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エッセイや漫画や小説や……読んだ本の記録
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#読書

星野源『よみがえる変態』

星野源『よみがえる変態』

源さんの『よみがえる変態』の文庫版。

先の2泊3日の東京旅行と、帰ってきてからの数日をかけて、読了した。

もう、なんて言葉にしたらいいのだろうか。

1994年生まれのわたしは、いま29歳、今年30歳になる。

で、この『よみがえる変態』のもとのエッセイが連載されていたのが、2011年の春ころから。

源さんは1981年生まれだから、ちょうど源さんが30歳前後の頃の日々や風景や思いがつづられて

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最果タヒ『愛の縫い目はここ』

最果タヒ『愛の縫い目はここ』

場所を変え、時間を変え、ちょっとずつ、ちょっとずつ読んで、さっき読み終えた。

一冊の本だけど、何か大きなものを抱きしめるように、大事に読んだ。

この詩集に収められている最果タヒの詩には、
光があって、
色があって、
透明があって、
大地や空があって、
身体があって、
傷があって、
愛があった。

ここの部分を読んだ時、わたしの身体はカフェの窓際にあった。

顔を上げると目の前には、大きな窓があ

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いつでもやり直せる

いつでもやり直せる

マンガ『島さん』がめちゃくちゃ良かった。

深夜のコンビニで働くおっちゃん・島さんが主人公。彼を中心に描かれる人間模様が、人間くさくて泥くさくて、やさしさに溢れていて、とにかくすんばらしい。このご時世も相まって、やたらと染みた。

この中に、「ヤネさん」というエピソードがある。善悪が揺らいでしまうような「どうしようもなさ」と、それをも包み込もうとしてくれるやさしさに心がかき乱されて、お気に入りのひ

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作品と「目が合う」瞬間

作品と「目が合う」瞬間

積ん読は、いい。

なにせ「本と目が合う」瞬間がある。部屋の一角できれいに重なる本の背表紙と、「あっ、」と目が合う瞬間が。

不思議なもんで、そうしたアイコンタクトから始まる読書の旅は、その時その瞬間に自分が探しているものを教えてくれたり、欲していることばをくれたりする。

先日もそんな読書体験があった。読んだのは、吉田秋生先生のマンガ『海街diary』だ。

全9巻のこの作品、実は7巻までは読ん

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若林正恭『表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬』

若林正恭『表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬』

「ぼくは今から5日間だけ、灰色の街と無関係になる」

キューバに向かう飛行機に乗った若林さんが、東京のまちを見下ろしたときのことばだ。これを読んだわたしは、いろんな含みを込めた結果「街が灰色」なのだと思っていた。しかしキューバ編を読み終わる頃には、これが「自分の目が、心が、街を灰色に映していた」という意味なのだと気づいた。

この本を読むまでわたしは、旅に出る行為は「逃げる」ことに等しいと思ってい

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