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No.15 ノンフィクション小説「ブロークンライフ!!」

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「行動量が足りないんじゃないのか?」

黒川社長が僕の報告を聞いて言う。

「はい…そうですね。」

「お前と、木崎の営業力じゃ、10,000倍違うんだから、

10,000倍は無理だとしても、今の倍は動かないとだよな」

(いや、今の倍って…)

「まあ、とにかく、もう一度行動量の部分を修正して、

今日中に報告書あげてくれ。」

「承知しました。」

そう言うと、黒川社長は、自身のマンションの棟に向かって

引き上げて行く。毎週末のミーティングは、黒川社長の自宅マンション

下のカフェで行なっている。

(あ〜疲れた…ファンティエトから帰って、

ロクに休めてないからな。)

昨日、アンさんの結婚式を終えて、

夜行バスでホーチミンに着いたのが深夜だった。

今朝早くに起きて、夕方のミーティングに向けて

資料を用意していたため、実際ほとんど休んでいなかった。

「この週末のミーティングのお陰で、

全然気持ちが休まらないんだよね〜」

独り言を呟きながら、帰り支度を整えて、

タクシー乗り場でタクシーを待っていると、

電話が鳴った。

(ゲッ!!黒川社長だ。まさか今の聞かれてる訳ないよな…)
慌てて周囲を見回すが、幸い近くにいる訳ではないらしい。

「はい!田中です!」

「お〜!悪い悪い。言い忘れたんだけど、

来週、海外進出部門が展示会の運営をするから、

お前も手伝ってくれ!詳細は、リンさんに聞いてくれ!

宜しくな!じゃ。」

ブツッと電話は切れた。

(マジか…手伝うのは良いんだけど、

いつも通り、『だからと言って、

行動量が落ちる言い訳にはならないかな』

って事だろ?参ったな。。)

今の電話で、僕のテンションは一気に地に落ちた。

ガックリと肩を落としながら、タクシーに乗り込む。

「ディーダウ?」

運転手が聞く。

「ディ、タイバンルン」

と僕が答える。

余談だが、このタイバンルンがとにかく伝わり辛い。

ひどい時は、5〜6回伝えても、理解してもらえない。

ベトナムは、声調が6つもある声調言語であり、

発音で理解する部分が大きい。

そのため、理解してもらえない時は、

諦めて、比較的伝わりやすいレタントンと伝える。

タクシーに揺られながら、

(これじゃあ、イェンに連絡するどころじゃないな…)

と、ため息をつく。運転手がバックミラー越しに、

そんな僕を覗いている。不意に、

「ゲンキデスカ?」

とカタコトの日本語で話しかけられ、

びっくりしながらも、少し嬉しかった僕は、

「元気ですよ!シンカモン!」

と、伝えると、運転手は、満面の笑みで

「コンコチー(どういたしまして。)」

と返して来た。

タイバンルンに着いて、運転手に、

100,000ドンを渡して、

少し元気をもらったお礼に、

お釣りは受け取らずに降りた。

運転手が、窓を開けて、

「アノーイ!シンカモン!」

と叫んでいる。僕は、

「コンコチー」

と、軽く笑って彼に言い返した。

感謝のラリーを終え、

幾分元気を取り戻した僕は、

自宅には帰らず、

仕事をする時の行きつけのカフェ、

『The Cafe Bean & Tea bag』

に入っていく。

飲み物の注文を終えると、

猛烈に集中し出した。

一気に終えてしまおうという肚だった。

2時間程で、報告書の修正を終えて、

黒川社長にメールで送った。

「ふう〜…ようやく終わった〜…」

時刻は、もうPM8:00前である。

そうすると、ちょうど良く吾妻さんからLINEが届いた。

晩御飯の誘いだ。

(お!ちょうど良かった!!)

待ち合わせ場所は、『ジャージャー』に決まった。

吾妻さんも僕も、この店のまぜそばが好きだ。

カフェからジャージャーは、2〜3分といった所なので、

ブラブラゆっくり歩いていくと、

タイバンルンのヘムの入り口で、

ちょうど良く吾妻さんと出会えた。

「お〜!田中くん久しぶり!元気してた?」

「お久しぶりです!元気ですよ!」

「そっか良かった!大変そうにしてるって、

研修チームのチャンさんが言ってたけど、

大丈夫そうだね!」

「いや〜、大変は大変ですけど、

何とかやってます!」

吾妻さんと会うのは、1ヶ月半ぶりだ。

人材研修事業のトレーナーの指導で、

東南アジア3ヶ国4地域を飛び回っている為だ。

「ジャージャー」に入り、いつも通り

二人共まぜそばを頼んだ。

「人材研修の営業はどう?順調?」

「正直なかなか難しいですね。

木崎支店長と僕の営業力が違い過ぎるのも

ありますが、5年かけて木崎支店長が

ほぼ全てのエリアを回っているので」

「まあ、そうだよな〜。ただ当時と状況が

変わっている所もあるだろうから、

希望は捨てちゃダメだよね」

「はい。もちろんです!黒川社長にも、

『行動量だ!』って口酸っぱく言われてますから。ハハハ」

「まあね。それはそうなんだけどね。でも、

他の仕事も振られるんでしょ?」

「はい。来週も、海外進出部門の

展示会のサポートがありますね。」

「仕方ない事だけど、なかなか集中させて

もらえないんだね。前任の鈴木さんも、

それで結構参ってたからな〜」

「あ、そうなんですね。」

鈴木さんとは、僕の来る3ヶ月程前まで

SOCIAL VIETNAMで働いていた女性だ。

元々、日本の株式会社SOCIALで働いていたが、

海外で働きたい希望があり、退職したそうだ。

その時に、SOCIAL VIETNAMでの求人枠が

あったため、現地採用として採用された。

僕は直接面識がなく、退職したのも、体調不良という理由以外、

詳しい事情も知らなかった。

「鈴木さんが退職をしたのは、もちろん体調を崩したのが

理由なんだけど、激務に加えて、営業成果が出ない事への

詰めもあったんだと思うんだよね。」

「なるほど。そうだったんですね。」

「田中くんも、忙しいとは思うけど、

くれぐれも無理はしないようにね!」

「はい!ありがとうございます!でも、

まだ全然大丈夫ですよ!若いですし!」

「それを俺の前で言うか〜!ハハハ!」

「あ、すみません!ハハハ!」

まぜそばを食べ終わると、

吾妻さんは、明日からまたハノイ出張との事で、

早めに帰って行った。

自宅に帰ると、黒川社長からメールがあり、

過去2ヶ月分の行動量と成果の数値を追加した、

追加資料作成の指示があった。

シャワーを浴びて、気持ちを切り替えてから、

指示のあった追加資料を作成し、メールで再度報告を終えたのは、

24:00少し前だった。

ホッと胸を撫で下ろした途端、

一週間の疲れと、ファンティエト行きの疲れとがドッと来て、

電気を消すのも忘れ、すぐに寝息をたて始めたのだった。

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