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Twitterのホロコースト否定論への反論(6):最初のホロコーストの流言

目次
1.アウシュビッツのプレートの修正
2.切り離されたクレマⅠの煙突?
3.窓付きガス室のドアがペラペラ?
4.ロイヒターレポート
5.イギリス政府による嘘の疑惑
6.最初のホロコーストの流言
7.アウシュビッツのプール、病院など
8.Arbeit macht frei.
9.ワールド・アルマナックのデマ
10.赤十字統計のデマ
11.赤十字が死の収容所を視察?
12.チャーチル、アイゼンハワー、ドゴールの回想録には書かれていないガス室?
13.エリー・ヴィーゼルはガス室について言及しなかったのか?
14.エリー・ヴィーゼルは偽者?
15.より多くのヴィーゼルもの
16.アウシュビッツの暗号解読
17.生存者はガス室を見たり聞いたりしなかったのか?
18.アンネ・フランクの日記
19.ラッシニエはアウシュビッツのガス室を否定した。それともティース・クリストファーセンか?
20.ラーソンのデマ
21.偽物、信用できない、間違った目撃者
22.ガス室の壁に引っ掻き傷?
23.ダッハウのガス室、ブロシャートの手紙
24.生存者のリーバーマンとアウシュビッツのオーブン
25.ラシャウト文書
26.ホロコーストの偽写真?
27.科学がホロコーストを論破?
28.ブリタニカでガス室についての言及はないのか?
29.リストジェフスキー先生?サイモン・ウィーゼンタールのノルマ?
30.アウシュビッツでは小さな子供や人は仕事に不向き?
31.ユダヤ人はホロコーストについて嘘をつくのか?
32.確定した死亡者数?
33.ヒルバーグと有名な証人は、ツィンデル裁判で嘘つき、詐欺師であることを示したのか?
34.シンドラーのリストはフィクションの話?
35.ブルーノ・バウムはアウシュビッツで偽のプロパガンダが作られたことを認めたのか?
36.変わり続ける収容所の死の犠牲者数?
37.ソ連だけが見つけた死の収容所?
38.リックのホロコースト否定
39. 6桁の刺青でも被害者は600万人?

▼翻訳開始▼

6.最初のホロコーストの流言

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ツイート:あなたはどの「ホロコースト」がお好き?
ユダヤ人所有のニューヨーク・タイムズ紙に「ホロコースト」「600万人のユダヤ人」という記事が掲載されたが、これはすべて第二次世界大戦が終了するずっと前のことだった。

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ツイート:1906.(((NYT)))#FakeNews:ロシア政府は「600万人のユダヤ人 」の 「絶滅」を含む「ユダヤ人問題の解決」を掲げていた。

「ポール・ネイサン博士が見たロシアの大虐殺
ベルリンで3月12日に開かれたドイツ中央ユダヤ人救済連盟の年次総会で、ロシアの600万人のユダヤ人の状態と将来について驚くべき報告がなされた。彼は、昨年秋の大虐殺の後に集められた150万ドルの救済基金の分配を手配するために、イギリス、アメリカ、ドイツのユダヤ人慈善家の特別使節としてロシアを広く旅して帰って来たベルリンの有名な出版学者ポール・ネイサン博士である。
ネイサン博士は、同胞の窮状と将来について恐ろしい絵を描いており、いつ何時、これまでの全てを上回る規模と恐怖の大虐殺が起こるか分からないと予言している。彼は、ロシア政府がユダヤ人問題の「解決」のために研究している政策は、組織的かつ殺人的な絶滅であるという確固たる確信を抱いてサンクトペテルブルクを後にしたのだ。」

簡単な反論:「ホロコースト」や「600万人」のさまざまな用法と、ホロコーストの歴史性、あるいは500万人から600万人というユダヤ人の死者数の認識との間には、歴史的にも論理的にも何の関連もない。したがって、このミームは単に無関係であり、当時発表された他の数字(500万人とか300万人とか)を取り違えた結果である。

更なるコメント:この議論は支離滅裂だ。500万から600万人のユダヤ人の死者数というのは、人口統計学的なデータに基づいており、新聞に載る載らないに左右されるものではない。言うまでもなく、議論全体がチェリーピックに基づいている。否定派は、「ホロコースト」と「600万人」を検索してみると、いくつかの言及を見つけることができる

同じ時期に「500万」と検索するとどうなるのだろうか?

