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パリ逍遥遊

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フランスでのライフスタイルから、ワークライフバランスを考えてゆきます。
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#哲学

パリ逍遥遊 受胎告知(フランス修道院編)

パリ逍遥遊 受胎告知(フランス修道院編)

私は一時期カトリック系の大学で禄を食んでいた。学長は「置かれた場所で咲きなさい」の著者、彼女に「あなたはシスターになるとばかり思っていました」と言われたことが忘れられない。予想は外れ、私はシスターになることはなく、修道院に住んだこともない。キリスト教の精神にのっとって集団を生活する場所を修道院と呼ぶ。修道院ではもちろん祈りや聖書の研究に関わることが行われることはもちろん、これから紹介するように葡萄

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パリ逍遥遊 フランスで道を聞かれる日本人

パリ逍遥遊 フランスで道を聞かれる日本人

パリに住んで数ヶ月。始めはこいつら何ボソボソ言ってるんじゃ?とか、知っているフランス語は「ジュトジュデ、ニジュ、アトジュデ、サンジュ」(注:「10と10を足すと20、あと10を足すと30になる」という日本語をフランス語っぽく発音したもの)ぐらいしか知らなかったが、段々とフランス語会話に慣れてきた。

となると、ついつい話したくなっちゃうのが人間の性。そこは、さすがパリ。みんな普通にフランス語を話し

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パリ逍遥遊 お墓

パリ逍遥遊 お墓

 お墓詣りと言えば、1992年ウィーンで開催された学会で最優秀論文賞をいただいた時の賞金は1,000シリングだった。まだ当時の通貨はEuroではなく、オーストリアにシリングだった。1,000シリング、当時のレートで10,000円ほどだった。このお札の顔は、量子力学の骨幹をなす方程式、シュレーディンガー方程式の発見者であるエルヴィン・シュレディンガー、お札の中から「おめでとう!」と言ってくれたような

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パリ逍遥遊 ブルゴーニュワインに合う究極の食材

パリ逍遥遊 ブルゴーニュワインに合う究極の食材

「たゆたえど沈まず」な都市パリにいて手軽に楽しめるものといえば、やっぱり飲食。ワインはフランス各地から、その地のテロワールを見事に表現したワインが気軽に手に入る。また、さすが農業大国フランス。食材についても新鮮な海の幸から山の幸まで、簡単に手に入る。となると、ついついマリアージュ(ワインと食材のマッチング)に挑戦したくなる。

生牡蠣とシャルドネ、鶏肉とリースリング、ラム肉とシラーなどがよく知られ

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パリ逍遥遊 メドックマラソンで臨死体験か?!

パリ逍遥遊 メドックマラソンで臨死体験か?!

 臨死体験と言えば、20代の若い頃、「臨死体験」をしたことがある。1キロほど泳いで、サウナで汗をガンガンに出した後、母の誕生祝にレストランに出かけた。のどが渇いていた私は、弱いくせにワインで喉を潤してしまった。「運動で血流が早まり血液脳関門をアルコールがバンバン通って、脳に到達した」状態になった私は、急に気持ち悪くなり席を立った。席を立った瞬間、意識がなくなり、全面から無防備に倒れてしまった。自分

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パリ逍遥遊 メドックマラソン

パリ逍遥遊 メドックマラソン

普段何気なく過ごしている生活であっても、その延長線上には未だ見た事のない事象が広がっている。皆さんはそこに行った経験があるだろうか。

例えば、音楽プレーヤー。iPodなりステレオなりの音量を最大にしたことはあるだろうか?
おとなしいクラシック曲でも爆音になり、ベートーベン6番やブラームス4番と初期のアイアンメイデンとの区別がつかなくなる臨界点がある。

例えば、自動車。タコメーターが振り切れるほ

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パリ逍遥遊 受胎告知

パリ逍遥遊 受胎告知

 受胎告知とは、御使ガブリエルが、マリアに聖母になることを告げることだ。聖書「ルカの福音書」第1章の以下の部分。

1. 六か月目に、御使(みつかい)ガブリエルが、神からつかわされて、ナザレというガリラヤの町の一処女のもとにきた。
2. この処女はダビデ家の出であるヨセフという人のいいなづけになっていて、名をマリヤといった。
3. 御使がマリヤのところにきて言った、「恵まれた女よ、おめでとう、主が

