熊代亨 著「人間はどこまで家畜か 現代人の精神構造」を自分の言葉で要約した
はじめに
人間が家畜化していると聞いてどう思うだろうか
イヌやネコが自ら人間の家畜となったように、人間は自ら文明社会の家畜となっている
このまま自己家畜化が進むと、我々の自由はどうなっていくのか、自己家畜化のレールから外れる人が増えはしないか
今でも精神障害の人が増えていて、新しい精神病さえ生まれていて、その治療・適応のために服薬や遺伝子操作が行われる未来をどう思うだろうか
本書は自己家畜化というキーワードから出発し、これまでとこれからの文明を考える
序章 動物としての人間
動物園の動物は檻に自由を制限されている
一方で何もしなくても過不足なく餌が出てくるし、天敵に襲われることもなく快適だ
人間も同じである
学校や職場、社会規範や法律に縛られて保護されて生きている
生殖が難しくなっている点も両者似ている
人間は哺乳類という生体を持ちつつ社会規範の中で生きている
そんな人間を考える上で現れたトピックが自己家畜化である
人工的な社会や文化、環境の家畜にふさわしい性質を自ら獲得したのだ
結果、社会的な面だけでなく生物学的な面で、人類の暴力の数が減る恩恵に与ることとなる
ただし生物学的な変化である進化は社会の変化に対して進みが遅い
必然、社会の変化についていけなくなる人が現れるが、現代の精神疾患患者の増加として表れている
本書では生きづらさや社会問題を社会的側面だけでなく生物学的な側面からも論じていく
人文社会科学中でも本書では特にアナール学派の主張を参考にした
彼らは庶民の暮らしや常識、ルール、感情や感性の移り変わりなどから歴史を見る
社会の変化に応じて人々がどう変化したのかをミクロな視点で論じる姿勢が参考になった
自然科学と人文科学の交差領域として精神医療にもページを割いている
精神疾患は脳内の異常によって引き起こされるものである一方で、何を精神疾患と見なすかは当時の社会からの要請にもよる
自然科学と人文科学のはざまにいる我々に何が起こっていて、これからどこへ向かうのかを見ていく
第一章 自己家畜化とは何か ―進化生物学の最前線
進化とは生存競争を生き残る中で生存に適した形質が継承されていく経過を指す
オオシモフリエダシャクという我は典型的な進化を見せた
産業革命前は白色だったが、煤で街が黒ずんで以降は鳥に狙われにくい黒色になり、大気汚染が改善するとまた白色になった
細菌やウイルス、当然人間も進化をしている
家畜化というとギンギツネの例がよく引用される
当初は野生動物であったギンギツネが、人間にとって飼いやすい形質を持つ個体を選別して交配した結果、50年でほぼ全ての個体がペットらしくなったという
驚くべきはギンギツネの振る舞いがペットらしくなっただけでなく、体毛や骨格も"かわいらしく"変化したこと
家畜化すると次のような"かわいらしい"特徴が見られる
いったん小型化する
顔が平面になり丸くなる
性差が小さくなる
体重に対する脳の容量が小さくなる
家畜化はギンギツネのように人為的に引き起こされた例ばかりではない
イヌやネコを始めとして、自ら家畜化された例もある
人為的ではない家畜化を自己家畜化という
家畜化するとなぜ"かわいらしく"なるかという生物学的なメカニズムも研究されている
ストレスを感じると「闘争か逃走か反応」を引き起こす脳部位であるHPA系が肝だ
野生の哺乳類であっても子どもの内はHPA系が未発達なため人間に対して敵対反応を示さない
しかし成長してHPA系が発達すると次第に人間に「闘争か逃走か反応」を見せるようになる
家畜化すなわなちHPA系の発達が遅れることなので、それが"かわいらしい"形質になるよう影響する
人間も自己家畜化してきた
古代の人類は性差が大きく、脳容量はホモサピエンスまでは大きくなっていったものの、以降小さくなっている
脳容量が小さくなる一方で増えたのが友好性を増やす作用があるセロトニン
人間の赤ちゃんはチンパンジーやオランウータンと比べて脳機能にさほど違いはないが、ゆいいつ向社会性はずば抜けている
人間の生物学的な進化と文化の発展は双方向の関係にある
脳の発達が文化を進展させることは想像しやすい
逆の例として火を使った食文化がある
加熱された食物は消化しやすいことからエネルギーを消化ではなく脳に使うことができるようになる
他にも交易の文化があると病原菌が伝播しやすいためそれへの耐性を持った人間が生存に適していた例がある
自己家畜化すると敵対反応が失われるという話をした
それでも戦争がなくならないのは、失われた攻撃性がついかッとなるような「反応的攻撃性」だけであって、計画的に殺人を犯すような「能動的攻撃性」は依然として残っているから
第二章 私たちはいつまで野蛮で、いつから文明的なのか ―自己家畜化の歴史
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