マガジンのカバー画像

Le jardin de l’écriture

21
木曜日の夜のせいなのか、テーマのせいなのか、私たちの「文学で学ぶ表現力」のクラスは常に絶滅危惧種に指定されている。毎回さまざまな仏語圏の作家の作品を読みながら、課題の作文を通して…
運営しているクリエイター

記事一覧

Le jardin de l’écriture :#<付録> 海を越えて

Le jardin de l’écriture :#<付録> 海を越えて

 
ここ数年、さまざまな事情により、海外へ出かけるのは大変である。
そこで今回は、シリーズ完結編の付録版として、旅をテーマにした作品を取り上げ、旅へのノスタルジーに浸りたいと思う。

Ella Maillard エラ・マイヤールは女性冒険家である。1903年にジュネーブに生まれ、1997年にスイスのシャンドランで死去した。若い頃からスポーツが好きで、19歳でホッケークラブを創設し、オリンピック代表

もっとみる
Le jardin de l’écriture :#10 ささやかなる日常の謎

Le jardin de l’écriture :#10 ささやかなる日常の謎

Jean-Baptiste Del Amo は、1981年にフランスのトゥールーズに生まれた。本名はJean-Baptiste  Garcia、モンペリエで育ったフランス人の作家である。文学課程を履修したのち社会文化活動の推進者として働いていたが、その後、人道支援活動のためにアフリカへ。

2006年に『Ne rien faire』でフランス語若手作家賞を受賞。この短編小説は、アフリカでHIV撲滅

もっとみる
Le jardin de l’écriture :#9 四季の香り

Le jardin de l’écriture :#9 四季の香り

母国語でない言語で文章を綴る。

これは、とんでもなく難しいことである。
ところが、言語の壁をもろともせず文章を操ることができる人々がいる。

それは、作家である。

言葉に対する鋭敏な感覚は、ときに言語の壁を越えることができる。もちろん、母国語と同じレベルで読み書きができる人というのは多くはないかもしれない。
しかし、谷川俊太郎や村上春樹のように、作家でありながら翻訳もできる人々は存在する。明治

もっとみる
Le jardin de l’écriture :#8 エデンの園

Le jardin de l’écriture :#8 エデンの園

Maryse Condé マリーズ・コンデは1937年、カリブ海のフランス領グアダループに生まれ、16歳の時にパリへ移住した。ソルボンヌ大学で英文学を学んだ後、1959年にギニア人の俳優ママドゥ・コンデと結婚し、ギニアで四人の子供とともに暮らしたが、のちに離婚。

1973年に再びパリへ戻り、その3年後、初の小説となる『Heremakhonon』を発表する。1981年に二度目の夫となるRichar

もっとみる
Le jardin de l’écriture :#7 自由意志についての教理問答

Le jardin de l’écriture :#7 自由意志についての教理問答

2月22日は猫の日だそうで。

1987年に猫の日実行委員会が制定した日から遅れること三日。

今回の課題は、Joann Sfar ジョアン・スファールの『Le Chat du Rabbin』(邦訳:『長老の猫』)というBD。

ある日、ラビ(ユダヤ教の長老のこと)の飼い猫は、おしゃべりなオウムを食べてしまったことから言葉が話せるようになる。オウムはどこへ行ったのかとラビに尋ねられた猫は、「急用で

もっとみる
Le jardin de l’écriture :#6 シンデレラ症候群

Le jardin de l’écriture :#6 シンデレラ症候群

騎士道文学と聞いて、真っ先に思い出されるのは、『アーサー王物語』や『ローランの歌』などであろうか。子供の頃、円卓の騎士たちに憧れてチャンバラごっこをした経験を持つのは、決して私だけではないはずだ。

さて、今回フランス語のリーディングで課題文に出題されたのは、『Tristan et Iseut』(『トリスタンとイゾルデ』または『トリスタン物語』)。騎士道文学は、12~13世紀にヨーロッパにおいて韻