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パリ逍遥遊 パスカルを通じて見えてくる人生の意味

パリ逍遥遊 パスカルを通じて見えてくる人生の意味

見る、聞く、読む、感じると言った五感をフル活動させて、至上の文化・芸術に触れ、真理に魂を震わせる、それこそ最高の贅沢だ。そして、宗教、法律、哲学が長年にわたり浸透してきた地であり、文化・芸術の中心地でもあるパリは、そのための格好の場所である。

ところで、なぜ文化・芸術等々に触れることが最高の贅沢なのかを考えたことはあるだろうか?それは単に美術館やコンサートに行くことと違うのだろうか?ここでは、パ

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パリ逍遥遊 瞬間

パリ逍遥遊 瞬間

宗教、法律、哲学が長年にわたり浸透してきた地であり、文化・芸術の中心地でもあるパリは、ヨーロッパで生まれ育った人々でなくとも、人物や作品を通じて、真理に共感し、魂を震わせ、さらにはEdge Effect(境界線の効用)を享受するための、最高のベースキャンプである。

そう、まさにその通り、パリは「最高のベースキャンプ」だ。パリの市民憲章は、「Fluctuat nec mergitur、たゆたえど沈

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パリ逍遥遊 ヨーロッパ人を形成する3大要素

パリ逍遥遊 ヨーロッパ人を形成する3大要素

「風立ちぬ」(Le vent se lève、同名の宮崎駿作品もこれに由来する)で有名なフランスの詩人・思想家・評論家であるポール・ヴァレリーは、その著書「精神の危機」の中でヨーロッパ人を定義している。

ヴァレリーは、以下の3要素を有している人物はヨーロッパ人という枠組みで捉えても良いと唱えている。3要素とは、キリスト教に基づく宗教観、ローマ法に由来する法的素養、そして、ギリシャ哲学に端を発する

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パリ逍遥遊 自らの哲学

パリ逍遥遊 自らの哲学

「自らの哲学をシャンパーニュに注ぐ」、シャンパーニュの醸造家に触発されたわけではないが、「自らの哲学」について、パリで揺蕩いながら、気が付いた最高の贅沢について語ってみたい。

パリ出身のチェロリスト、Yo-Yo Maの奏でる温かい演奏を聴いた時の心臓がドキドキする感覚を今でも忘れることはない。Yo-Yo-Maの何とも言えない温かい音色の背景に、何があるのだろう。Yo-Yo Maは、とあるインタビ

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パリ逍遥遊 シャンパーニュ・ゴドメとブドウ栽培

パリ逍遥遊 シャンパーニュ・ゴドメとブドウ栽培

ランスの市街を抜け一路南へ。モンターニュ・ド・ランスの山のふもとで左折、以前紹介したシャンパーニュ街道に入る。Rilly-LaMontagne村を抜けてから、ブドウ畑・村・ブドウ畑・村・ブドウ畑の繰り返し。

しばらく車を進めてゆくと、Moulin deVerzenayなる大きな風車が現れる。この周りは大手シャンパーニュメーカーのマム(Mumm)と契約している数々のブドウ畑が連なる。見えるところは

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パリ逍遥遊 ダンテ神曲

パリ逍遥遊 ダンテ神曲

ダンテの神曲に出てくる「地獄編」と言えば、ミケランジェロの「最後の審判」。ローマバチカン市国にローマ教皇の公邸バチカン宮殿にあるシスティーナ礼拝堂の主祭壇の背面を飾る「最後の審判」の地獄の箇所は、ミケランジェロがダンテの「地獄篇」からインスピレーションを得て、描いたと言われている。

「最後の審判」見たさに、パリ・オルリー空港から機上の人となった。アメリカの4つの州の境界線が集まった点をフォー・コ

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パリ逍遥遊 我が家の雨漏り

パリ逍遥遊 我が家の雨漏り

ここ数日の悪天候で職場に行くのも帰るのも億劫だ。

東京と比べると雨水が恐ろしく汚い。上を眺めると大きな美術館に迷い込んだような景色のパリだが、下は地獄のパリ。土埃と混ざり茶色になって、タバコの吸い殻や犬のフンをさらって下水溝に落ちてゆく雨水を見ていると、ダンテの神曲に出てくる地獄前域のようだ。ここからが地球の中心に落ちてゆく、漏斗状の地獄の始まりだ。

そんなこんなで仕事から帰ってきて玄関の電気

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