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【第二話】魔女はかく語りき
Ⅲ
暗い。視界に映る全ての明度が暗く、色を失っているようだった。
心の縁には、ただ虚無が広がっていた。
ただ無感情だった。
いまは、なにも恐ろしくもなく、身体中の痛みすら感じなくなっていた。
頭の中を生暖かいベールが覆っているように、何もはっきり考えることができなくなっていた。
気がつけば、学校の屋上にやって来ていた。
ここは、かつて眺めの良い場所だった。心地よい風が吹いて、遠くで鳥が鳴いていた
【第一話】魔女はかく語りき
魔法の存在を識ったのは、丁度十歳を迎えた位の頃だったろうか。
夏休みの暮れに、田舎の祖母の屋敷に訪れた時だった。
まじないの類いを嫌う両親が、麓に買い出しに出掛けている間に、祖母が或"儀式"を私に見せてくれたのだ。
儀式と謂っても、血塗れのおどろおどろしいものや、大掛かりなものではない。
それは大体こんな風な儀式だった――――――。
――――――まず、祖母は納屋から腰ほどの長さの注連縄を取り出して