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2023年度 エッセイ

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記事一覧

【エッセイ】「自分ってアホだな」三題

【エッセイ】「自分ってアホだな」三題

一,学校中がハムスターを探している中、一人、「浜下くん」を探し回った小学三年生の冬。

 朝のホームルーム前に流れた校内アナウンス。私にはこう聞こえたのだ。
「校内の皆さんにお願いがあります。三年二組の浜下が脱走してしまいました。三年二組のみんなで必死に探していますが、まだ見つかっていません。皆さん、力を貸してください。浜下を発見した人は、三年二組の担任までお願いします」
…浜下が脱走? そりゃ

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【エッセイ】ねじれの位置にある言葉

【エッセイ】ねじれの位置にある言葉

 最も古い記憶の中の私は、桃色の光の閃きに向かって手を伸ばしている。だが、それには届かない。母が「こら、奪ったらダメだよ。これは他の人のモノだからね」と、私の手を掴んだからだ。必死に抵抗したが、まだ幼い私の手は、母の大きな手によって簡単に押さえつけられてしまった。私は自分の願望が叶わないことを感じ、声を上げて泣いた。
 母に「自分は奪おうとしたわけではない。ただ、少しだけ触れてみたかったのだ」と言

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【エッセイ】弱者が弱者を叩く世界で

【エッセイ】弱者が弱者を叩く世界で

小学五年生の頃、一時的に、一部の同級生からのいじめに遭っていた。さらにそれだけではなく、一つ上の学年の者からも被害を受けていた。その中で最も加担してきたのは、一番下っ端の男子だった。今振り返ると、その男子は、誰よりもいじめに積極的に参加することで、勢力ある集団に自分が帰属していることを周りに示していたのだと思う。

弱い立場に置かれ排除される側の人間が、不条理な者に賛同し、誰よりも率先して行動に起

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【エッセイ】WBCを見て思い出した、過去のこと

【エッセイ】WBCを見て思い出した、過去のこと

 ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で優勝を果たし、大会MVPを獲得した大谷翔平選手。手に汗握る熱戦となった決勝は、まるで大谷選手のためにWBCがあったかのような展開で、普段スポーツ観戦をほとんどしない私でもかなり楽しむことが出来た。
 私の地元は浦河町なのだが、彼は二〇一五年度に浦河町の観光大使を務めていたことがあった。だから、ほんの僅かでも、スーパースターとの接点があることを嬉しく思

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【エッセイ】帽子への執着

【エッセイ】帽子への執着

帽子が好きである。
帽子は凄い。単に雨や日差し、暑さや寒さなどに対応してくれるだけではなく、それ一つで、簡単に「おしゃれ感」を出すことが出来る。
ただ、私にとっては、その「おしゃれ感」がプレッシャーになることがある。
それを身につけているだけで、「自分自身」が世の中に対して、おしゃれであることを宣戦布告しているような気持ちになる。帽子が万能なアイテムなだけで、実際の私は全くそんなことないのに。

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【エッセイ】感情が渦巻くような思春期を過ごして学んだ事

【エッセイ】感情が渦巻くような思春期を過ごして学んだ事

中学時代の同級生にMさんがいる。当時、私は友人が少なかったが、Mさんとは打ち解けて話せることが多かった。
Mさんはクラスの人気者だったので、初めは、消極的な自分とはおそらく気が合わないだろうと思っていたが、話してみると、すぐに彼女の魅力がわかった。Mさんの、自然体で、誰に対しても分け隔てなく接する人柄の良さと、独特なユーモアセンスを好きになった。彼女には、こちらも気を遣わずに話せた。

Mさんの正

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【エッセイ】今日も本を読んだ

【エッセイ】今日も本を読んだ

 色々と考えすぎてしまう性格のせいか、物心ついた頃から、憂鬱な気分で日常を送ることが多い。身近な問題は勿論、遠い国で起こった悲劇にも、心が酷く痛み、思考が止まらなくなる。何もかもが嫌になり、自分の感覚器官を遮断しようとして、引きこもりがちになることもある。

 そんな時、私を救ってくれるのは「本」である。
本という別世界に逃避することで心の平穏を保つことが出来るし、その本が心打たれるものであれば、

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【エッセイ】皮膚科クリニックに行っただけの話

【エッセイ】皮膚科クリニックに行っただけの話

 ある日の朝、皮膚科クリニックに行った。顔のニキビがひどいのである。
といっても、自分ではそんなに気にしていなかったのだが、母親から「いい加減早く行きなさい。ニキビ、本当酷いよ」としつこく促される日々に疲れ、仕方なく受診した。

 昨日が休日だったからか、待合用の椅子は全て埋まっていたし、立って待てるような空間にも、既に人が溢れていたので「これは困ったな。駐車場で待つか」と思った。けれど、受付の不

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【エッセイ】カバオは天丼が食べたい

【エッセイ】カバオは天丼が食べたい

アニメ「それいけ!アンパンマン」の製作者に物申す。
毎回、活躍するのがアンパンマンを始め、メロンパンナやカレーパンマン、食パンマンといったパン系のキャラクターなのは何故だ。米系キャラクターの存在はどこへ行った? パンより米派の私としては、あのアニメが、米へのアンチテーゼにしか思えない。

私は天丼が好きである。
なのに、原作者「やなせたかし」は天丼マンをほとんど活躍させない! ただ
「てんてんどん

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【エッセイ】モーニングコールを募る。

【エッセイ】モーニングコールを募る。

 ここ数年、寝起きが悪くて困っている。
あまりに起きられないので、スマートフォンのアラームを、起きなければならない一時間前から五分刻みに鳴るように設定している。
しかし、それでも起きられないことは珍しくない。二十二歳になっても恥ずかしながら、同居している母に「いい加減起きなさい」と布団をひっぺがされ、顔をペチペチと刺激され起こされることも多い。駄々をこねながら、渋々起きるのである。
母が家に居ない

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