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おすすめの詩

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今週の詩、おすすめの詩のまとめです。
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#現代詩

詩で息をする/詩集『海女たち』をめぐるアサノタカオさんワークショップ

詩で息をする/詩集『海女たち』をめぐるアサノタカオさんワークショップ

5年前。
新入社員のわたしは、女子トイレの鏡の前でアゴを懸命に動かしていた。
心の中では泣いていた。表情があまりに動かなさすぎて、表情筋をほぐしていたのである。

パワハラからのストレスで医師に「休職」を言い渡されたそのとき、「呼吸」も「声」も失ってしまっている状態だった。

さて、今わたしの目の前には韓国の詩人・許榮善(ホ・ヨンソン)さんが済州島(チェジュド)の海女さんの声を編んだ『海女たち』と

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【あなたに贈る詩】ダークでダメダメで、台風のような詩

【あなたに贈る詩】ダークでダメダメで、台風のような詩

SNSで「どんな詩が読みたいですか?」と呼びかけたところ、リクエストをたくさんいただいたので少しずつお答えします!

▼これまでのリクエストはこちらから

「ダークでダメダメな不良の詩」をIDEA R LAB大月ヒロ子さん、「台風のような詩」を大学生の山川真生子(やまかわ・まおこ)ちゃんからリクエストいただきました。

となれば一択、ロートレアモン伯「マルドロールの歌」。これしかありません。

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【あなたに贈る詩】世界へ心が向かう詩 #cocan

【あなたに贈る詩】世界へ心が向かう詩 #cocan

「ちょっとしたできるコト」を交換しあうcocanというサイトで、「詩のセレクト」を出品しています(お金はかかりません)。

▼cocan体験記(ふにさん、ありがとうございます!)

さて、今回お話させていただいたのは、デザイナーのたゆさん。
凛としたきれいさが漂っている方でした!マイナスイオン…。

まずは軽くおしゃべり。去年はコロナもありなかなか思うように動けなかったけど、いろんなものに出逢いた

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今週の詩|"リイ君おれが好きだったか"ギョウザと人権(世界人権デー)

今週の詩|"リイ君おれが好きだったか"ギョウザと人権(世界人権デー)

こんにちは。詩のソムリエです。

今週は、12月4〜10日が「人権週間」。というわけで、少年の純な心が胸に残り続ける、こんな詩を。詩人・茨木のり子に「ここ三十年ばかりの間に書かれた詩のなかで最良のものの一つ」(『詩のこころを読む』岩波ジュニア新書)と言わしめた詩です。

「住所とギョウザ」岩田宏

大森区馬込町東四ノ三〇
大森区馬込町東四ノ三〇
二度でも三度でも
腕章はめたおとなに答えた
迷子のお

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詩集紹介|弱さは、すべてを受け入れる谷間。田中重人さん詩集『トトとコト』『ヴァルネラブル』

詩集紹介|弱さは、すべてを受け入れる谷間。田中重人さん詩集『トトとコト』『ヴァルネラブル』

小さく祈る夜が来て、朝はまぶしさでいっぱいで。
きらきら光る露を、ほそい糸で通したような詩集に出会った。

徳島・神山町在住の詩人、田中重人さんの第一詩集『トトとコト』第二詩集『ヴァルネラブル』。たまたまインタビュー記事を読んだことがきっかけとなった。

田中さんの言葉に、ひとつひとつうなずき、微発光しているような詩の優しいあかるみに心打たれた。そして気づけば泣いていた。

この詩集をすぐに読みた

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結婚する人へ贈りたい、世界のとっておき名詩5選+α

結婚する人へ贈りたい、世界のとっておき名詩5選+α

こんにちは。詩のソムリエです。
みなさんにとって、2021年はどんな一年でしたか?

私自身は、結婚という大きな節目を迎えました。そして、芸能人の方々も多く結婚した年でもありましたね。

そこで、結婚にまつわる世界の名詩をご紹介したいと思います。

「結婚 詩」とウェブで調べても、吉野弘さんの「祝婚歌」しか出てきません。もちろん「祝婚歌」もいい詩ですが、ほかにも思わず誰かに贈りたくなる詩もたくさん

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今週の詩|世界でいちばん短い詩「冬眠」(草野心平)

今週の詩|世界でいちばん短い詩「冬眠」(草野心平)