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『ニューヨーク・トリビューン』1901年11月11日号、p.2
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『ニューヨーク・トリビューン』1903年7月8日号、p.7
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『ニューヨーク・トリビューン』1906年4月27日号、p.6

(元記事にはまだまだたくさんありますが省略。同時期に500万人の記述がある新聞はニューヨーク・タイムズだけではないという事。300万人でもたくさん紹介されていますがそれも省略します。見たければ元記事を参照して下さい)

まあ、要点は分かっただろう。説明は簡単。500万人、600万人というのは、ロシア帝国(或いはボルシェビキ革命後の旧領土、ポーランドを含む)のユダヤ人人口のことで、推測するに500万人と600万人の間である。300万人というのは、主にポーランドとその周辺地域のユダヤ人人口を指している。

「600万という数字」に特別な意味はない。「バードマン・ブライアント」のような一部の狂人は、ユダヤ教の神秘的な文献(実際には一次資料ではなく、偽名のネオナチに頼っている)に言及し、律法に600万人のユダヤ人が予言されていると主張している。そういう文献があったとしても、戦後のものなので、それらは予言ではなく後付のものなのである(いわゆる「トーラーコード」のようなものだ)。したがって、戦前のユダヤ教における600万人という数字の宗教的意義の証明にはならない(そのような意義は、確立された歴史的事実と何ら関係がない)。

初期の報告書でユダヤ人迫害に関連して「ホロコースト」という言葉が使われたのは、破滅的なものから平凡なものまで広く使われる普通の言葉であったから、予想されたことである。

「...1914-1918年のホロコーストにおける人口の損失」(『アメリカン・ヒストリカル・レビュー』1931年1月号、p.477)

ある女性たちは......家事労働の中で、食器やグラスをぶつける音が絶え間なく響いている......。家事のホロコーストから逃れたグラスは......」。(パレスチナ・ポスト』1946年7月26日号、8ページ、1-2欄)

このような文脈で使われることは、まったく不思議でもなんでもなく、予想されることである。ナチスのユダヤ人虐殺を指す従来の意味は、1960年代から1970年代にかけて普及したに過ぎない。従って、以前と同様に、何の関連性もなく、首尾一貫した議論もできない。

以上のことから、このミームの新聞の切り抜きのほとんどが、無関係なフィラーで構成されていることがわかる。5つの記事(1900年6月11日、1905年1月29日、1906年3月25日、1914年12月2日、1921年7月20日)は、ロシア帝国の600万のユダヤ人に言及しているが、これは、第二次大戦のホロコーストとはまったく関係のない、独自の人口推定値である。ほとんどの人は何らかの形の苦しみについて言及しているが(驚くことではない)、1つはロシアには600万人のユダヤ人がいるという中立的な声明にすぎない。

5つの記事が様々な文脈で「holocaust」という言葉に触れている(1903年5月16日; 1903年9月16日; 1933年6月1日; 1936年5月31日; 1941年10月2日)。前述したように、この言葉は太陽の下のあらゆる災難に対して使われた。実際、ある記事はトルコ人によるキリスト教徒の虐殺(!)に言及しており、ユダヤ人とは何の関係もない。ミームの作者は切り抜きを読むことすらしなかったようだ。

2つの記事(1935年9月8日、1939年1月15日)では、600万という数字が完全に中立的で無関係な文脈で使われている。1つは600万人のユダヤ人を代表する18カ国の代表者の会合について、もう1つは600万人のユダヤ人をヨーロッパから避難させられないことについて言及している。

