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「損切丸」- 信用リスク編

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「損切丸」から、「デフォルト」リスクに焦点を絞って、危機時の「信用リスク」について書かれた記事群。
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記事一覧

 "チャイナプレミアム" の出現と中国の苦況

"チャイナプレミアム" の出現と中国の苦況

 かつて日本のバブル崩壊後 "ジャパンプレミアム” という現象が起きた。筆者は英銀に転職した後だったので邦銀にドルを貸す立場になったが、社内でも邦銀向けのエクスポージャー(貸出資産)を厳格に管理する方向に転換。特に無担保でドルなどを貸し出す資金枠は厳しくなり、奇しくもグローバル管理を任される立場になった

 最悪期で "ジャパンプレミアム” は@LIBOR+100~200BPにも及び、特に地銀など

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溢れる「過剰流動性」の "器" - 「逆イールド」の米国債 → ナスダック → ビットコイン、日経平均、そして...

溢れる「過剰流動性」の "器" - 「逆イールド」の米国債 → ナスダック → ビットコイン、日経平均、そして...

 2023年、シリコンバレー銀行(SVB)やシグチャー銀行を吹き飛ばした米国債の "暴風雨” 。早期「利下げ」騒ぎで「逆イールド」を形成したが今や完全に行き詰まり。相場のダイナミズムを失っている。大やられした米銀もFRBの監視の目が厳しくなり米国債の "器" は一杯。商売あがったりである

 低調な米国債市場と歩調を合わせるように、相場を牽引してきたナスダックや ”マグニフィセント7” も上が詰ま

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想像以上にしつこい「インフレ」

想像以上にしつこい「インフレ」

 「ドル円」ショートを仕掛けていたウォール街やファンドの「ドル金利低下」の願い虚しく、想像以上にしつこいアメリカの「インフレ」。 やっぱりアメリカで燻る「インフレ」の ”種火” Ⅱ。|損切丸 (note.com) ということなのだろう。その割に株価は意外に底堅い

 続・逃げ出す「お金」。向かう先は... @2024|損切丸 (note.com) で「貸出」の鈍化や「預金」の流入を受け、欧米の銀行

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米国経済本当は強い?弱い?

米国経済本当は強い?弱い?

 「強い」 - ことアメリカの「雇用」については統計が出る度にそう唸ることがもう1年以上続いている。米経済のベース、特に「需要」が強いこともあるが、やはりベビーブーマーの抜けた▼4,000万人の ”穴” はなかなか埋まらない。だから「人件費」をコアとした「インフレ」基調は強いまま

 前稿.「逆イールド」が奪う「銀行」の体力 - 「これ以上金利上昇に耐えられない」 ≓「過剰流動性」の "禁断症状"

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「逆イールド」が奪う「銀行」の体力 - 「これ以上金利上昇に耐えられない」 ≓「過剰流動性」の "禁断症状"

「逆イールド」が奪う「銀行」の体力 - 「これ以上金利上昇に耐えられない」 ≓「過剰流動性」の "禁断症状"

 前稿.「金利」が低下したのに「ナスダック」が売られた - "慌てず勇気を持って挑む" 2024年|損切丸 (note.com) でも触れたが、突如始まった "不可思議な米国債のラリー" 。発端はオフィスビル等商業不動産投資で失敗したNYバンコープ(NYCB)の経営危機だろう

 直接的予兆としてあったのがシェアオフィス " WeWork" の経営危機。日本でもSBが出資して兆単位の損失が出たが「

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 ”ノドに刺さった骨” -「日銀」が動いて初めて「インフレ」退治が始まる

”ノドに刺さった骨” -「日銀」が動いて初めて「インフレ」退治が始まる

 市場予想通り日銀は政策変更を見送ったが、案の定その後の植田総裁の記者会見が注目された。その中で Bloomberg 社に掲載された記事が興味深かった。データサイエンスの「ワードクラウド」の分析によるとと12/19の会見 ↓ に比べて今回( ↑ 標題添付)は「マイナス(金利)」「賃金」が増えているという。なるほど、さすがAI時代

 マーケットは素直に反応し、会見後ドル円は売られ、一時+400円以

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 "クレディビィリティ" (信用)の危機 -「お金」はどこへ向かうのか?

"クレディビィリティ" (信用)の危機 -「お金」はどこへ向かうのか?

