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2022年6月の記事一覧
『涙鉛筆』 # 毎週ショートショートnote
僕には、ずっと好きな子がいるんだ。
幼い頃からいつも一緒に遊んでいた。
大人になったら結婚したいなって思っている。
でも、彼女の気持ちはわからない。
いつか聞いてみたいな。
でも、僕には勇気がない。
ある日、彼女が泣いていたんだ。
「どうしたんだい」
僕が聞くと、彼女は涙を流しながら話してくれた。
彼女が、好きな男の子に告白したらしい。
でも、彼は彼女の気持ちを受け入れなかったというんだ。
それ
『動かないボーナス』 # 毎週ショートショートnote
彼は、木造アパートの階段を駆け上がりました。
2階のとっかかりが彼の部屋です。
ほんのり灯りの滲んだガラス戸を引き開けます。
「はら、ボーナスが出たよ」
彼はみかん箱を妻に差し出しました。
戦後の混乱からようやく立ち直ろうとしていた時代。
まだまだ人々は貧しかったのです。
彼も小さな印刷所の印刷工として、毎日遅くまで働いていました。
そこの奥さんが、ボーナスは出せないけどこれをと、みかんをひと箱
『消しゴム顔』 # 毎週ショートショートnote
僕はいつものようにカフェで勉強していた。
間違った答えを消していると、不意に声をかけられた。
「それ、いただけませんか?」
隣の席の男がこちらを見て笑っている。
「それ、その消しゴムのカスですよ」
「こんなものでよかったら」
「じゃあ」と男は眉間のあたりを指差した。
「ここにこすり付けてください」
丸めたカスを男の眉間に押し付けた僕は、思わず「うわっ」と声を出してしまった。
男の眉間は、ぐにゃり