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臨床についてマジメに考えるnote

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マジメな理学療法士が考える臨床アイデアを書いたnoteをマガジンにまとめました。 主に脳卒中への介入戦略を書いています。 記事への質問はTwitterのDMでどうぞ。
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2020年8月の記事一覧

「ココロとカラダ、にんげんのぜんぶ」に感じる違和感

「ココロとカラダ、にんげんのぜんぶ」に感じる違和感

「ココロとカラダ、にんげんのぜんぶ、オリンパス」

このフレーズ、一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。

オリンパスが2007年から企業広告に使用しているキーフレーズです。

セラピストのみなさん、違和感を感じませんか?

今回はこのフレーズに違和感を感じないセラピストは、『人間』の捉え方を考え直した方が良いというお話です。

注:オリンパスさんが嫌いとかでは決してありません。愛用してい

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セラピストが無意識にかけている『呪い』とは

セラピストが無意識にかけている『呪い』とは

いきなりですが、『呪い』って何でしょう。

簡単に調べてみました。

呪い(のろい)とは、人または霊が、物理的手段によらず精神的あるいは霊的な手段で、悪意をもって他の人や社会全般に対し災厄や不幸をもたらせしめようとする行為をいう。(Wikipedia)

こういうものらしいです。

霊的な手段を使えるセラピストは少ないかもしれませんが、精神的な手段の方はどうでしょう。

悪意をもってそんなことをす

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クライアントの物語に寄り添えていますか?

クライアントの物語に寄り添えていますか?

重い病にかかるということは、かつてその病む人の人生を導いていた「目的地の海図」を喪失するということである。病む人々は、「それまでとは違う考え方をする」ことを学ばなければならない。彼らは、自分自身がその物語を語るのを聴くことによって、他の人々の反応を吸収することによって、そして自らの物語が共有されるのを経験することによって学んでいく。(アーサー・W・フランク著:鈴木智之訳:傷ついた物語の語り手 身体

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リハビリテーション=おうちごっこ?

リハビリテーション=おうちごっこ?

先日、子どものごっこ遊びは非常に高度な認知機能を用いた遊びだということを書きました。

今回はこれをリハ向けに考えていきたいと思います。

『リハビリテーション=おうちごっこ』なんて言うと、「クライアントをバカにしてる!」とか怒られそうですが、そんなことはありません。

リハビリテーションとごっこ遊びは、現実の状況とは異なる場面を想定するという点で完全に同じです。

この視点を持つと、病院で行われ

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真実はいつもひとつ!だと思ってませんか?

真実はいつもひとつ!だと思ってませんか?

薬を飲まされて小さくなってしまった高校生がよく言うセリフ。

「真実はいつもひとつ!」

殺人事件の犯人とか、犯人が用いたトリックとか、そういう文脈では正しいと思います。

では、リハビリテーションという文脈ではどうなのでしょうか?

その介入方法、その福祉用具の選択、その環境設定、その退院時期、その介助方法、その動作パターン、その練習方法…

全て、『ひとつの真実』を選べているのでしょうか?

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脳卒中の膝折れは膝に触れず改善する

脳卒中の膝折れは膝に触れず改善する

脳卒中者の歩行で多く遭遇する問題の一つに、『膝折れ』があります。

今回のnoteでは、膝折れはなぜ生じるのか、どのように改善すれば良いのかについて考えてみたいと思います。

実は、膝折れの原因の多くは膝に起因しておらず、膝に触れずに改善できることがほとんどです。

「そうなの?」「ホントに?」と思ったセラピストのあなたは、是非読み進めていただければと思います。

膝折れとはそもそも、膝折れとは何

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麻痺側と非麻痺側を比較してはいけない理由

麻痺側と非麻痺側を比較してはいけない理由

セラピストのみなさん、脳卒中のクライアントに麻痺側と非麻痺側を比較させていませんか?

それにはメリットとデメリットがあり、デメリットを把握した上で行うべきだと考えます。

今回は麻痺側と非麻痺側を比較してはいけない理由を解説したいと思います。

脳卒中者のリハ場面において、麻痺側と非麻痺側の比較を行うことは多いです。

その目的は、

■非麻痺側の動きを分析し、真似るようにして麻痺側の動きを促す

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脳卒中のリハは週1回の訪問で良くなるの?