 大統領返り咲きを狙う "T" 御仁が吠えているが、シェールガスをドンドン掘れ、という事らしい。「インフレ」で生活が苦しいアメリカ人に訴えている訳だが、こういう所は非常に上手い。まさにポピュリズムの権化。鬱憤が溜まりすぎて「脱炭素」などクソ食らえ!という感情も判らなくはない

 一方OPECなど産油国も必死。原油価格が@50~60ドルなんてことになれば今までのように "贅沢" できなくなるし「戦争

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我々は一体何に「投資」しているのか? - 「新NISA」開始に当って

我々は一体何に「投資」しているのか? - 「新NISA」開始に当って

 「インフレ時代」を迎えて「投資」を真剣に考えている人も増えている。今最大の関心事は2024年から開始される「新NISA」↑ 。「非課税投資枠」が一気に600万円→1,800万円と3倍に増額されると言うから無視できない。「税金」がかからないのはとても良い(笑)

 株式市場を活性化させたいという政府の狙いは明らかだが、さて国民がどこまで乗ってくるか。大発会で▼700円近く売られた日経平均だが「新N

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大き過ぎて潰せない。 "Too Big to Fail"

大き過ぎて潰せない。 "Too Big to Fail"

 なるほど、国内法では「破産」の概念が適用出来ないからNYでチャプター15か...。 「時限爆弾」は止められないのか。|損切丸 (note.com) はこの事だったのかもしれない。バイデン大統領も随分あからさま(苦笑)。

 発表は市場が閉まってからだったが、ここ数日引けにかけてジリジリ売られたNYダウやナスダックを見るに、マーケットでは "公然の秘密" として囁かれたいたのだろう。大統領が「時限

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本当は金利なんて上げたくないのに...。ー 「インフレ」で「お金」は "押し付け合い" 。

本当は金利なんて上げたくないのに...。ー 「インフレ」で「お金」は "押し付け合い" 。

 ゼロ金利に慣されている日本人にはにわかに信じられないかもしれないが、これが本当の「通貨安」。「円安」騒ぎがいかに「お金持ち」の戯れ言か。実際物価上昇率は年率@116%に達しており、政策金利は整合的ではある。まあトルコリラ ↓ をもっと酷くした状態だ。

 同時に通貨ペソの▼18%の切り下げを発表。きっかけは大統領予備選で極右のミレイ候補が1位になった事。この御仁、「中央銀行を廃止して経済を "ド

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「時限爆弾」は止められないのか。

「時限爆弾」は止められないのか。

 年齢のせいもあるのだろうが、失言癖が伝えられるバイデン大統領。今回は口が滑ったわけではなさそうだが、随分思い切った物言いである。まるで ”仮面ライダー” の世界(苦笑)。

 「時限爆弾」とは 「デフレ」の沼に落ちた中国。|損切丸 (note.com) の事。「損切丸」でも4年前から散々書いてきたが、やはり表面化に随分時間がかかった。走らない高速鉄道や「鬼城」(未完成で人の住んでいないマンション

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「デフレ」の沼に落ちた中国。

「デフレ」の沼に落ちた中国。

 遂にCPIがマイナス圏に突入して「デフレ」の沼に落ちた中国。不良債権問題の深刻さが徐々に明らかになってきた。

 恒大集団(エバーグランデ・グループ)の債務総額は約2.4兆元 ≓ 47兆円と伝えられ、債務超過に転落。投資銀行と不動産会社の違いはあれど、破綻したリーマンブラザーズの負債総額が約64兆円。日本でもそうだが保有不動産を競売で「損切り」すれば「半値八掛け二割引」で評価額の3分の1になるの

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「インフレ」投資研究。 ー 「賃貸経営」と「REIT」(不動産投資信託)

「インフレ」投資研究。 ー 「賃貸経営」と「REIT」(不動産投資信託)

 25年「投資銀行業務」に従事し、「アービトラージ」(裁定取引)とか「レバレッジ」「過剰流動性相場」等々、マーケットの "歪み" とその崩壊を散々見てきた。そう簡単には儲からない仕組みを理解しているが故に、「株」などのリスクアセットになかなか手が出ない。

 そうでなくとも今は「暗号資産」運営会社や米大手地銀があっという間に潰れてしまう怖い局面。本当に「お金」を出すならその会社の財務状況等を徹底的

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ある地銀の米国債運用担当者の嘆き。

ある地銀の米国債運用担当者の嘆き。

 @2021年6月:
 米国債担当者「10年米国債を@1.4%で1,000億円運用しようと思います」
 資金証券部長「利益の見通しは?」
 担当者「為替スワップで円投したドルコストが3ヶ月@0.4%ですので、@1.4%ー@0.4%=+1%のリターンで、年間+10億円の見込です」
 部長「それで今年度の目標(ノルマ)は達成だな。会議にかけてみよう」

 @2021年12月:
 担当者「ちょっと気にな

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