にゃー

詩、短編小説を載せていきたいと思います。よろしくお願いします。

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記事一覧

詩作08 『雨のまえの海』

名もなき雲たちは かえる海を見さだめている 波音はみなもとの産声 おもい潮風に促され 静かなフィナーレがはじまる 誰のためにも雨は降らない 星の光を夢見たしずく…

にゃー
1年前
1

『Kのこと』

「駄目だ。お前にはまだ葛藤が足りない」 そう言ってKの祖父はKからペティナイフを取り上げた。魚の捌き方は知っていた。Kの祖父は慣れた手つきで真鯛を捌いた。K…

にゃー
1年前
1

詩作07 『曇天の誓い』

昂ぶる気持ちとは裏腹に コンクリートのような雲がひろがる 予報も予想も暗いものばかり 誰もが終わりだと決めてかかってる 目を閉じて 肌を効かせろ ことばも数字も…

にゃー
1年前
3

おかしな詩04 『報せ』

カメムシにキスされたときにうたう詩 どういふつもりでせうか 森と草花からの警告でせうか 清き紅き膨らみを 緑のものに奪われて 魔除けの香は辺りを漂ひ 人の集ひし…

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1年前
12

おかしな詩03 『勘違い』

「あの子、自分に気があるんじゃね?」と思い、トキメキながら過ごしていたら、ふつうに前から彼氏がいたことを知ったときにうたう詩 たそがれの彼方に淡い人影 この痛み…

にゃー
1年前
3

おかしな詩02 『遅刻』

遅刻したときにうたう詩 ↓ まぼろしを打ち砕く手の平の刻限 頭の中で秒針が刻む 嘘と良心 責任と自由 発信音に振り子は揺れる 正直の皮を被った頭を垂れて 開き直…

にゃー
1年前
3

おかしな詩01 『電車』

めちゃくちゃ走ったけど結局電車に乗れなくて息を弾ませながらホームで佇んでいるときにうたう詩 ↓↓↓ 笑われるくらいがちょうどいい 笑わせることなんてできないから …

にゃー
1年前
3

詩作06 『グッドモーニング・グッドラック』

もう何年生きているのだろう 夢と現世を行き来して 責任 約束 関係 予定 騙されたフリをするのも飽きてきた 虚構の虚構を飲み食いし 何かがすり減る音で目覚める毎…

にゃー
1年前

詩作05『奈落より 愛をこめて』

天の川をかき消すネオンとLED 正方形のあれは空なのか 時間だけが主役の世界 つないだ手も偽りを予感させる ささやきのような明かりに見上げたら つぶらな白い一点を…

にゃー
1年前

詩作04 『猫と月浴み』

一畝(せ)離れたアスファルトに 黒猫の姿が浮いている 教わるように離れて寝ると 夜の冷たさが心地良い 裸足から伝わる土地の声 かすかな風が膝をくすぐる たっぷりと…

にゃー
1年前

詩作03

泣き崩れているひとがいる やすらぐ女が腎臓にいた苦しみあえいでいるひとがいる にやける餓鬼が腸にいた怒り狂うひとがいる はねまわるイタチが肝臓にいた痛みに叫ぶひと…

にゃー
1年前
1

詩作02

騒がしい場所には沈黙が似合う 嵐の夜にしか静寂は来ない 考えるな 踊れ 機械のように 街のひみつは害虫だけが知っている うず高いビル群に幾何学的な花束を プラス…

にゃー
1年前
1

詩作01

整形づらでテキをあざむく 守るための笑顔しか知らない 使い古された室外機に半生をみる 本当のことなんて誰も知れない 夜は星の影にすぎない 落雷に理由なんていらな…

にゃー
1年前
詩作08 『雨のまえの海』

詩作08 『雨のまえの海』

名もなき雲たちは

かえる海を見さだめている

波音はみなもとの産声

おもい潮風に促され

静かなフィナーレがはじまる

誰のためにも雨は降らない

星の光を夢見たしずく

水底を目指して群れ踊る

間違いつづけるサルたちに

けがされることなく

追記

久しぶりに海を見に行きました。

いつだったか、気象学の動画を見た時、あの雲はなんとか雲、その雲はなんとか雲、と名前をつけて解説をしていまし

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『Kのこと』

『Kのこと』

「駄目だ。お前にはまだ葛藤が足りない」
そう言ってKの祖父はKからペティナイフを取り上げた。魚の捌き方は知っていた。Kの祖父は慣れた手つきで真鯛を捌いた。Kは祖父と共に黙ってそれを船の上で食べた。
翌日、祖父はKの母親に連絡した。再婚した新しい父親が車で迎えに来た。Kは実家に連れ戻された。
二年後、Kは隣県の叔父の家に居候した。Kが頻繁に高校を休んでも叔父は何も言わなかった

