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Le jardin de l’écriture :#6 シンデレラ症候群

〜このシリーズについて(全10回)〜
本シリーズはフランス文学をフランス語で読み、作品にちなんだ課題についてフランス語で書くことを通してフランス語の表現を楽しむというものです。オリジナル記事は全てフランス語のため、今回邦訳をつけて再編集しました。
再掲載に際しては、収録する作品を再度見直し、未公開分の2作品を加えて、全10話としました。
本編は、拙作の仏作文のみ掲載しています。拙いフランス語ではありますが、フランス語学習中の方々の一助、あるいは励みになれば嬉しいです。


騎士道文学と聞いて、真っ先に思い出されるのは、『アーサー王物語』や『ローランの歌』などであろうか。子供の頃、円卓の騎士たちに憧れてチャンバラごっこをした経験を持つのは、決して私だけではないはずだ。

さて、今回フランス語のリーディングで課題文に出題されたのは、『Tristan et Iseut』(『トリスタンとイゾルデ』または『トリスタン物語』)。騎士道文学は、12~13世紀にヨーロッパにおいて韻文または散文の物語を吟遊詩人たちが弾き語りによって広めた口承文学である。

おもな主題は騎士道と貴女崇拝で、宮廷恋愛や主人への忠誠などが物語形式で語られる。

フランス語のIseutイゾルデの綴りは、YseutやIseult、Isold などいくつかある。物語の舞台はコーンウォールで、両親を亡くしたトリスタンがやがて叔父であるマルク王に仕え、文武に優れた名高い騎士として成長していく。その後、アイルランドから朝貢を要求されため、トリスタンは騎士Morholt モルオルトと決闘してこれに勝利するが、モルオルトの剣に塗られていた毒で瀕死に。一度は死を覚悟したトリスタンであったが、偶然にもアイルランドへ漂着し、どんな毒でも取り除くことができると知られていた王妃に預けられ、九死に一生を得た。

しかし、モルオルトの仇であると知られれば、死罪はまぬかれない。そこで、トリスタンは自らの名を偽り、密かに脱出してマルク王のもとへ帰還する。

しばらくして、アイルランドの女王イゾルデと結婚することになったマルク王の使いとして、トリスタンは再びアイルランドへ向かうのだが、そこで同国を悩ませていた竜を退治したあと、力尽きて倒れてしまう。昏倒しているトリスタンを見つけたイゾルデは、トリスタンがモルオルトの仇であると知るが、寛大にもトリスタンのことを許すのである。

今回の読解の課題は、イゾルデを船でマルク王のもとへ連れて行く途中、マルク王との初夜のために用意されていた恋の媚薬を、誤ってイゾルデとトリスタンが飲み、二人が恋に落ちてしまう、という場面である。テキストは、Béroul によって散文形式にまとめられたものを読んだ。

Le jardin de l’écriture

〜エクリチュールの庭〜


<第6回> Writing 仏作文課題
いわゆる騎士道文学における「宮廷愛」について、どう思うか。

*  *  *

Le syndrome de Cendrillon


 Les chevaliers qui ont du courage de lutter contre des ennemis, jurent fidélité à leur maître, et montrent de la vénération pour les femmes qu’ils protègent au risque de leur vie, sont vraiment des héros.

 Mais, les romans des chevaliers inciteraient les féministes à protester contre le machisme. Pour les chevaliers, les femmes sont toujours belles, faibles et gentilles, cependant parfois, elles sont méchantes, menteuses, et rusées comme des sorcières et des sirènes qui piègent les hommes.

 À l’époque hellénique, bien que les femmes fussent combattantes de même que les hommes à Sparte; Au Moyen âge, Jeanne d’Arc qui sauva courageusement Charles Ⅶ était condamnée au bûcher. Les Amazones ne sont pas aimées par les hommes.

 Par contre, voici « la Belle et la Bête ». Une femme qui donnait toute sa tendresse à la Bête la sauvait à la fin. Après tout, si courageuses que les femmes soient, elles ne doivent pas sauver les hommes avec les armes, mais doivent les sauver avec une tendresse profonde. Alors, si les femmes exerçaient la diplomate, auraient-elles trouvé une solution pacifique et toutes les guerres auraient disparu sur la Terre ? Cependant, les femmes plus intelligentes que les hommes non plus ne sont pas aimées par les hommes. Les féministes, pourraient-elles accuser les hommes d’être jaloux et combatifs ? Les femmes, sont-elles victimes de machisme ?

 Attendez, ce seraient les hommes qui sont des victimes du machisme. Les hommes doivent être plus courageux, plus vigoureux, et plus intelligents que les femmes qui attendent leur prince idéal. Plutôt, les femmes devraient accepter les hommes avec générosité, car eux aussi souffrent sous la grande espérance des femmes attrapant le syndrome de Cendrillon !


シンデレラ症候群


 敵と勇敢に戦い、主君への忠誠を誓い、そして自らの命を賭して女性を守ろうとする騎士たちは、まさに英雄そのものである。 

 しかしながら、こうした騎士道文学が男性優位主義に抗議するフェミニズムを駆り立てることになりはしなかっただろうか。騎士にとって女性とはつねに美しく、か弱くて心優しい存在である。時には意地が悪くて嘘つきで、男たちを陥れる魔女やセイレーンのような背徳者であるけれど。

 ヘレニズム時代のスパルタでは、女性も男性と同じように戦いに参加したこともあったが、中世に勇ましくシャルル7世を救ったジャンヌ・ダルクは、焚刑に処された。アマゾネス(女性戦士)というのは、男たちからは好かれないのである。

 これに対して、『美女と野獣』の話では、醜い野獣に無償の愛を注いだ女性が最終的に彼を救った。つまり、どれほど女性が勇敢であろうと、武器を握った女たちではなく、深い愛情を持った女性こそが男たちを救う、というわけだ。
それでは、もし女性が外交に携わったならば、物事が平和裡に収まる解決策を見つけ、地上からはありとあらゆる戦争がなくなるのだろうか。ところが、やはり男性よりも賢い女性というのは好かれないのである。フェミニストたちは、男たちが僻み屋で好戦的であると糾弾すべきであろうか。はたして、女性は男性優位主義の犠牲者なのだろうか。

 いや、ちょっと待った。男性もまた、男性優位主義の犠牲者といえるかもしれないではないか。男たちは、白馬の王子を待っている女性たちよりも勇敢で男らしく、そして聡明であることを求められているのだ。むしろ女性は、男性たちを寛大な気持ちで受け入れてあげるべきなのかもしれない。なぜなら、男性もまた、シンデレラストーリーを夢見る女たちの絶大な期待に苦しんでいるに違いないからである。


< Petit Nicolas 風に描いてみた >


— FIN —


<第6回> Reading 読解

オリジナル記事の最後に本文の一部を掲載していますので、ご興味がある方はご参照ください ↓

《Le Roman de Tristan et Iseut》 Béroul


※このシリーズの過去記事はこちら↓


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