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読書感想文

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小学校の時の方が読書感想文うまく書けてた。
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【読書感想文】『家守奇譚』梨木香歩

【読書感想文】『家守奇譚』梨木香歩

どう生きたいか、どう死にたいか、そんなことばかり考えていた自分が愚かしくなりました。
なんて夢のない人間だったのでしょうか。

こちらを読んで、なるほど死後の生活までオシャレに自分のやりたいように、いたい場所にいていいのだと気付かされました。

私が埋められたい場所は俄然「海が見える場所」です。

昨年の夏に読んでから、何度か偵察のために定期的に海へ行っています。周囲には狂人だと思われかねないので

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【読書感想文】『わたしを離さないで』カズオ・イシグロ

【読書感想文】『わたしを離さないで』カズオ・イシグロ

世界に手触りってあるんだ、と思いました。
触りに行かないと、世界って感じられないんだと。そして、優しいときもあるんだなーと。

カズオ・イシグロの作品は漢字2文字で言えば「緻密」でしょうか。描写がとことん細かくて、繊細です。

また、『わたしを離さないで』について言えば、こちらは冬の陽射しのようなお話でした。
常に「死」や「終わり」、「別れ」などの不安がつきまとっているけれど、それさえも包み込むよ

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【読書感想文】『魔女の宅急便』角野栄子

【読書感想文】『魔女の宅急便』角野栄子

『体の中にはこんなにことばってあるものでしょうか。』p.233

私も同じこと思ってました。

よく「無言でも気不味いことがない関係」が仲良しの条件に真っ先にランクインしてるけど、私の場合は好きなことや自分のことを面白くなくてもオチがなくてもいいから聞いてくれて、同じくらい好きなことや自分のことを話してくれる人に心を開きやすい。

その時によくこれを思う。脳が口に追いつかねえ!みたいな。脊髄で喋っ

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【読書感想文】『わたしの宝石』朱川湊人

【読書感想文】『わたしの宝石』朱川湊人

朱川作品は大学2年の冬に『都市伝説セピア』で世界観が好きになり、『鉄柱』という短編を読んで衝撃を受け、それから全ての作品を読んできました。

大学4年も終わりの今になると朱川作品にちょっとしたマンネリのようなものも感じていて、購入したのは半分義務感もあったと思います。卒論が終わった直後で論文の読みすぎだったためか言葉が俗っぽくて慣れるのに時間がかかりました。

さて、『わたしの宝石』は短編が6つで

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【読書感想文】『星の王子さま』サン=テグジュペリ

【読書感想文】『星の王子さま』サン=テグジュペリ

この本を読んだのは人生で2回目です。

一度目は高校生の時。

小学生の時、祖母の法事で親戚一同田舎に集まった時に、東京に住んでいる大伯父さんに貰いました。

祖父の兄なので母や叔父たちが「ゆう伯父さん」と呼んでいたので私もそのように呼んでいました。

ゆう伯父さんは少し変わった人で、長男なので家業である医者を継ぐもんだとばかり思っていたら急に「雑誌記者になりたい!」と言って家を飛び出したそうです

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【読書感想文】『幸せのプチ』朱川湊人

【読書感想文】『幸せのプチ』朱川湊人

1、朱川スタイル朱川さんは「懐かしさ」や「思い出」といった、優しくも残酷な時の流れをテーマにしたものが多い気がします。

朱川作品をあらかた読んできた私にとって、今年の4月に発売されたばかりのこの作品を読むのはもうなんか謎の使命のように感じてしまったのも事実です。

これは一つの街を舞台にして、それぞれの運命や人生が交差しあいながら大きくも小さくもとれるおはなしが短編として詰め込まれています。

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【読書感想文】『昨夜のカレー、明日のパン』木皿泉

【読書感想文】『昨夜のカレー、明日のパン』木皿泉

ここには、私の中にいる沢山の私が登場人物の声を借りてひたすらに会話を繰り返しているようでした。

声は点々としていました。あそこでの言葉に対して何十ページも後に応えていて、一つの意図で繋がっているような。

諦観しているのか分からない。希望を持っているのかも分からない。そんなもんだ、と受け入れているのかも分からないし、世に諍っているのかも分からない。

最近の私と言いますと、大変お恥ずかしながら世

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【読書感想文】『アルケミストー夢を旅した少年』パウロ・コエーリョ

【読書感想文】『アルケミストー夢を旅した少年』パウロ・コエーリョ

あらすじはこんな感じ。

ここに出てくる言葉は非常に爽やかで、私の中で飼っている少年が早く続きを見せろと騒いでいました。しかし言葉が詩的で爽やかだからこそ、その中にある真意を見出していくのは難しい。これは私の中で飼っている長老的なおじいちゃんが言っています。

そういえば太宰治も同じようなことを『人間失格』のなかで言っていたと思います。

太宰の言う世間(=縛るもの)とは自分自身ではなかったが「自

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【読書感想文】『こころ』夏目漱石

【読書感想文】『こころ』夏目漱石

これを初めて読んだのは高校生の頃。しかも国語の授業が暇すぎて教科書の中から見つけました。その時は最後の「先生と遺書」だけ記載されていたので、きちんと読んだのは大3の夏にイギリスのオックスフォードへ1ヶ月語学留学をした時でした。

夏目漱石が明治政府から二年間のイギリス留学を命ぜられ渡航していたのは知っていましたし、他の作品も大体読んだりしていたのですがこの『こころ』はイギリスに行ってから読もうと決

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