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真夜中の深呼吸。

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私のままで生きるために、深呼吸をするように綴った文章たち。
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#熟成下書き

あなたと一緒に、仕事がしたい。"働く理由" はそれしかなかった。

「みなさんに、退職のご報告があります。」

部長の口からその言葉が飛び出したとき、辞めるのは彼ではないと知っていたはずなのに、大きく心臓が波打った。

実際は、部下の退職報告を代わりにしたというだけの話だ。けれどわたしはそのとき、不意をつかれて思わず息を呑んだ。

そして、考えた。

もし、彼が今、本当に会社を辞めてしまったら。
わたしは一体、どうするのだろう?

しばらくの間、放心状態になってし

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「食」への愛と、後ろめたさと。ようやくみつけた、わたしの解釈

「食」への愛と、後ろめたさと。ようやくみつけた、わたしの解釈

「居酒屋とかファミレスって、行ったことある?」

「高いお店じゃないと、誘っても来てくれなさそう。」

学生時代から、何度言われてきたことかわからない言葉。こうした台詞を投げかけられることには、もう慣れてしまった。

知り合ったばかりの相手に、お決まりのようにそう言われるたび、曖昧に笑って「食べるために生きているので…」と、誤魔化してきた。

心の中で、「この人とは、分かり合えないのだろうなあ……

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「食べることが好き。」 ただそれだけの自分に、できることなんて

「食べることが好き。」 ただそれだけの自分に、できることなんて

何もない、そう思っていた。

いや、今だってその考えは大きく変わらないのだけど。

胸を張って「自分にとって大切な飲食店のために、わたしにはこんなことができる」なんて、口が裂けても言えない。

大切なお店やそこにまつわる人、思い出を、守ることさえできない。ただの一消費者だ。

けれどわたしは、ここ数週間でたくさんの「大切にしたい、なくなってほしくないお店」との出会いを経て、それらに対して「これだけ

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幸福も不幸も「頑張ってる」も、ぜんぶ自分だけのもの。

幸福も不幸も「頑張ってる」も、ぜんぶ自分だけのもの。

世界に疫病が蔓延してから、今まで以上に「誰かの大変な話」が耳に入ってくるようになった。

それを見聞きしていると、無意識に

「自分は恵まれている方なんだな…」

とか、

「こんなに大変な人がいるんだから、自分はもっと頑張らなきゃ。」

とか思ってしまって、自分の弱音や愚痴、悩みをどんどん自分の中だけに閉じ込めてしまうようになった。

一方で、わたしは今年に入ってから、なぜだか精神的にとてもしん

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幼くなったんじゃなくて、自分が戻ってきただけだった。

幼くなったんじゃなくて、自分が戻ってきただけだった。

「なんだかわたし、歳を重ねるにつれてどんどん幼くなってる…?」最近、そんな考えが頭をよぎることがある。

自分を俯瞰してみたときに、前よりも人に甘えることが増えたし、人間関係のしがらみから自由になってきているなあと思うことが、わりと高い頻度である。

25歳、社会人4年目。

もういい大人なのに、「年齢と逆行してる…?」と、少々不安になる。

大人に近づけば近づくほど責任は重くなるし、ルールや世間

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余白をつくって生きていく

友人に「最近、仕事が終わった後は何してるの?」と聞いたら、

「特に何もしてない。ぼーっとしてる。」という答えが返ってきてハッとした。

わたしが最後に「何もしない」時間を過ごしたのって、いつだろう。

…思い出せない。

ただそこに流れる時間に身を委ねて「ぼーっとする」、そんな過ごし方をしたのは、なんだか遠い昔のことのような気がする。

「最近、暇なんだよね。いろいろ落ち着いてきて、特にやること

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明日を生きてみたいと思えるように、自分のために書く文章

明日を生きてみたいと思えるように、自分のために書く文章

つい先日、noteを読んでくれている友人に「いつか、幸せな文章も読んでみたい」と言われた。

そのときは「幸せだったら、文章なんて書かないよ」と冗談半分で返したのだけど、心の中では「たしかになあ」と納得していた。

自分でも薄々気づいてはいたけれど、わたしには、幸せなとき「文章を書きたい」という衝動に駆られることが、あまりない。

理由は、「現在進行形で幸せを感じていたら、文章にする必要なんてない

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「円満な関係」と引き換えに、「愛する力」を失っていた。

「円満な関係」と引き換えに、「愛する力」を失っていた。


「人は誰しも完璧じゃないから、一人の相手で、全ての欲求を満たすことはできません。だから私は、複数の人との関係性の中で、自分の欲求を満たすことができれば、それでいいんじゃない?って思います。一人の相手に固執して、傷つく必要なんてないんです。」

ある人のインタビュー記事に書かれていたこの言葉に、数年前、わたしは大きなショックを受けた。

そもそもこの記事は、その頃毎日のようにLINEでやり取りをし

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きっと、どこかの誰かの世界には存在しているから。

一週間ぶりにInstagramを開いたら、フォロワーが4人減っていた。

減ったフォロワーの数が正確にわかるなんて、なんだかとても器の小さい人みたいで悔しいし、少しだけ惨めな気持ちにもなる。

だけど、数週間前までは毎日見ていた数字だったから、自然に頭に残っていたのだと思う。

この一週間で、離れていってしまった4人は一体どんな人たちだったのだろう、なんて考えながら、しばらく自分の手元に残った数字

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君がいない夜とごはん

君がいない夜とごはん

料理がおいしければ、それは最高の食事だと
思っていた。

もしかするとそれは違うかもしれない、と
気づいたのは、つい最近のことだ。

なかなか手の届かなかった、高級フレンチ。

会員制の、中華料理店。

予約困難な焼肉屋。

数年前まであれほど夢みていた「憧れのお店」に
足を運んでも、その瞬間は幸せな気持ちでいっぱい
になるのに、帰り道、いつもなぜか虚しくなった。

「この鴨肉は臭みがなくて、焼き

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2020年、わたしの心を救った5冊

2020年、わたしの心を救った5冊

2020年は、ひたすら自分と向き合った1年だったなあと思う。

向き合う時間が増えたから、自分の課題や改善点をたくさん見つけて、落ち込んだり悩んだりすることも多い年だった。

そんな毎日を過ごす中で、その時々のわたしを救ってくれたのは、本の中で出会った、煌く言葉たちだ。

偶然開いたあるページの一文で心が軽くなったり、物語の登場人物の生き方に勇気をもらったり。

今でも心に残っている、言葉や物語た

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働くきみを、好きになれたら。

働くきみを、好きになれたら。

「一緒に仕事してみて、この人好きだなあって思える人って、大体相性がいいと思うんだよね。」

これは、わたしの友人がよく口にする言葉だ。

仕事をしているときに表れる性格や価値観、行動の数々は、普段の生活で表れるそれよりも、その人の本質や根本的な人柄をより強く表している気がする、と、彼女は言う。

普段はノリが良くて気さくで周りから人が集まってくるのに、仕事で部下が困っていても、手を差し伸べようとし

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