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「損切丸」- 信用リスク編

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「損切丸」から、「デフォルト」リスクに焦点を絞って、危機時の「信用リスク」について書かれた記事群。
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#資金繰り

「こわれもの」(Fragile)。

「こわれもの」(Fragile)。

 今の相場を見ていて思い浮かんだ言葉が「こわれもの」。標題 ↑ 添付のジャケットとタイトルを見てすぐにピンときた人は往年の ”プログレ” (Progressive Rock)ファン。おそらく筆者(58歳)と同世代か上の人だ。

 元・専門家としては習性(苦笑)として見入ってしまうが、3ヶ月~2年の米国債を見ていると倒れそうになる。「利上げ続行」「利上げ無し」の間を行ったり来たりしており、こんな短い

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「インフレ」か「銀行救済」か。二兎を追うFRB。ー 荒れるドル短期金利。

「インフレ」か「銀行救済」か。二兎を追うFRB。ー 荒れるドル短期金利。

 CPI自体は「遅行指標」であり過去の結果に過ぎない。目の前で起きている「銀行破綻」と直接比べるのもどうかとは思うが、2月の数字はほぼ予想通りであり、3月FOMCで+0.25「利上げ」するかどうかの決定打にはなり得ない。今はとりあえず銀行の「資金繰り」が最優先。

 しかしドルの短期金利はもう滅茶苦茶(苦笑)。一時@4%割れまで突っ込んだ2年米国債は@4.3%台までしれっと戻しているし、@4.6%

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聞こえてきた「資金繰り」の "悲鳴" 。ー もう "お金” や "銀行" が「真ん中」ではない。

聞こえてきた「資金繰り」の "悲鳴" 。ー もう "お金” や "銀行" が「真ん中」ではない。

  アメリカの*FF市場での取引が急増している。QE(量的緩和)の影響で1,000億ドル以下に減っていたが、QT(量的引締)、「利上げ」により銀行の「資金繰り」がタイト化。直近の取引高が急増し1,200億ドル(≓15.6兆円)を超えている( ↑ 標題グラフ)。

 FF市場の主な貸し手はFHLB(連邦住宅貸付銀行)。「利上げ」による金利上昇で余剰資金を同市場に積極的に振向けている。一方借り手側は国

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中国経済失速に脅える ”デフォルト予備軍” -「資金繰り危機」は突然訪れる。

中国経済失速に脅える ”デフォルト予備軍” -「資金繰り危機」は突然訪れる。

 ↑ 標題添付の「セディ」、どこの通貨かお判りだろうか。筆者も知らなかったがアフリカ・ガーナの法定通貨だ。FXで1ドル=@15セディに急騰(セディ安)から@10割れに戻ったと安心していたら、あっという間に「デフォルト」。もしFXで手張りしていれば、まさに「天国と地獄」。

 おそらくセディ急回復はIMFによる救済が主因だが、1週間も経たないうちに暗転。まあ55億ドル≓7,500億円程度の債務で国外

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忘れた頃にやって来た「ビットコイン」- 全てをひっくり返す「デフォルト」

忘れた頃にやって来た「ビットコイン」- 全てをひっくり返す「デフォルト」

 "FTX追加資金なければ破産法申請と警告、80億ドル(≓1.2兆円)不足"

 理由も無く@20,000ドル近辺をウロウロしていてつまらない相場だと思っていたビットコイン(BTC)が突然急落。暗号資産業者FTXが経営危機にあると報じられたからだ。バイナンス社が買収するのではないか、という憶測で何とか持ち堪えていたが、同社が方針を撤回。今年5月に破綻した韓国発の ”テラ・ショック” の再現となりそ

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「貿易赤字」→「円安」→「貿易赤字」の "無限ループ" 。

「貿易赤字」→「円安」→「貿易赤字」の "無限ループ" 。

 参照: 逃げ出す「お金」。向かう先は...。|損切丸|note

 判っていても見る度に溜息が出てしまう。またも「貿易赤字」が▼2兆円を超える「円の垂れ流し」。「日本株式会社」は「仕入値」が上がり続けて赤字経営が続く商社のよう。

 昔担当していた輸入商社の財務部長が言っていたが、商売の要は「仕入れ」。どんなに営業が頑張っても「仕入れ」が悪ければ儲からない。逆に言えば「仕入れ」さえ良ければ営業は

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急浮上する「倒産リスク」。- 「信用」スプレッド拡大は危険水域に。

急浮上する「倒産リスク」。- 「信用」スプレッド拡大は危険水域に。

 金利@4%「新時代」の到来 vs 「異次元」の国・日本。|損切丸|noteでこういう表現を用いた。

 標題添付のグラフ ↑ は国債やAAA格の優良社債といわゆる ”ジャンク債” との金利差だが、2022年初から急拡大している。原因はFRBによる「利上げ」+「QT」(量的引締)。特に後者の影響が大きい。