ある記事は1945年のもので、ホロコーストの推定値として600万人という数字に触れているが、明らかにこの時点では、その程度はすでに知られていた。1945年の別の記事では、生存しているヨーロッパ系ユダヤ人の数を推定している(明らかにソ連系ユダヤ人を考慮していない)。

残りの記事は、ヨーロッパの様々な地域(東ヨーロッパ、中央ヨーロッパ、ヨーロッパ全体-明らかにロシアを除く-)における600万人のユダヤ人の人口統計的推定値に言及している。

つまり、基本的にこのリストはデマなのである。この議論もそうだ。

さらなる読み物:この本は、実際の専門家(素人のネオナチや嘘が証明されている人とは対照的)が、国ごとに、信頼できる資料に基づいて、ホロコーストの推定値に到達したものである。これらが本当の学問の姿であって、上記のような頭の悪そうなナンセンスな話ではない。

W. ベンツ(編)、『ジェノサイドの規模。国家社会主義によるユダヤ人犠牲者の数』(日本語訳(2022年12月現在翻訳途上))

各国に関する記事で、著者が記載されているもの。

ドイツ帝国(アーント、イノ / ボベラッハ ハインツ)
オーストリア(モーザー、ジョニー)
ルクセンブルク(アーント、イノ)
フランス・ベルギー(ウェッツェル、ユリアーネ)
オランダ(ヒルシュフェルド、ゲルハルト)
デンマーク(ホワイト、ヘルマン)
ノルウェー(メンデルゾーン、OSCAR)
イタリア(ピッキオット・ファージオン, リリアナ)
アルバニア(グリム,ゲルハルト)
ギリシャ(フライシャー,ハーゲン)
ブルガリア(ホッペ,ハンス・ヨアヒム)
ユーゴスラビア(スンドハウゼン,ホルム)
ハンガリー(ヴァルガ,ラースロー)
チェコスロヴァキア(シュミットハルトマン,エヴァ)
ルーマニア(ザック,ルチスタ)
ポーランド(ゴシェフスキ,フランク)
ソ連(レーブ,ゲールト)。

ゲルマー・ルドルフがドン・ヘッデスハイマーを一刀両断』を参照。

ジョン・ペトリ『世俗的な言葉 "HOLOCAUST": 学問的聖化、20世紀の意味』 

ジェイミー・マッカーシー、ケン・マクベイ『第一次世界大戦の「ホロコースト」主張

▲翻訳終了▲

ちょっと考えて欲しいと思うのですけれど、この説を信じるホロコースト否定派の皆さんって、どうしてニューヨークタイムズに「600万人」やらの記述を載せた記事を掲載しなければならないのか? 少しでも考えたことがあるのでしょうか?

要するに、シオニスト・ユダヤ人がイスラエル国家を建設するために、ホロコーストの捏造を随分と前から計画していた証拠だ! と言いたいのでしょうけれど、もし仮に罷り間違ってそうだと仮定できるとして、どうしてニューヨークタイムズに、「600万人のユダヤ人」の内容が記載された記事を載せなければならないの? 意味がさっぱりわかりません。

どうやら、2010年前後頃にニューヨークタイムズの過去の記事を調べた暇な人がいたらしく、よくもまぁそれだけ記事を見つけてきたなとちょっと感心はしましたが、そもそも、どうして600万人を事前に決めておかなければならず、それがどうして第二次世界大戦中のナチスドイツによるユダヤ人絶滅に結び付けられなければならないのか、理解不能です。

……いやそうではなく、ニューヨークタイムズは、ノストラダムスの大予言のように、ユダヤ人の600万人虐殺を予言をしていたのだ!とした方がまだ理解できるのだけど(笑)

とにかく、この説を信じたがるホロコースト否定派の脳内は本当に全然理解できません。なぜもう少し突っ込んで考えようとしないのでしょう? 言ってることがおかしいと思わないのかなぁ……。



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