ひろちゃん

同年代の友人と、本や音楽の趣味がかけ離れています。日頃胸中に溜めていた思いつき、あるい…

ひろちゃん

同年代の友人と、本や音楽の趣味がかけ離れています。日頃胸中に溜めていた思いつき、あるいは文章の練習のために書評を書いていこうと考えています。よろしくお願いします。

記事一覧

現代の生き方について

 現代の生き方について。現代は、迅速さ、突発さ、軽はずみが幅を利かせる世の中だから、深く考えて立ち止まる必要は毛頭ない。仮に、沈思黙考する人があれば、私たちはで…

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中村真一郎の想像力と現代の想像力について

 中村真一郎(1918~1997)は、戦後を代表する作家。加藤周一、福永武彦らとマチネ・ポエティックを結成し、1946年に前記二名との評論集『1946年文学的考察』にて、文壇に登…

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久しぶりの古書店

  今日、久しぶりに大阪天神橋筋商店街のとある古書店に立ち寄りました。人文学の本を中心として書棚には、生きる上では全くお金にならないような本が所せましと並んでお…

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LGBT問題に対する新たな視点

 昨今の風潮は性的マイノリティに対する偏見撲滅の方向に働いているようである。これは、良い兆候で、いずれ偏見というのは無知と同義語であり、百害あって一利なしの代物…

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すぐ行動する人、腰が重い人

 現代の社会では求められるのはいうまでもなく前者で、その価値は万人に認められている。すぐ行動することは、スピード社会で生き残るには必要不可欠なスキルであり、目の…

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澁澤龍彦 『快楽主義の哲学』

本の感想の前に 性に関する事柄はまるで禁忌であるかのように秘匿され、公には触れられずむしろ避けられる問題です。最近は少しずつ、女性の社会進出、生理など女性に対す…

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なろう恋愛小説について

 なろうの恋愛小説には大きな特徴があります。まず、恋愛ジャンルは異世界と現実世界に分けられ、前者は悪役令嬢ものが主で、後者はハーレムものが多いです。それに書き手…

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加藤周一について Ⅰ

 加藤周一(1919〜2008)は戦後日本を代表する評論家で、古今東西の書を読み、国内外の大学で教鞭をとりつつ数多くの著作を世に出した。一時、立命館大学の国際関係学部の客…

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「隠す文化」について 覚え書き

 日本には「隠す文化」というのがあるかもしれない。特定の技術の秘匿、風紀を取締るための隠匿、私的理由の隠蔽は日常茶飯である。政治の舞台裏は秘中に置かれ、本音や閨…

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形式と内容

松岡正剛さんは『知の編集術』(講談社現代新書)の中で、21世紀は方法の時代である、20世紀に大方の問題は提出された、と書いています。 確かにその通りで、今は誰もが…

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天才不要論ー語学ー

天才や偉人の逸話が、教育、道徳、人生問題に際して援用、引用されることは多くあります。 私たちは、その逸話一つ一つに対して、天才との距離を長短を感じて、励まされ…

現代の生き方について

現代の生き方について

 現代の生き方について。現代は、迅速さ、突発さ、軽はずみが幅を利かせる世の中だから、深く考えて立ち止まる必要は毛頭ない。仮に、沈思黙考する人があれば、私たちはできるだけの善意でもって彼を泥沼から救わなけばならない。止まって考えているうちにも、時世から脱落し、電車には乗り遅れ、腰は重く、メールの返信は遅く、神経症で一行も書けず、内向的になってしまう。反射的痙攣的に0か1かの二通りの問題解決が尊ばれる

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中村真一郎の想像力と現代の想像力について

 中村真一郎(1918~1997)は、戦後を代表する作家。加藤周一、福永武彦らとマチネ・ポエティックを結成し、1946年に前記二名との評論集『1946年文学的考察』にて、文壇に登場した。その後、『四季』四部作など、前衛的な小説を出す一方で、評論として源氏物語とそのエピゴーネン(亜流作品)を随筆風に綴った『王朝文学論』、江戸の漢詩人を描いた『頼山陽とその時代』、文化文政期の芸術家を描いた『蠣崎波響の

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久しぶりの古書店

久しぶりの古書店

  今日、久しぶりに大阪天神橋筋商店街のとある古書店に立ち寄りました。人文学の本を中心として書棚には、生きる上では全くお金にならないような本が所せましと並んでおり、その無意味さ故か、荘厳で静かな空間を作り出していました。