 逆に言えばスプレッドが+200BP(2%)そこそこに縮小していた2020~2021年が

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金利@4%「新時代」の到来 vs 「異次元」の国・日本。

金利@4%「新時代」の到来 vs 「異次元」の国・日本。

 米国債市場が "1兆ドルの売り” におののいている。

 FOMCから24年ぶりの「ドル売り・円買い介入」を挟んでたった2日間。10年債は一気に+0.20%も上昇して@3.76%、1~5年債は全て@4%台に乗せた。そのほとんどは「介入」後だ。

 まさに金利@4%「新時代」の到来。

 開けてしまった「パンドラの箱」。- 「ドル売り・円買い介入」が及ぼす「金利」への影響。|損切丸|note とい

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続・眠れる?「灰色のサイ」。ー 8月の貿易収支から見えてくること。

続・眠れる?「灰色のサイ」。ー 8月の貿易収支から見えてくること。

 眠れる?「灰色のサイ」。 ー 予想外の中国「利下げ」が示唆すること。|損切丸|note の続編として。

 なかなか内情の見えにくい中国だが、今や世界経済やマーケットへの影響は無視できないほど大きい。出てくる数字は丹念に拾っていこう。

 8月中国貿易収支 ↓ がなかなか興味深い。

 輸出だけ見ると順調に回復しているように見えるが、それでも予想はもっと上だったようだ。やはりアメリカの対中関税や

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眠れる?「灰色のサイ」。 ー 予想外の中国「利下げ」が示唆すること。

眠れる?「灰色のサイ」。 ー 予想外の中国「利下げ」が示唆すること。

 ①感染拡大②雇用不安③不動産危機の悪化で企業・消費者が借入に慎重になったというが、統計を信用するなら凄まじい「信用収縮」だ。ここまで酷いと解説は不要。完全に「赤信号」。

 8/15 中期貸出制度(MLF)1年物金利を@2.85% → @2.75%、7日物リバースレポ金利も@2.1% → @2%にに予想に反して「利下げ」。大幅「利上げ」が進むアメリカとは正反対の動き。

 7,000兆円もの「借

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「インフレ」と「資金繰り」の狭間で。  ー 「倒産」を巡る葛藤。

「インフレ」と「資金繰り」の狭間で。 ー 「倒産」を巡る葛藤。

 ”7/20 米最大手EVメーカーのテスラ社は2022. 4〜6月に保有するビットコイン(BTC)の75%を売却”

 「あのイーロン・マスクでも "資金繰り" に苦労してるんだな...」

 折しもツイッター社買収でゴタゴタしており、BTC売却によってテスラが手にした「お金」は9.36億ドル ≓ 1,300億円。6月末時点の保有残高は2.18億ドル ≓ 300億円へ減少している。通りで相場があん

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「弱いところを攻めろ!」 Ⅱ。ー リスクは「金利」から「信用」へ。

「弱いところを攻めろ!」 Ⅱ。ー リスクは「金利」から「信用」へ。

 「弱いところを攻めろ!」 ー 「資金繰り」が決め手の「信用格差」。|損切丸|note の続編。

 米国債の本格的売り相場に引っ張られるグローバル市場。これだけ「金利」がドタバタ動くのは久しぶりで何だか懐かしいが(苦笑)、実は「金利」の "中身" が変化してきている。

 標題に添付したのはアメリカの「高金利債券」にあたる「ジャンク債」の金利推移だが、2022年に入り一気に@5%超に金利が急騰(

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「弱いところを攻めろ!」 ー 「資金繰り」が決め手の「信用格差」。

「弱いところを攻めろ!」 ー 「資金繰り」が決め手の「信用格差」。

 筆者が高校生の頃、まだジャイアント馬場さん(若い人は知らないか)が現役だった時に深夜のプロレス放送が好きでよく見ていた。じっくり3分かけて最後は「スペシウム光線」で怪獣をやっける「ウルトラマン」と同じでかなり "シナリオ" めいていたが(苦笑)、ヒール(悪役レスラー)がメインイベンターの怪我している所を執拗に痛めつけるのが定番。「苦しんで最後は勝つ」。まあかなり「水戸黄門」的ではあった。

 マ

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続・マーケットがFRBに「ダメ出し」? ー "リセッション" で株安? 金利低下? 一種の錯乱状態。

続・マーケットがFRBに「ダメ出し」? ー "リセッション" で株安? 金利低下? 一種の錯乱状態。

 「株は "リセッション" を過度に織り込みすぎている」

 おいおい...。ある有力投資銀行のアナリストが ↑ こんなことまで言い出した。いくら株価を上げたいからといって、これはないだろう。

 株価は「過剰流動性」で高騰した価格の修正に動いているだけで "リセッション" など微塵も織り込んではいない。本当に景気後退しているなら需要減少で、WTI@90ドル割れ、NYダウ@28,000ドル割れぐら

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