マガジンのカバー画像

わたしの句

60
趣味の句作(俳句・短歌)をまとめました
運営しているクリエイター

#写真

ガチャガチャと皿洗う夫猛暑なり

ガチャガチャと皿洗う夫猛暑なり

「ガチャガチャと皿洗う夫猛暑なり」

夫と二人自営業(小さな町で小さなレストランをやっています)。コロナ禍でも、まだその影響の少ない町なので、週末など忙しくさせていただきありがたい。でも暑さと疲れでお互いイライラが溜まることも😅 そんなある日の1句です。

(若い頃は喧嘩すると何日も口をきかない、などということもありましたが、最近は互いに自分の機嫌をとる術を覚えたので、10分後には協力しあって賄

もっとみる
飼い猫の小鈴ひびくや日短か

飼い猫の小鈴ひびくや日短か

猫を飼うようになったのは3年前、2016年の秋。夜の道路に突然飛び出してきて、車のライトに驚いたのか、道の真ん中にすくんでしまったのを、慌てて拾い上げたのがきっかけです。最初はもらい手を探すつもりだったのですが。

当初からあまり鳴かない、甘えない猫でした。娘の洋服掛けの下に置いてある穴あきのキティちゃん座布団の上が定位置で、お腹が空くとすーっと出てきて、食べ終わるとまたすーっと戻って寝てしまう…

もっとみる
「去りし空いつまでも見ゆ秋燕」

「去りし空いつまでも見ゆ秋燕」

「去りし空いつまでも見ゆ秋燕」

子供が県外の短大に進学することが決まりました。ようやく手を離れる安堵と、ほんとに一人で大丈夫かいな…という心配と。

私はとにかく窮屈な家を出たい一心で、一人暮らしなんてウキウキでしたが、一人っ子の娘は期待と不安が行ったり来たり。まぁ黙って見守るのみですね。

「秋燕」は「燕帰る」の傍題で、空虚な巣の寂しさを表すのだとか。「秋燕」は燕に焦点が移るため、ただ寂

もっとみる
こんなところにも草の芽秋暑し

こんなところにも草の芽秋暑し

近所に、地元の中国系奥様方がやっている、小さなB&Bがある。わかりにくいのかこの宿目当ての外国人旅行客が、しばしば道を聞きに来る。

こんな日本の端っこの街に、なんの用事で来るのかな、と思うのだが、屋久島へ行く通り道にしている人が多いようだ。

今日の午後、場所を教えた背の高いオーストラリア人の男性は、律儀に夜、うちの店に食事に来た。ラグビーのワールドカップのついでに来たのかな、と聞いてみたら、い

もっとみる
話すことは山ほどあるはず落ち葉散る

話すことは山ほどあるはず落ち葉散る

時々見ている松山市が運営するサイト「俳句ポスト365」。現在募集中の兼題は“落ち葉”。

落ち葉と聞けば、大滝さんの「木の葉のスケッチ」と言う曲が思い浮かび、今回の句はそこからの本歌取り(と、言っていいのか^^;)。

ラッシュの駅のホームで、別れた恋人と再会する偶然の一瞬をさらりと歌ったこの曲は、クラリネットが印象的な大人のムード。ありありと映像が浮かぶ松本さんの言葉遣いは、やはり非凡だなぁ。

もっとみる
おい猫や土鍋をともにかこもうか

おい猫や土鍋をともにかこもうか

鍋は〇〇鍋はというのでないと、季語にならないみたいですね。だから今日の句は無季俳句になりますか。なんとなく、内田百閒先生の「ノラや」という愛猫記のイメージで作った句です。

さて、冬に鍋物をする以外、土鍋を使う機会がないという方、多いと思いますが、使いようによっては用途の広いもの。肉じゃがなどは鍋で作るより美味しくできます。そして、ご飯も炊ける。炊飯器よりも早いし、美味しいし。

5年ほどフランス

もっとみる
ステーキを食べ切り示す最後のプライド

ステーキを食べ切り示す最後のプライド

いつもご夫婦で来られていた。ご主人の方は当時から杖をつき、治療の帰りにお店に寄られているのかなと思っていたら、ある日「私は現役の医師ですよ」とおっしゃった。
そのお身体で、と内心びっくりしたが、どこかの大きな病院でお医者さんをしていて、退職後この町に移り、お友達か知り合いの病院に(多分)非常勤のような形でお仕事をされているようだった。ちょっと気難しげな威厳のあるお姿は、たしかに白衣を着せれば大学病

もっとみる
幸福の密度増す焼きりんごの香

幸福の密度増す焼きりんごの香

加熱して断然美味しいと想うのは、りんごです。かなり昔、どこかのヨーグルト会社が、焼きりんご味のヨーグルトを初めて出したとき、本当に感激してしばらくそればっかり食べてたなぁ。アップルパイやタルトタタンは、熱々にバニラアイスクリーム。ベタだけど、最高。

さらに思い出すのは学生時代。たしか友達の陽子ちゃんからおしえてもらった、「ウィリアムテル」。りんごが丸ごと1こ入ったリンゴパイ。見た目かなりボリュー

もっとみる
あとはご飯作るだけの日常が今日も暮れ

あとはご飯作るだけの日常が今日も暮れ

6時に起き、娘のお弁当を作るところから始まって、洗濯、掃除、お店の営業準備、片付け、買い出し、皿洗い…あとは晩ご飯作って1日の終わり。

代わり映えのない1日に辟易して、虚しい気持ちでこの句を思うこともあれば、
「ああ、1日無事に終わった、良かった良かった、がんばった」と充実した気持ちでこの句を想うこともある。

その日その日の過ごし方って、大事よね。

時々、スマホの青空文庫で種田山頭火の日記を

もっとみる
からからと枯れ葉かわいた音を立て

からからと枯れ葉かわいた音を立て

久しぶりにウォーキング。さすが南国の鹿児島といえども、吹く風に枯れ葉が足元を過ぎていき、空気も夏のそれとは明らかに違います。とはいえ、見回せばハイビスカスが咲き、バナナみたいな椰子みたいないろんな熱帯植物もあちこち目にするから、なんか季節感ごちゃまぜ。シュールでもあり、なんかわびしくもあり。

昔、一人旅で行った天橋立を思い出した。駅を降りると、閑散とした通りにハワイアンが鳴り響く…天橋立って、ザ

もっとみる
米のみにあらずや芋の新酒かな

米のみにあらずや芋の新酒かな

鹿児島で酒といえば、九分九厘「焼酎」。11月が近づくと、県内のいろんな蔵元さんの新酒祭り情報を目にします。

実は鹿児島に来た当初、焼酎はあまり好きではありませんでした。しかし行きつけの酒屋さんで、マリオネットという焼酎を紹介され飲んでみたところ、樫樽で仕込んだ、焼酎というよりウイスキーのような芳醇な香りにびっくり。そこから木樽仕込みの焼酎をいろいろ試すうち、自然と普通の焼酎も好きになっていました

もっとみる
あの時のレモンは未だあざやかに

あの時のレモンは未だあざやかに

2013年の11月。箱いっぱいのレモンが届いた。お礼だった。いま思い出しても、レモンの色彩はあざやかによみがえる。たとえ目の前にレモンそのものがなくても。

深夜のNHK。AIで蘇る美空ひばりを見た。見終わって、無性に大滝さんの曲が聴きたくなった。何曲か大滝さんの声を聞いたあとに思ったのは、思い出はもっと違った形で残すべきだ、ということだ。

AIの技術自体は否定しない。たった1回の“奇跡”という

もっとみる