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石神マリエ@ご自愛エッセイ
2023年11月7日 22:19
あの頃、まだ幼かった私はいつも「何か、突拍子もないことがしたい。」と。そうやって前に進みました。後先を考えず、損得も考えず、化粧は濃くても素顔に近いような。心はいつも、何も着飾っていない。裸にも似た状態で過ごしていました。自分がどんな自分になりたいのか、どんな大人になりたいのか、自分のことをよく知らないまま、人生の選択をしていたのです。それは知性のカケラもなく、本能に近い様子で、非常に、動物的
2023年8月14日 21:53
私には5個上の兄がいる。兄は生まれつき心臓病だった。心臓に穴が空いたまま生まれて、間もなくその小さな身体で大手術を受けたんだ。だから兄の初めての食事は「離乳食」ではなく「お薬」だったと母は言った。それに心臓以外にも。生まれてすぐの写真を見ると右頬には大きなコブが見えていたり、子供の頃の喘息はひどかったと話を聞く。「今思えば、発達の遅れもあったのかもね。」と母は言った。あの頃は現代と違って身近に情
2023年8月9日 22:09
近頃、「実家」という場所に行くとセンチメンタルを起こすんだ。それは悪い意味ではなく、やけに良い意味で。私の実家は、お金持ちでもないし、貧乏でもない。両親が健在で、未婚の兄がいて、祖母が同居しているから大人が4人で暮らしている。とぼけてお茶目なボーダーコリーもいる。ちょっと変わった普通の家だ。そこへ、私は息子を連れて遊びにいく。実家の玄関をあけると、まずやってくるのは決まって母だ。そして母は
2022年9月22日 23:36
私には兄がいる。一言で言えば私と兄は対照的だ。 私が晴れだとしたら彼は雨だし私が夏なら彼は冬かもしれない。私が部長なら彼は幽霊部員だったし私が太陽であれば、もちろん兄は月である。ただ、勘違いして欲しくないのは彼は暗くてつまらないやつではない。パンクバンドを愛していて過去にはボーカルをしていた。大声で歌い、客を盛り上げ踊り狂うセンスを持ってる
2023年5月14日 21:34
私の母は、どちらかというと、料理が上手な方ではないしどちらかというと、勉強ができる方でもない。子育てが上手かったか?と言われるとそれもなんか、違うような感じ。家事も、主婦歴40年にしてまだまだ苦手なようだ。おそらく、人間クオリティで言えば五角形のグラフにした時ものすごい小さな五角形ができそうな。ちょっと鈍臭いタイプ。だが、そんな母には、天性の才能があるんだ
2023年5月21日 21:08
今日は母の誕生日でした。今までも、このエッセイに度々登場してきた母ですが、めでたいことに還暦を迎えました。とは言っても、中身は相変わらずのハタチであり、芸術家であり、霊能者とも言えますし、お笑い芸人とも言えます。大魔境とも言えるかと…。そんな彼女は「母親」として、アウトではないが、セーフでもないんですね。世の中の「母親像」とは何かが違う。明らかに、何かが違うのです。その「何か」について、今までは考
2023年6月16日 23:43
私には、記憶がすっぽり抜け落ちている時代がある。7年前。心の病、真っ最中のことだ。心因性ショックにより、ある程度の記憶は全て、涙となりこぼれ落ちた。あの涙は幻のように、溶けて無くなったのだろう。7年前。私が苦しむ中で起きた出来事や、住んでいた部屋の様子。食べていた食事、出会った人の名前、何度も踏みしめた駅のホームはひとつも出てこない。必死に思い出したところで、声や、表情や、音や季節なんかも、う
2023年6月18日 21:34
今日は父の日だった。私の父親は、健在である。「あなたの父親は、どんなお父さんですか?」そう聞かれたらいつもこう、答えている。「武士のような人です。」と。まぁ、俗に言う頑固ジジイみたいなもんだ。武士だけど、ダジャレとかも平気でかましてくるし、つまりは、親父。兎にも角にも、厳格なのである。それはそうと、我が家では誰も、「父の涙」というものを見たことがない。それは日々、メソメソしてばかりの私な