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詩作07 『曇天の誓い』

詩作07 『曇天の誓い』

昂ぶる気持ちとは裏腹に

コンクリートのような雲がひろがる

予報も予想も暗いものばかり

誰もが終わりだと決めてかかってる

目を閉じて 肌を効かせろ

ことばも数字も置き去りにして

雲のはるか向こうへダイブする

待ち構えていたような青空と太陽

雲海は励ますように波立っている

導く小さな一等星は

君だけにしか見えないだろう

ライバルなんてどこにもいない

宿敵は己の影 それも受け

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おかしな詩04  『報せ』

おかしな詩04 『報せ』

カメムシにキスされたときにうたう詩

どういふつもりでせうか

森と草花からの警告でせうか

清き紅き膨らみを 緑のものに奪われて

魔除けの香は辺りを漂ひ

人の集ひし処には

しばらく足が向きませぬ

犯人は草葉に身を隠し

密かに嗤ってゐるのでせう

諦めの眼差しで見た空には

使者然とした雲ひとつ

風止み 音失せ はたと気が付く

赤い糸が綻び消えた

雲は静かに頷いてゐる

追記

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おかしな詩03 『勘違い』

おかしな詩03 『勘違い』

「あの子、自分に気があるんじゃね?」と思い、トキメキながら過ごしていたら、ふつうに前から彼氏がいたことを知ったときにうたう詩

たそがれの彼方に淡い人影

この痛みはよく知っている

針を飲み込むような現実に

自分の影だけが涙を流す

崩れ落ちるサグラダ・ファミリア

試合の前から勝負は決した

斃(たお)れる資格すら許されていない

磨いた剣は 己の身のみを傷つける

夢の中の 土埃の向こ

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おかしな詩02 『遅刻』

おかしな詩02 『遅刻』

遅刻したときにうたう詩



まぼろしを打ち砕く手の平の刻限

頭の中で秒針が刻む

嘘と良心 責任と自由

発信音に振り子は揺れる

正直の皮を被った頭を垂れて

開き直れる余裕が憎い

珈琲と煙を嗜んで

処世のむなしさにフタをする

いつもは見ない昼空に

嘆きと和みを同時に見る

駅までの歩みを遅らせたのは

雲の助言のせいにしておこう

追記
社会人になっても年に2回は必ず寝坊遅刻し

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おかしな詩01  『電車』

おかしな詩01 『電車』

めちゃくちゃ走ったけど結局電車に乗れなくて息を弾ませながらホームで佇んでいるときにうたう詩
↓↓↓

笑われるくらいがちょうどいい

笑わせることなんてできないから

刻め この顔 この背中

弾む鼓動と見つめる視線

過ぎゆく人々に幸運の微笑みを

哀れな話にはしてくれるな

汗ばむからだを横たえて

列車の振動に共鳴する

その錆びたレールが導く先に

豊かな人生は待っているのか

制服姿

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詩作06 『グッドモーニング・グッドラック』

詩作06 『グッドモーニング・グッドラック』

もう何年生きているのだろう

夢と現世を行き来して

責任 約束 関係 予定

騙されたフリをするのも飽きてきた

虚構の虚構を飲み食いし

何かがすり減る音で目覚める毎日

枕を抱いて旅に出ようか

低い天井はしかし見破る

「そんな勇気もないくせに」

見えない鎖で引かれた頭に

働く理由を溶かし込む

追記

すごくすごく仕事に行きたくない朝に、こんな暗い詩を書いちゃいました。

どう

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詩作05『奈落より  愛をこめて』

詩作05『奈落より 愛をこめて』

天の川をかき消すネオンとLED

正方形のあれは空なのか

時間だけが主役の世界

つないだ手も偽りを予感させる

ささやきのような明かりに見上げたら

つぶらな白い一点を認める

井戸の底まであまねく照らせ

星空を知らない子どもたちは

月の報せで遊びはじめる

どこかに隠れている仲間たちに

月の模様の暗号であいさつを交わす

想像と祈りは時空を越えて

私のなかをたしかに照らす

追記

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詩作04 『猫と月浴み』

詩作04 『猫と月浴み』

一畝(せ)離れたアスファルトに

黒猫の姿が浮いている

教わるように離れて寝ると

夜の冷たさが心地良い

裸足から伝わる土地の声

かすかな風が膝をくすぐる

たっぷりとした満月を西に仰ぎ

月光の温度を確かめる

勝ち取ったなわばりの中で先生は

影のようにして同じ月を見ている

講義の終わりを知らせる車

やり過ごして振り返ると

先生はいなくなっていた

追記

夜によく出歩くことが多い

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詩作03

詩作03

泣き崩れているひとがいる
やすらぐ女が腎臓にいた苦しみあえいでいるひとがいる
にやける餓鬼が腸にいた怒り狂うひとがいる
はねまわるイタチが肝臓にいた痛みに叫ぶひとがいる
おどるピエロが心臓にいた笑い喜ぶひとがいる
真っ赤な牛が肺にいた血と骨と黄昏に、祝福を

追記

できる限り『善良な人間』であろうとするけど、腹の底を探ってみると醜悪な感情を見つけてしまう。そんな自分を思って書きました。

清濁合

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詩作02

詩作02

騒がしい場所には沈黙が似合う

嵐の夜にしか静寂は来ない

考えるな 踊れ 機械のように

街のひみつは害虫だけが知っている

うず高いビル群に幾何学的な花束を

プラスチックの彼女に記号的なキスを

正方形の夜空に隠れる烏を見た

月だけが憐れんで見おろしている

追記

昔、都会に住んでいた時のことを思い出しながら書きました。あの頃は若くて病んでたなーw

毎日、無数の人々が無言で無表情で

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詩作01

詩作01

整形づらでテキをあざむく

守るための笑顔しか知らない

使い古された室外機に半生をみる

本当のことなんて誰も知れない

夜は星の影にすぎない

落雷に理由なんていらない

同じ口で肉を食い音を吐く

便利な嘘で針はまわる

追記

職場の裏で煙をふかしていたとき、くたびれた室外機を見て「なんか自分もこんな感じなのかなー」と思ってツラツラ言葉を連想していきました。暗い!wメンタルがくたびれていた

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