『想い出を纏う』 matotte
思い出が詰まった服ほど、かけがえのない一着になる
あなたにとって、大切な服とはどんな服だろう。
自分でお金を貯めて、初めて買ったジャケット。
大切な人から、誕生日に贈ってもらったスカーフ。
旅先で、デザインと生地に一目惚れしたスカート。
どれも、その人にとってかけがえのない一着だ。
そうした服に共通しているのは、強い想いや特別な記憶が詰まっていることだと思う。
私自身、大切にしている服にはたくさんの思い出が詰まっている。特に、祖母からもらった、彼女が若い頃に着ていた服はその代表例だ。幼い頃に見た、祖母が服を丁寧に扱う姿への憧れ。「自分が本当に欲しいと思う服を、お金をかけて買いなさい」と教えてもらった記憶。そうしたさまざまな想いや記憶が詰まった服だからこそ、特別に感じるのだ。
しかし、どれほど繊細に扱っていても布が古くなって破けてしまったり、また体型が変わったりして、大切な服を着続けられなくなってしまうこともある。
先ほど挙げた、祖母からもらった服のいくつかも布が傷んで着れなくなってしまった。
今回紹介する「matotte」の代表である鎌田さんは、そうした状況にもどかしさを感じていたという。
「せっかく心から大切にできる服があって、それを着れば気分が上がることが分かっているのにできないなんて、すごくもったいないと思ったんです」
そんな想いから生まれたのが、服を生まれ変わらせるサービスの「matotte」だ。
鎌田さんは、「matotte」についてこう語る。
「その服を見たり触ったりするだけで、着ていたときの風景や自分の想いなど、思い出がよみがえることがありますよね。そうした思い出を、思い出し続けられるようにしたい。服と共に思い出を纏うことで、思い出ごとその一着を愛してあげられると思うんです」
「matotte」がつくる、思い出ごと纏う服とはどのようにしてできあがるのか。鎌田さんに話を伺った。
自分の思い出が詰まった、世界に一つだけの服を作る
matotteでは、お客様の思い出が詰まっているけれど着れなくなってしまった服や布を使って、セミオーダーメイドで服をリメイクしていく。
元となるのは、シンプルさを追求した20種類の型。流行に左右されず、時を超えて愛される型を使うことで、長く着続けられる服に仕立てるのだ。
最初に行うのは、お客様への徹底的なヒアリング。その理由を、鎌田さんは「リメイクする過程が大切だから」だと語る。
「どんな風にリメイクしたいのかを追求することで、自分が心の奥で思っていたことに気づいたり、気持ちに変化があったりする。だからこそ、最初は丁寧なヒアリングから始めています。「どんな思い出が詰まっているのか」「どうしてその服を捨てたくないのか」「リメイクした先に、どんなことを期待しているのか」などを聞いていくと、本人も忘れていたような思い出がよみがえってくることもあるんですよ」
そしてその後、お客様の想いを可能な限り服に注ぐため、使う生地の向きや大きさ、縫い方までも、一つひとつ丁寧にお客様と相談しながら進めていく。
ここまでの過程も特徴的だが、「matotte」ならではのポイントは、「想い出タグ」をつける点にある。
洗濯の方法やサイズなどが書かれている、あのタグだ。
「matotte」では、一般的なタグとは異なり、お客様の想いを言葉にして記載したタグをつくるのだ。
この想い出タグを作る目的は、その服に込められた想いを言語化しておくことで、より思い出や自分自身と向き合えるようにするためだという。
「短い言葉でパッと出てくる方もいれば、長く時間をかけてもなかなか言葉を絞り込めない方もいる。お客様が抱える想いは人それぞれ異なるため、一人ひとりに向き合い、一緒にぴったりな言葉を探していきます」
こうして、最初から最後までお客様が主導となり、思い出をよみがえらせながらリメイクしていくことで、袖を通したときに、その服に込めた想い出ごと纏える服ができあがるのだ。
生きている間は、ずっと服を着る。それは当たり前のことのようだけど、だからこそ自分の心が震えるような服を着てほしい
冒頭で話したとおり、「matotte」が生まれたきっかけは大切な服をなかなか着れなくなってしまうことへのもったいなさだが、その根底にあるのは「人々の、服を着ることに対しての意識を変えたい」という想いだと鎌田さんは打ち明けてくれた。
「最近は、ブランドに似せた安価な服や、手頃で長く使える服が増えてきましたよね。それ自体は悪いことではないと思うのですが、色々な服で溢れた結果、着ることに対してこだわりが持てなかったり、他人がどう思うかを気にして服を選んだりする人が多いことにもどかしさを感じるんです。
服とは、自分の好きを表現したり、なりたい自分に近づけたりする魔法のようなものでもある。そうした服の魅力に気づいたら、もっと日々が豊かになるんじゃないかって思います。そうした人を少しでも増やすことに、matotteが貢献できるようにこれからも成長させていきたいです」
鎌田さんのその言葉を聞きながら、もし人々が皆自分にとって特別な服を着る世の中になったら、服を通じて新たな出会いが生まれたり、相手への理解が深まったりと、人と人との結びつきも変わっていくかもしれないとワクワクした。そんな日々が訪れるように、私自身、楽しみながら服を選んでいきたい。
ここまで読んでくださった方の中で、自分の大切な思い出ごと纏えるような特別な服を作ってみたいという方がもしいたら、ぜひmatotteさんに声をかけてみてほしい。きっと、心が震えるような一着が生まれるはず。
製品情報
・公式サイト
I am CONCEPT. 編集部
・運営会社
執筆者:望月さやか
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