マガジンのカバー画像

原書のすゝめ

30
語学は楽しい♪ +読書は楽しい♪ =原書は楽しい♪♪ をコンセプトに記事を書いてみました。Let’s enjoy reading in the original language…
運営しているクリエイター

記事一覧

原書のすゝめ:#26 L’homme aux cercles bleus

原書のすゝめ:#26 L’homme aux cercles bleus

珍味というのは好みが分かれる。

それと同じで、独特の読み味にも好みが分かれる、と思う。

フレッド・ヴァルガスの作品を読んだことがある人は、ミステリファンでもそれほど多くはないだろう。フランス人でも好き嫌いが分かれるようだが、TVシリーズにもなっているぐらいだから、それなりに人気を博しているようである。

日本では、ヴァルガスの作品は在庫がなくなると書店の棚から消え、再版されることなく、やがて中

もっとみる
原書のすゝめ:#25 A Bear Called Paddington

原書のすゝめ:#25 A Bear Called Paddington

クマのぬいぐるみは、子供たちの人気者である。たぶん。

子供の頃、私が大切に持っていたのはパンダのぬいぐるみだったと思うが、パンダは中国語で「熊猫」と書くから、まあ同じようなものである。

1957年のクリスマスのこと。当時、BBCでカメラマンとして働いていたマイケル・ボンドは、妻へのクリスマスプレゼントに小さなクマのぬいぐるみを買う。そして、このぬいぐるみにパディントンという名前をつけた。その翌

もっとみる
原書のすゝめ:#24 The Secret Adversary

原書のすゝめ:#24 The Secret Adversary

1915年5月7日、アイルランド沖を航行中のイギリスの大型客船ルシタニア号が、ドイツの潜水艦によって撃沈された。Uボートから無警告で魚雷が発射され、ルシタニア号は20分足らずで沈没、乗員乗客1198名が死亡した。このうち128名がアメリカ合衆国の民間人であったことから、国内で一気に反ドイツ感情が高まる。ところが、同国は依然として中立を維持、その後、ドイツが再び無制限潜水艦作戦を開始したため、191

もっとみる
原書のすゝめ:#23 The Suicide Club

原書のすゝめ:#23 The Suicide Club

子供の頃に読み忘れた作品の一つ、『宝島』。

大人になってから読んだ気もするが、むしろ覚えているのは『ジキル博士とハイド氏』の方だ。
どちらもロバート・ルイス・スティーヴンソンの作品である。

スティーヴンソンは、スコットランドのエディンバラに生まれた。
父トマスが灯台建築技師であったためか、エディバラ大学ではエンジニアリングを専攻した。その後専攻を法律へ変更し、弁護士資格を取得する。のちに、以前

もっとみる
原書のすゝめ:#22 Kvinden i buret

原書のすゝめ:#22 Kvinden i buret

昨年の暮れのこと。

興奮のあまり、つぶやきにしてはなかなか大きな声で叫んでしまった。

なんと楽天koboでは、この最新刊が電子書籍で試し読みができるらしい。

もちろん言語は、デンマーク語である。
文法はおろか、単語ですらほぼ未知の言語だ。

……。

読みたい……。

デンマーク語だろうがなんだろうが、最新刊が読みたい。となると、方法はただ一つ、ここはシャンポリオン法*しかない。

いつのま

もっとみる
原書のすゝめ:#21 Les scrupules de Maigret

原書のすゝめ:#21 Les scrupules de Maigret

メグレ警視の捜査法は独特である。

犯行現場へ赴くと、状況を観察し、どのようにして犯罪が起こったのか、どのような人物が犯人たり得るのか、なぜ犯行に至ったのか、など人間や物を観察しながら事件を解明していく。

次々に事件を解決するメグレの名声は次第に高まり、のちにこれが「メグレ式捜査法」などと呼ばれることになる。

そして、ロンドン警視庁から「メグレ式捜査法」の「見学」にやって来る警部までいるのだ。

もっとみる
原書のすゝめ:#20 La Première Enquête de Maigret

原書のすゝめ:#20 La Première Enquête de Maigret

ジョルジュ・シムノンは、ベルギーの作家である。

フランスでの執筆活動が長かったこともあり、フランス人だと間違われることが多いが、1903年、ベルギーのリエージュでフランス系の父とオランダ系の母の間に生まれた。

経済的な理由と父親の健康不良のためシムノンは15歳で退学し、職を転々としながらやがて第一次世界大戦終結後の1919年、新聞社で裁判所廻りの記者の仕事を得る。程なく頭角を表したシムノンは自

