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Le jardin de l’écriture :#4 東洋人の手紙

〜このシリーズについて(全10回)〜
本シリーズはフランス文学をフランス語で読み、作品にちなんだ課題についてフランス語で書くことを通してフランス語の表現を楽しむというものです。オリジナル記事は全てフランス語のため、今回邦訳をつけて再編集しました。
再掲載に際しては、収録する作品を再度見直し、未公開分の2作品を加えて、全10話としました。
本編は、拙作の仏作文のみ掲載しています。拙いフランス語ではありますが、フランス語学習中の方々の一助、あるいは励みになれば嬉しいです。

今回の課題は、『法の精神』でお馴染みのモンテスキュー(1689-1755年)の作品、『Lettre Persanes』(ペルシア人の手紙)。

本書は、宮廷での政争を倦厭したペルシアの貴族ユズベクと友人のリカの二人がヨーロッパ旅行に出かけ、パリに長期滞在した際に知人や友人と交わした書簡集という体裁をとっている。本書は発売後1年のうちに10版も重刷されるというベストセラー作品となった。18世紀前半のヨーロッパ、とりわけフランスの社会を東洋人の目線で観察し、風刺画として描いた書簡形式の小説だが、風俗、あるいは政治や宗教など、多岐にわたる人々の日常生活が具体的に語られる本書は、当時の生活様式の貴重な記録として読むこともできる。
のちには書簡体小説の先駆として高く評価され、邦訳はいくつかの出版社から刊行されている。

なお、課題の作文をモンテスキューに倣って日本人が見たパリの様子として風刺的に描いてみたら、これを読んだフランス人の先生は大笑いしていた。言葉だけではなく、こういう感覚が通じた時の喜びはひとしおである。


Le jardin de l’écriture

〜エクリチュールの庭〜


<第4回> Writing 仏作文課題
モンテスキューは、二人の外国人旅行者の目を通して、ときにコミカルに、ときに驚くような18世紀のフランスの姿を描いた。では、21世紀のフランスは私たちの目にどんな印象として映るだろう。日本の社会とは異なると感じるだろうか。

*  *  *


Lettre Levants

 Malgré la saison froide, beaucoup de fleurs des boutiques décorent les quatre coins de la ville d’art. Je me promène dans un rue en m’amusant de la belle vue. Tout à coup, je sens quelque chose de mou sous mon pied. Les excréments des chiens sous des feuilles mortes ! Les Parisiens ne les récupèrent jamais, car ils ne veulent pas prendre le travail aux moto-crottes. Quoique « contaminée », l’esthétique de Paris est bien préservée grâce à la loi Malraux. Même le McDonald’s la respecte et a du chic sur les Champs-Elysées. Pour satisfaire notre désir de beauté, le musée du Louvre ouvre gratuitement le premier dimanche, alors que les toilettes ne sont jamais gratuites pour satisfaire le désir naturel. En plus, les Français ne se lavent pas les mains après avoir utilisé les toilettes. Le sens de la beauté ne concorde pas avec celui de l’hygiène.

 Cependant, pour satisfaire notre appétit, des restaurants, des bistrots et des cafés nous offrent la bonne cuisine. Les Parisiens ont le palais fin extrêmement. Mais en marchant dans la rue, je vois une Française mettre des baguettes sans emballage sur l’arrière de la voiture. Au supermarché, je rencontre un garçon mangeant une pomme sans la nettoyer. Le concept de la gastronomie ne concorde pas avec celui de l’hygiène.

 Au printemps, beaucoup de parcs débordent de Parisiens. Qu’est-ce qu’ils font sur des bancs, bien que l’on soit en semaine?

 En été, les touristes inondent Paris, tandis que les Parisiens partent en vacances, et la ville devient littéralement vide.

 Ensuite, voilà, de nouveau la saison où des crottes des chiens se cachent sous des feuilles tombées!


東洋人の手紙


寒い季節にもかかわらず、たくさんの花屋が美の都のあちこちを飾っている。美しい眺めを楽しみながら通りを散策していると、突然足の裏になにやらふにゃっとするものが…。落ち葉の下にある犬の落とし物だ!パリの人たちは自分の犬の糞を回収したりはしない。なぜかといえばそれは、掃除人の仕事を奪ってしまうことになるからだ。
こんな「汚染」はあるが、パリの美観はマルロー法のおかげで保たれている。マクドナルドですらこの法律を遵守しているからシャンゼリゼ通りにある店はとてもシックだ。それに、我々が美への欲求を満たせるように、第1日曜日にはルーブル美術館は無料開放してくれるのだ。自然の要求を満たすためのトイレは無料ではないけれど。それに、フランス人はトイレの後で手を洗ったりしない。美の概念と衛生概念は一致しないということだ。

とはいえ、我々が食欲を満たせるように、レストランや居酒屋、カフェなどが美味しい料理を提供してくれている。パリの人たちは食通だ。ところが、道を歩いてると、パリジェンヌが袋に入っていないパンをそのまま車の後部座席に置くのを見かけたり、スーパーでは洗わないままリンゴを齧っている男の子に遭遇したりする。美食の概念と衛生概念は一致しないということだ。

春になると、たくさんの公園がパリの人たちでいっぱいになる。平日だというのに公園のベンチで何をやってるのだろう。

夏がくると、パリの街は観光客でいっぱいになる。パリジャンたちはバカンスに出かけてしまって、街は文字どおり空っぽなのだけれど。

それからまた、犬の糞が落ち葉に隠れる季節がやってくるのだ。


< Sempé のイラストをアレンジしてみた >


ー FIN ー


<あとがき>

この作文中に登場するモトクロット(ウンチ・バイク)は、正しくは「トロチネット」と呼ばれる犬糞吸い込み掃除機付き専用バイクで、パリ市内の犬の糞害対策としてシラク元大統領がパリ市長であった時に導入したもの。バキューム付きのノズルで犬の糞を回収する掃除方法で、パリ市内に100台ほどあり、150名のプロの回収バイカーがいたそうだが、コストがかかる割に効率が悪いということで2004年に利用廃止となった。シラクレットという異名で揶揄されたこともあるらしい。現在では、飼い主に犬の糞の回収が義務付けられ、違反すると罰金が課せられるため、糞害は以前に比べて改善されたという話だが、油断は禁物!
景色にうっとり見惚れて歩いていると足元では大変なことが起きてしまうので、やはりご用心!
ちなみに、左足でブツを踏んだ場合は幸運が訪れる、という迷信がフランスにはあるとか。

なお、ルーブル美術館の無料開放日は2019年以降変更となっているので、渡仏の際は最新情報をご参照ください。


<第4回> Reading 読解

オリジナル記事の最後に本文の一部を掲載していますので、ご興味がある方はご参照ください ↓

《Lettre persanes》
Charles de Secondat, baron de La Brède et de Montesquieu


※このシリーズの過去記事はこちら↓



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