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本や映画のおはなし

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大好きな本や映画、作品にまつわる「人」のお話。
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#韓国映画

続ける勇気がわいてくる。韓国映画『不思議の国の数学者』

続ける勇気がわいてくる。韓国映画『不思議の国の数学者』

 20~30代半ばまでは、映画館で映画を観ることが大好きでした。大学時代の後半を過ごした札幌では講義をさぼったり、さぼらなかったりしながら、「シアターキノ」や、今はなき名画座「蠍座」によく通ったものです。

 関西に戻ってからは、神戸の「元町映画館」や「シネリーブル神戸」に足繁く通ったり、神戸100年映画祭で過去の貴重な名作を大スクリーンで鑑賞したり。大阪の「シアターセブン」「シネリーブル梅田」「

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映画『アジアの天使』が導いてくれた出会い

映画『アジアの天使』が導いてくれた出会い

 札幌で過ごした学生時代から、韓国に移住するまでの十数年。私の趣味は「映画館で映画を観ること」だった。ところが、韓国で妊娠・出産・育児を経験してきたこの4年。映画館にはたった3回しか足を運ぶことができなかった。

 最後に出かけたのは2年前だ。当時1歳になったばかりの息子を産後初めて夫に任せ、一人で韓国映画『82年生まれ、キム・ジヨン』を観に行った。

 物語の中盤、私の目から涙がこぼれ落ちそうに

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『82年生まれ、キム・ジヨン』を語る② 私と夫に生まれた変化

『82年生まれ、キム・ジヨン』を語る② 私と夫に生まれた変化


小説の絶望感を経て、映画で描いた希望 物語の中で、キム・ジヨンは子どもを保育園に預け、再就職を目指すものの、「他人の人格が憑依して思いを語りだす」という言動が増え始め、夫の勧めで精神科を訪れる。小説は男性精神科医のカウンセリングカルテを読むような形で、淡々と物語が進んでいき、丁寧な心理描写や感情的な表現というものがほぼない。

 それはこの夏、4世代にわたる在日コリアン一家の人生を描いたミン・ジ

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『82年生まれ、キム・ジヨン』を語る① 義母と私と母の物語

『82年生まれ、キム・ジヨン』を語る① 義母と私と母の物語

 50年生まれの義母 数か月前、ソウルから車で2時間ほど離れた田舎町にある夫の実家を訪ねた時、義母がこんな話を始めたことがあった。その時私は台所に立ち、義母と一緒に昼食用のチャプチェ(韓国春雨と肉や野菜を甘辛く炒めたもの)を作っていた。

「結婚して国民学校(小学校)の教師を辞めた時、お父さんがソウルで会社に勤めていたんだけど、息子が生まれて1年経った頃、突然、実家に帰って酪農をしようと言いだして

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