがたくさんいるものである。

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Le jardin de l’écriture :#9 四季の香り

Le jardin de l’écriture :#9 四季の香り

母国語でない言語で文章を綴る。

これは、とんでもなく難しいことである。
ところが、言語の壁をもろともせず文章を操ることができる人々がいる。

それは、作家である。

言葉に対する鋭敏な感覚は、ときに言語の壁を越えることができる。もちろん、母国語と同じレベルで読み書きができる人というのは多くはないかもしれない。
しかし、谷川俊太郎や村上春樹のように、作家でありながら翻訳もできる人々は存在する。明治

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