 未曾有の疫病の流行、ヒステリーじみたメディアの情報で、世情人心荒み、「Stay home」とは言うものの、中々落ち着いていられるような状態ではありませんでした。言うまでもなく

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LGBT問題に対する新たな視点

 昨今の風潮は性的マイノリティに対する偏見撲滅の方向に働いているようである。これは、良い兆候で、いずれ偏見というのは無知と同義語であり、百害あって一利なしの代物であるから、大いに推進せしむべきものである。

 よって、ここではそのような賛成あるいは反対といった無内容の次元で性的少数者について考えるではなく、その少数者を生み出す社会的条件について少し考えてみようと思う。
 
 ベトナム戦争反対を掲げ

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すぐ行動する人、腰が重い人

 現代の社会では求められるのはいうまでもなく前者で、その価値は万人に認められている。すぐ行動することは、スピード社会で生き残るには必要不可欠なスキルであり、目の前のチャンスをみすみす逃さず、食らいつくための処世術でもある。

 反対に、腰が重い人は鈍く、頭でっかちで心配性。生気を無くした幽霊のような印象を与える。

 どうしてこのようなことになってしまったのだろうか。昔は、すぐ行動する人間を讃える

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澁澤龍彦 『快楽主義の哲学』

本の感想の前に 性に関する事柄はまるで禁忌であるかのように秘匿され、公には触れられずむしろ避けられる問題です。最近は少しずつ、女性の社会進出、生理など女性に対する世間の抑圧や無理解を是正し、LGBTの人たちを社会的に承認する動きが見られます。しかし、それが大多数の主張となった時点でその運動は、また新たな抑圧を生み、最初の純粋な動機を失っていくように思われます。

 昨今ジェンダーの問題が取り沙汰さ

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なろう恋愛小説について

 なろうの恋愛小説には大きな特徴があります。まず、恋愛ジャンルは異世界と現実世界に分けられ、前者は悪役令嬢ものが主で、後者はハーレムものが多いです。それに書き手の性別も上の二分法に従い、主に異世界を女性、現実世界を男性とすることが多いように思われます。

 今から話す内容は現実世界の恋愛小説、すなわち男性が書くものについてです。

 その目立った特徴と言えば、一に美少女に言い寄られる、二にぼっち、

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加藤周一について Ⅰ

 加藤周一(1919〜2008)は戦後日本を代表する評論家で、古今東西の書を読み、国内外の大学で教鞭をとりつつ数多くの著作を世に出した。一時、立命館大学の国際関係学部の客員教授、平和ミュージアムの初代館長を務めた。

 その縁もあって、死後蔵書が加藤周一文庫として同校平井嘉一朗図書館へ寄贈された。

 戦後まもなく日本を離れ、諸外国で生活し、彼我の文化を考察し、日本文化に視線を向けた。

 主著『

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「隠す文化」について 覚え書き

 日本には「隠す文化」というのがあるかもしれない。特定の技術の秘匿、風紀を取締るための隠匿、私的理由の隠蔽は日常茶飯である。政治の舞台裏は秘中に置かれ、本音や閨房の秘事、屍体は建前上忌避され包み隠される。

 過去を振り返っても、古今和歌集の秘伝の注釈を伝授する古今伝授や法隆寺夢殿の救世観音像、ハンセン病患者の隔離や姥捨山の物語の例がある。前者は技術の秘匿と秘仏であり、後者は社会の異分子や余計者を

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形式と内容

松岡正剛さんは『知の編集術』(講談社現代新書)の中で、21世紀は方法の時代である、20世紀に大方の問題は提出された、と書いています。

確かにその通りで、今は誰もが資格試験の勉強に邁進したり、ビジネス書やセミナーで特定の技術を学んだりしています。「〜術」や「how to」本が大量に出版され、資格試験参考書とともに書店の本棚の大部分を占めています。

この風潮が善悪を決めることは難しいですが

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天才不要論ー語学ー

天才や偉人の逸話が、教育、道徳、人生問題に際して援用、引用されることは多くあります。

私たちは、その逸話一つ一つに対して、天才との距離を長短を感じて、励まされたり、絶望したりしています。しかし、それは本当に必要なことなのでしょうか?

例えば、語学について。イスラーム研究の泰斗で知られる井筒俊彦(1914〜1993)。西洋哲学と東洋哲学を縦横に考察した主著『意識と本質』、イスラームの経典『コー

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