こんにちは。詩のソムリエです。

今週の七十二候は「熊穴にこもる(くま あなにこもる)」。
北風びゅうびゅう吹いてきて、人間も冬眠したいような季節ですね。

今日は、「冬眠」というタイトルの、「世界でいちばん短い詩」を紹介します。

読めない詩?草野心平(1903-1988)による、こんな詩です。

「冬眠」草野心平
                ●

・・・

はい、「●」だけの詩です。
「え

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今週の詩(処暑)│此處で人間は大きくなるのだ(山村暮鳥)

今週の詩(処暑)│此處で人間は大きくなるのだ(山村暮鳥)

こんにちは。詩のソムリエです。

今週のはじまりは、禾乃登(こくもの すなわちみのる)。
このあいだ、近くをぐるっとドライブをしたときに、稲穂の波を目にしました。黄金色の稲がびっしりと埋め尽くす田んぼの姿は、ほんとうに美しい…
惚れ惚れとしてしまいます。
海や山とは異なる美しさです。

今週の詩は、実りの秋の訪れにちなんでこちら。明治・大正期の詩人 山村暮鳥(やまむら・ぼちょう 1884-1924

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今週の詩(処暑)|「秋のひかり」(八木重吉)

今週の詩(処暑)|「秋のひかり」(八木重吉)

おはようございます。詩のソムリエです。

あっという間に、8月の終わり。どんな夏をすごされましたか?
すっかり涼しくなった風や虫の音に、秋の訪れを感じますね。巨峰や梨が今年は当たり年のようで、体の中もだんだん秋にシフトしていっています。

今週の詩は、八木重吉(やぎ・じゅうきち 1898-1927)の「秋のひかり」という短い詩です。

「秋のひかり」

ひかりがこぼれてくる
秋のひかりは地におちて

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【終戦記念日】平和を慈しむ詩/詩人と戦争

【終戦記念日】平和を慈しむ詩/詩人と戦争

詩と戦争8月15日。今日は第二次世界大戦が終わった日。
この日になると、戦後すぐに作られた、女性詩人によるこの詩を思い出す。

「美しい国」   永瀬清子

はばかることなくよい思念(おもひ)を
私らは語ってよいのですって。
美しいものを美しいと
私らはほめてよいのですって。
失ったものへの悲しみを
心のままに涙ながしてよいのですって。

こんなスタンザ(連)からはじまるこの詩は、戦後すぐ、手漉き

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今週の詩(立秋)|「秋の手帖」(工藤直子)

今週の詩(立秋)|「秋の手帖」(工藤直子)

おはようございます。詩のソムリエです。

今朝、目がさめて外に出たら、すーっと涼しい風。
空をあおぐと、いつもより透明感がまして空高く見えました。
昨日はまぶしい青にもくもく入道雲だったのに、急に大人っぽい…。

"夏と秋よ おまえたち
「きのう」と「きょう」のあいだで
どんな話し合いをしたんだい?"

工藤直子さんの「秋の手帖」の一節がふいに頭をよぎりました。
こんな詩です。

「秋の手帖」

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今週の詩(大暑)|「おれはかまきり」

今週の詩(大暑)|「おれはかまきり」

おはようございます。詩のソムリエです。
今は七十二候でいう「大暑(たいしょ)」。
先週は「小暑」だったので、まさに夏本番!

ギラギラ太陽に映える詩といえば…「おれはかまきり」(工藤直子さん『のはらうた』)!

教科書で習った人も多いかもしれません。詩になじみのない方からも「なんか、"なつだぜ、かまきりだぜ"…みたいなやつは覚えてる」と言われます。それくらいインパクトがある詩ですよね◎

のはらう

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今日はスポーツの日|「走る」詩

今日はスポーツの日|「走る」詩

おはようございます。めぐ@詩のソムリエです。
今日は「スポーツの日」。

みなさんは、オリンピックのどの競技に注目していますか?
わたしは、陸上競技。「走る」ことにまつわる詩を紹介します。

「走る」ことのピュアなよろこびと驚き最初のオリンピック(紀元前776年)でも公式競技だった陸上競技。スタート地点から祭壇まで誰が一番早くゴールできるか、という競技で、タックルなどの妨害もありだったそうです笑 

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今週の詩(小暑)/「雨の来る前」

今週の詩(小暑)/「雨の来る前」

おはようございます。詩のソムリエです。

今の暦は「小暑(しょうしょ)」。梅雨明け、暑さがどんどん強くなっていくという意味。この日から暑中見舞いを出しはじめるそう。(「暑中」というのは、小暑と大暑のあいだだから「暑中」らしい👀)

そこで、詩のソムリエから暑中お見舞いをみなさんへ。伊藤整(いとう・せい)の「雨の来る前」です。

「雨の来る前」

ざあっとやって来いよ 夏の雨
地上のすべてのものは

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