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組織開発は人事部門の為だけに在るのか

組織には継続的発展が求められます。
組織を発展させるには、人事部門だけでなく組織のすべてのメンバーが関与する必要があります。関与の必要性としては、組織開発には制度設計や仕組み構築だけでなく、人々の意識改革と自発的な行動変容が欠かせないからです。
後者こそが組織全体のエンゲージメントを高める鍵となります。

たとえば、業務改善には現場の社員が保有する暗黙知が欠かせません。マニュアルや制度をいかに整えたとしても、人が人として働いている限り、暗黙知の抽出と実行には人がつきものです。
上からの指示だけでは効果的かつ抜本的な業務改善は起きにくいと言えます。人事部門は改善の枠組みを示唆できても、効果的なアイデアの源泉は現場メンバーと言えます。

つまり、良くも悪くも不確実なコントロール下であり、現場の従業員には対話で「本音」を引き出すこと自体が最初に求められます。アイデアの源泉としての現場メンバーの本気を引き出せるかはマネジャーや人事にも課題があると捉えるのが自然ではないでしょうか。

また、組織変革でもトップダウンとボトムアップの協調が不可欠です。人事はビジョンとロードマップとその為の制度といった仕組みを示す一方で、現場がどう具体的な改善策を生成可能かが成功の鍵を握ると言えます。
この現場の想像力こそ能動的コミットなくしては実現できません。常に人事部門は現場の社員サイドと知の共有ないし歩幅を合わせないと組織の成果の最大化は成し得ないと言えます。

つまり、人事部門は閉じた殻の中で制度設計をするだけでは不十分と言えます。
組織の全層と層内のメンバーとの対話を大切にし、共創していく関係が新たな価値を生み出すのです。こうした議論と協働こそが高い効果を生む組織を作る為には必須と言えます。
言い換えると、前述のエンゲージメントの向上は、心理的安全性の高い組織、ひいては高い生産性を実現する条件と言えます。

これまでの人事の主な役割は、経営陣からの要請に応じて報酬体系や考課制度といった組織の枠組みを制定することでした。
しかし単に制度を策定すること自体には限界があります。
個人にも多様な価値観が存在し、組織の最大化を目指すことは構成要因としての個人の労働目的との適合が必要で、それは単一的な枠組みである制度では補完しきれません。

今後、人事に求められる役割のひとつが、組織文化や風土のデザイナーとして、価値観や行動様式そのものを再設計していく「運用的な役割」です。
そのためには自ら思い切った実験を敢行し、小さな成功を重ねながら、新たな組織文化を創り上げていくことが欠かせません。
具体的に言うと、1on1などに代表されるエンゲージメントを最大化する為の実験的な内省過程のトライアンドエラーなどを表します。
この文化の醸成プロセスこそが、人事の新たな使命と言えます。
そしてそれを成し遂げるには、各層との対話こそが不可欠な生命線となること、そして人事部門自身の役割の脱却、つまりアンラーニング(学習忘却)が必要と言えます。

これまで人事の主な役割としての制度設計構築には自ずと限界があります。前述にも述べたように現場との調和がなされていない場合に限界点を表出すると言えます。

更に要素を付加するとこれからの人事に求められるのは、新しい組織文化の醸成者としての役割です。VUCAと呼ばれる複雑性の高い世の中を捉えた際に、組織文化は大企業であろうとも非連続的なUpdateを求められます。
その組織改革を乗り越える為には、トップダウンとボトムアップを繋ぐ対話の場を創出し、自組織の壁を越えて多様なステークホルダーとの協働を実現することが欠かせません。もはや、人事部門が閉じた部屋で枠組みを構築することは仕事ですらないと言えます。

「対話→本音→共有→思考昇華→実践→フィードバック→変化」
これは組織開発における私なりの個人単位の型だと考えていますが、ここには最初に「対話」が存在し、その型の適用は人事部門にも効果的だと考えます。

まとめると人事部門には、組織をあまねく対話と共創の文化を根付かせ、立場や領域を越えた英知を結集するコーディネーターやファシリテーターとしての役割が求められているのです。
その場には研修講師と従業員といった従来型の人事の役割は消失しているとも言えます。

組織の変化の前に実施する人事の変化により、速い変化に柔軟に適応しながら持続的な競争優位を築く、エンゲージメントに富んだ組織を実現すると言えます。
今や、人事の役割は変化し、組織開発は全員で行うものと捉えることが必要だと言えると思います。

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