脳卒中のリハは週1回の訪問で良くなるの?

いつも読んでいただきありがとうございます。

今回は『脳卒中のリハ、週1回の訪問で良くなるの?』という疑問に答えたいと思います。

結論から書くと、良くなります。

そして、そのためには、毎日の生活をリハビリテーションとして捉える視点が重要です。

病院勤務の方はイメージしづらいかもしれません。

ですが、病院でのリハビリテーションにも示唆が得られる考えを提示できるかと思います。

週1回しか訪問

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効果の出ない練習はやめて会話をすべき理由

効果の出ない練習はやめて会話をすべき理由

いつも読んでくださってありがとうございます。

こんなnoteを読まれている療法士のみなさんは、勉強熱心で、クライアントを少しでも良くしたいという熱意を持った方ばかりなのではないでしょうか。

そんな療法士の方であれば、次のような壁にぶつかったことは少なくないのではないでしょうか。

■問題点は明らかで、練習内容も間違ってないはずなのに、なかなか効果が出ない

■リハ場面では改善しているのに、病棟

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クライアントの言葉、ちゃんと聞けていますか?〜ソシュールの言語学〜

クライアントの言葉、ちゃんと聞けていますか?〜ソシュールの言語学〜

理学療法士、作業療法士、言語聴覚士(療法士)のみなさん、クライアントの言葉を聞けていますか?

「当たり前じゃないか」と思われる方が大半かと思いますが、ちょっと待ってください。

ちゃんと理解できていますか?という質問にしたらどうでしょう。

クライアントがご自身の身体について語る言葉、不調を語る言葉、動きにくさを語る言葉、動きの変化を語る言葉、生活における困難を語る言葉…

療法士は毎日多くの『

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介入方針がクライアントと食い違ったらどうすれば良いの?

介入方針がクライアントと食い違ったらどうすれば良いの?

理学療法士や作業療法士、言語聴覚士(以下、まとめて『療法士』)が介入を行う際、計画書を作成し、クライアント本人もしくは家族の同意の元で介入を開始します。

多くの場合すんなり同意していただけると思いますが、本当に本人は納得しているのでしょうか?

口に出さないだけで、クライアントは違和感や不満を持ってはいないでしょうか?

また、同意いただけない場合もあるのではないでしょうか。

このようにクライ

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脳卒中の感覚障害は良くなるの?③〜言語を考慮した戦略の提案〜

脳卒中の感覚障害は良くなるの?③〜言語を考慮した戦略の提案〜

前回・前々回のnoteで、脳卒中の感覚障害に立ち向かう戦略を考えてきました。

→前々回のnote

→前回のnote

一連のnoteの中で、『認知過程』というものを考慮し、そのうち『知覚』『注意』『記憶』『判断』までを利用した戦略について説明してきました。

今回は残る『言語』について考えていきたいと思います。

一言で言うと、クライアントなりのカテゴライズから言語を作っていくということが必要

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脳卒中の感覚障害は良くなるの?②〜記憶と判断を考慮した戦略の提案〜

脳卒中の感覚障害は良くなるの?②〜記憶と判断を考慮した戦略の提案〜

前回のnoteでは、脳卒中により生じる感覚障害を改善するための、『注意』と『知覚』を中心とした戦略について書きました。

→前回のnote

その中で『認知過程』というものに触れましたが、『認知過程』には『知覚』『注意』の他に『記憶』『判断』『言語』があります。

今回はこのうち、『記憶』と『判断』にフォーカスし、感覚障害を改善するための戦略について考えたいと思います。

結論を書いてしまうと、複

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脳卒中の感覚障害は良くなるの?①〜注意を利用した戦略の提案〜

脳卒中の感覚障害は良くなるの?①〜注意を利用した戦略の提案〜

脳卒中の症状として目立つのは片麻痺ですが、感覚障害も主要な症状の一つです。

日常生活に復帰する上で、感覚障害は様々な問題を生じることとなります。

今回は感覚障害に対して療法士はどのように介入すべきなのか、考えてみたいと思います。

今回提案するポイントは注意を利用することです。

脳卒中で生じる感覚障害そもそも、脳卒中でなぜ感覚障害が生じるのでしょうか。

上図のように末梢神経が障害された場合

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