もっとみる
Le jardin de l’écriture :#5 孤独な現実家の散歩

Le jardin de l’écriture :#5 孤独な現実家の散歩

ジャン=ジャック・ルソーといえば、『社会契約論』を思い浮かべる人が多いと思う。文学史に詳しい方であれば、『エミール』という作品もご存知かもしれない。

生まれたのは、1712年、スイスのジュネーブ。
幼くして母親を亡くし、寄宿舎や徒弟先で不遇な幼少期を過ごしたこともあり、ルソーは意外にも虚言癖のある「問題児」だった。10代の初めに出奔し、ひと回り以上歳上のヴァランセ夫人と恋に落ちるなど、その人生は

もっとみる
Le jardin de l’écriture :#4 東洋人の手紙

Le jardin de l’écriture :#4 東洋人の手紙

今回の課題は、『法の精神』でお馴染みのモンテスキュー(1689-1755年)の作品、『Lettre Persanes』(ペルシア人の手紙)。

本書は、宮廷での政争を倦厭したペルシアの貴族ユズベクと友人のリカの二人がヨーロッパ旅行に出かけ、パリに長期滞在した際に知人や友人と交わした書簡集という体裁をとっている。本書は発売後1年のうちに10版も重刷されるというベストセラー作品となった。18世紀前半の

もっとみる
Le jardin de l’écriture :#3 悲しみよ、さようなら

Le jardin de l’écriture :#3 悲しみよ、さようなら

さて、第3回の読解の課題は、日系カナダ人Aki Simazaki の作品、『Tsubaki』である。アキ・シマザキは岐阜県出身で、1981年にカナダへ移住、1991年からモントリオールに在住する女流作家である。フランス語を学び始めたのは1995年で、1999年に最初の小説となる本作を発表した。

ストーリーは、主人公が自分宛に遺した母の手紙を見つけたことに始まる。そこには、母の隠された過去が書かれ

もっとみる
Le jardin de l’écriture :#2 ある少女の記憶

Le jardin de l’écriture :#2 ある少女の記憶

〜このシリーズは、「フランス文学を読んで仏作文を書く」をコンセプトにまとめたものです〜

※第1回でシリーズの趣旨を説明しています↓

* * *

さて、今回は『第二の性』などで知られる女流作家シモーヌ・ド・ボーヴォワールの自伝的小説『Memories d’une jeune fille rangée』についての課題。ボーヴォワールと言えば、哲学者サルトルの終生の伴侶であり、フェミニストとしてウ

もっとみる
Le jardin de l’écriture :#1 ドゥルセ夫人

Le jardin de l’écriture :#1 ドゥルセ夫人

このところフランス語の人気は低迷気味である。

私が通う語学教室でも、昨今の事情で定員割れをして閉鎖されたクラスもいくらかあった。

そんな状況に一抹の寂しさを覚え、なんとかフランス語に興味を持っていただく方法はないものだろうかと思案した結果、自分の学習過程を共有してみてはどうかと思いついた。

授業のテーマは、中世から現代までの仏文学を読み、作品にちなんだお題についてフランス語で作文をするという

もっとみる
#10 L’évangile du nouveau monde

#10 L’évangile du nouveau monde

— Composition—◆Sujet
C’est à vous ! Décrivez un lieu que vous connaissez bien. Expliquez ce que vous y aimez et donnez vos impressions, qu’elles soient positives ou négatives.

* * *

L’Éden
Quand je

もっとみる
#9 Le chat du rabbin

#9 Le chat du rabbin

-Composition-◆Sujet : Qu’est-ce que la « liberté»? Pensez-vous que, comme le chat, tout le monde devrait être « absolument libre » ? Ou bien, pensez-vous que, comme le rabbin, la liberté s’arrête où c

もっとみる
#8 Le Roman de Tristan et Iseut

#8 Le Roman de Tristan et Iseut

-Composition-
◆Sujet
Qu’est-ce que vous pensez « l’amour courtois »?

Le syndrome de Cendrillon

  Les chevaliers qui ont du courage de lutter contre des ennemis, jurent fidélité à leur maître, et mon

もっとみる