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<ロダンの庭で> 言葉の滴

十歳になった頃、文章を書くことに挫折した。
それから二十年以上、私の挫折は続いた。


ところが、フランス語を学びだした頃から、私は少しずつ自分の文章を、自分の欠片カケラを取り戻し始めた、という話は、以前記事に書いた。(語学の散歩道#8 記憶の欠片、自分の欠片)


最近、少し書くのに疲れたので、小休止を入れながら書き続けようと思っていのだが、実は自分が感じている以上にエネルギーが消耗していたのに気づいた。


私は筆が、遅い。
それは、自分の内側にあるものを、少しずつ絞り出し、少しずつ溜めた滴を筆にしたためる感覚に似ている。それでもずっと書き続けてきたのは、書くという行為には自分の感じたことや考えたことを昇華させる作用があったからである。

それが今は、一粒の滴も落ちないほど、乾いている。私の筆は、乾いている。

そういうわけで、充電が完了するまで、しばらくのあいだ筆を休めることに決めたのだが、エネルギーを充電するのにも、点滴のようにゆっくりと、一滴ずつ補う必要があるということに気がついたのである。


そして、こうして筆を置いてみると、案外いろいろなものを書いてきたのだなということにも気がついた。

そこで、これを機に、自分が書いてきたものについて、少しまとめておくことにした。


未読の記事、もう一度読みたい記事などを検索しやすいよう、マガジンごとに簡単な解説を用意いたしました。もちろん、ご興味がなければ読んでいただく必要はございません。

語学と旅が好きな私が綴った足跡を楽しんでいただけたら嬉しく思います。

なお、皆さまの記事は、今後も折にふれて拝読したいと思っております。


*The Traveler’s Time シリーズ

noteを始めたきっかけとなった、英語エッセイ。旅の情報が詰まったガイドブックや、体験談を綴った旅行記とは少し趣きが異なるエッセイである。一部有料マガジンになっているのは、名文だからではなく、英文だけを読んでいただくことを主眼に置き、和文をマスキングしたため。


*Le jardin de l’écriture シリーズ

こちらもnoteを始めた頃からのシリーズで、フランス文学、フランス語ともに下火になっている昨今の語学離れ、文学離れに一矢報いたいと思って書き始めたもの。フランス語でフランス語を学ぶ授業で出題された読解と課題の仏作文を掲載。
当初は、フランス語だけの記事だったが、フランス語に馴染みのない方にも読んでいただけるよう、日本語付きに改稿して再シリーズ化した。
全21話。イラストはすべて、フランスの人気イラストレーターであったSempé(1932-2022)へのオマージュとして、筆者の筆によるもの。


*一度は行きたいあの場所シリーズ

2022年のZIPAIRさんのお題に参加したのがきっかけ。「行ったことがある」場所ではなく、「行ってみたい」場所という視点が面白い。
自分が行きたい場所について、あれこれ想像を羽ばたかせるのは楽しい。


*語学の散歩道 シリーズ

最初に連載することを思いついたときから、自分の思考の骨格をなすテーマだと確信したシリーズ。言語学者でもなく、外国語に携わる仕事でもない、一人の語学学習者が自分の視点で異文化を語る、ということがやってみたかった。
言わば、“自分の顔”、でもある。


*原書のすゝめ シリーズ

語学好き、読書好きに「読んでいただきたい本」ではなく、「原書で読むことをおすすめ」する記事である。ジャンルに偏りがあるのは、筆者の嗜好によるもの…。


*ドラマde外国語 シリーズ

サブスクで新作の海外ドラマが次々と配信される中、吹替版ではなく、外国語の語感に触れながら外国語を楽しもうというシリーズ。初回は日本でも話題になった『アストリッドとラファエルの事件簿』を取り上げた。面白いドラマ(ストーリーというよりは外国語そのものが面白い作品)はまだまだあるので、今後は別の作品も紹介したいと考えている。


*ロダンの庭で シリーズ

語学でも旅でもなく、なんとなく思ったことや感じたことを綴りたいと思って始めたシリーズだったが、案外難しいテーマだった。
時々、「自分の心の美しさ」を前面に出したような記事を見かけることがあり、その度になんとなく違和感を感じていた。私は厭世家ではないが、それでも人生とは「優等生」が書くような、あるいは聖母マリアが語りかける言葉のような綺麗事だけでないだろう、と疑問に思うことはある。
そこで、建前ではなく本音で意見を語りたいと思ったわけだが、やみくもに他人を批評したり、体制を批判したりするのではなく、何かを語るのは容易ではない。自分の不用意な言葉が、思いもよらぬ誰かを傷つけてしまうかもしれない。そう思うと、筆がにぶった。言葉が持つ光と影を見て、己の甘さを知った。それでも、自分の中に溜まった澱のようなものを浄化させ、読者の皆さまへも問いかけることができるような記事が書けたらいいと思っている。


*創作の小沼

こちらは番外編。
noteを通じて交流が深まった皆さまの手引きにより、いつものエッセイとは違って、童話や挿絵などの創作に手を染めたもの。自分一人ではなし得なかった作品の一つ一つが、今では思い出深い。


<ロダンの庭で>シリーズ(7)

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