もっとみる
原書のすゝめ:#19 The Adventure of The Blue Carbuncle

原書のすゝめ:#19 The Adventure of The Blue Carbuncle

クリスマスが近くなると読みたくなる本がある。

いくつかあるけれども、今回ご紹介するのは、
『The Adventure of The Blue Carbuncle 』(『青い紅玉)。

本作は『The Adventures of Sherlock Holmes』(『シャーロック・ホームズの冒険』)に収録されている短編である。

霜が降りた寒い朝。
みすぼらしい帽子を前にホームズがソファでくつろい

もっとみる
原書のすゝめ:#18 Rock, Paper, Scissors

原書のすゝめ:#18 Rock, Paper, Scissors

本を選ぶとき、普通は読みたい本を選ぶ。

私が本を読むのは、今いるところとは違う世界へ連れて行ってもらえるからである。だから読みたい本を手に取るわけだが、自分の知らない世界を教えてくれるのは、案外誰かが勧めてくれた本だったりする。

今回の本は、『Rock, Paper, Scissors』。
知人が面白いと言って貸してくれた本で、Alice Feenyのミステリである。筆者はBBCで記者やプロデ

もっとみる
原書のすゝめ:#17 SHIBUMI

原書のすゝめ:#17 SHIBUMI

私は、読書において道草食子である。

本を読んでいる時、ちょっとした言葉や表現に遭遇すると、それが引き金となって本筋から逸れて他のことを考えてしまう。

そうなると、本の続きを中断して頭の中では別の旅に出ずにはいられなくなるのだ。そしておそらく、私のような道草食子さんや横道逸男くんは案外おられるのではないか、と密かに思っている。

そんなわけで、本を読んでいてもなかなか先に読み進まないということが

もっとみる
原書のすゝめ:#番外編 私の庭はどんな庭?

原書のすゝめ:#番外編 私の庭はどんな庭?

〜本好きへ捧げる30の問い〜
吉穂みらいさん経由で、闇夜のカラスさんの企画へ辿り着きました。

突然ですが、皆さま、自分の読書傾向について考えてみたことはありますか?

闇夜のカラスさんが「本好きへ捧げる30の問い」と題して、企画を提案されました。
という記事を吉穂みらいさんが紹介してくださいました(もちろん吉穂みらいさんも参加されています)。積読部に所属する万年補欠部員として、これは見逃せない企

もっとみる
原書のすゝめ:#特別企画 Le conte du petit prince  part.2

原書のすゝめ:#特別企画 Le conte du petit prince part.2

<はじめに>
今回の作品は、原書ではなく、創作です。
前回のお話はこちらです。↓

* * *

Le conte du petit prince Part 2

« Ton avion te ne dit pas lesquelles lui manquent ?, dit le petit prince.
— Non, il ne dit rien.
— Alors, ton avion e

もっとみる
原書のすゝめ:#特別企画 Le conte du petit prince  part.1

原書のすゝめ:#特別企画 Le conte du petit prince part.1

<はじめに>
今回の作品は、原書ではなく、私の創作です。

第16話で『Le petit prince 』を取り上げた際に、吉穂みらいさんより拙訳による翻訳をご所望いただきました。私は単なる語学学習者であって翻訳者ではないので、到底お受けすることはできないと思いながらも、せっかくのご提案に知らぬ顔をするというのも味気ない話です。

そこで、さっそく本屋に出向いて現在邦訳されている『Le petit

もっとみる
原書のすゝめ:#16 Le petit prince

原書のすゝめ:#16 Le petit prince

世界中で最も愛され、最も多くの言語に訳された本といえば、この作品をおいてほかにないのではないかと思う。

『Le petit prince 』

古今東西、老若男女を問わず、たとえ読んだことはなくても知っている人は多いはずだ。

以前、別の章で同じ「petit」がつく名作として『Le petit Nicolas』を取り上げたことがあるが、『Le petit prince』にはこれからも手をつけるこ

もっとみる