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エッセイを書きたかったけど、書けずに、行き着いた場所。

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2023年4月の記事一覧

【エッセイ】 自分の中に潜むキツネ。

【エッセイ】 自分の中に潜むキツネ。

意識高い系の人が苦手だった。

格言めいた言葉を吐き、美容や健康状態を意識した生活を心がけている人を見ていると、「あんたはどこに向かっているの?」とバカにした視線を送っていた。そして、「そんな人生、つまらなそう」だとか「もっと縛られないで自由に生きたら?」なんてことを心の中でボヤいていた。

それはたぶん、自分が出来ないことにチャレンジをしている人に対するやっかみだ。嫉妬だ。自分が勉強できないから

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【エッセイ】 当たり前の反対は、ありがとう。

「当たり前の反対は、ありがとう、なんだよ」

子どもの頃、父にそう教えられた。
正直、なにを言っているのか分からなかった。

だって当たり前の反対は、「当たり前じゃない」でしょう。当たり前じゃないことは滅多にないことだから、「珍しい」とかの方がしっくりくる。とてもじゃないけど「ありがとう」という言葉とは結びつかなかった。

でも、どういうわけか、父の言葉はあたしの頭にこびりついていて、「ありがとう

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【エッセイ】 生きてるだけで奇跡。

【エッセイ】 生きてるだけで奇跡。

たまに「奇跡」を感じる時がある。
この前は、桜の花びらが手の中に落ちてきて、「奇跡だ!」と思った。

でも、「奇跡」という言葉には、キラキラした印象があるせいなのか、日常的に使用するには、少しハードルが高いのかもしれない。

ヘタしたら、「桜の花びらが手の中に落ちてきただけで、奇跡だあ? とんだご機嫌野郎だな!」と怒られてしまう可能性だってある。そのくらい、「奇跡」という言葉には、ある種の壁を感じ

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【エッセイ】 なんとなく生きてきた。

【エッセイ】 なんとなく生きてきた。

なんとなく生きてきた。

夢も情熱もなく、なんとなく親の言うことを聞いて、社会から外れないように、友達と喧嘩しないように、上司や先輩の言うことをちゃんと聞いて、後輩には甘い言葉ばかりを言って、当たり障りのないように、なんとなく生きてきた。なんとなく生きてこれた。これはウチの特殊能力でもなんでもなくて、それくらい平和な世界なんだと思う。

なんとなく生きてきたせいなのか、最近、なんとなくで全てが解決

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【エッセイ】 めんどくさいから、面白い。

【エッセイ】 めんどくさいから、面白い。

面倒なことが多すぎる。

なにもかもが面倒だと思ってしまう。一人で生きていけるなら、こんなにラクなことはない。でも、残念ながら一人で生きることは不可能で、どうしたって面倒なことが立ちはだかってくる。

人と話すのが面倒で、相手を気遣うのが面倒だ。でも、会話をしなかったら、気遣いができなかったら、もっともっと面倒になる。だから、少しでも面倒を減らすために、面倒なことをしている。こんな風に思ってしまう

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【エッセイ】 年齢についてのモヤモヤ。

【エッセイ】 年齢についてのモヤモヤ。

近頃、つくづく「年齢」の意味を考えてしまう。

年齢という概念は、誰が生み出したんだろう。
なんのために作り出したのだろうか……。

もし、年齢という概念がない時代に生まれたら、ウチはなにを思うのだろうか。フと「この世に生を受けて、どれくらいの月日が経ったんだろうか……」なんてことを思うのかなあ。・・・思わなさそう。

年齢よりも世界の大きさ、とか。そっちに関心が向きそうなんだよね。海の向こうには

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【エッセイ】 人の性格。

【エッセイ】 人の性格。

人の性格について考える。

その人の性格は、本当に「その人だから」そうなったのかなって思ってしまう。

例えば、ヒトラーという人間は、最初から優生思想を持っていたわけではなくて、彼の養育環境や、第一次世界大戦を経験したからこそ育まれた可能性があるのではないか……というね。そんなことを考えてしまうんです。そう考えた方が、思考の幅が広がるというか、考えていて楽しくなる。

持って生まれた素質だったら悲

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【エッセイ】 人はみな役者。

【エッセイ】 人はみな役者。

確かに嫌われないための発言が増えた気がする。誰も傷つけないように、全方位に気を遣っての言葉を探したりして、自分をイイヒトに仕立て上げている。

これは年齢の問題だけじゃないのかもしれない。SNSが流行して、炎上したり、特定されたり、リテラシーを身につけたからこそ生まれた価値観だったりするのかも。

多様性が重視される世の中だから、自分も全てを受け入れている風に装っている。本当は自分の中に嫌悪感があ

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【エッセイ】 欲なし人間。

【エッセイ】 欲なし人間。

若い頃、「お前には欲がない」と言われたことがある。その言葉に、ウチは自分でも驚くくらいに納得がいってしまった。リサイクルショップで妙に自分の身体にフィットするイスを見つけた時のような感覚だった。

自分を一言で表すとしたら・・・、欲がない。

ここでいう「欲」というのは、「向上心」とか「貪欲さ」などといった、ある物事に対する姿勢に使われる時のヨク。自分でいうのは情けないんだけど、その意味で、ウチは

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【エッセイ】 素直になりたい。

【エッセイ】 素直になりたい。

気をつかって生きるのをやめたい。もっと素直に生きていたい。自分の意見を率直に言える人が羨ましい。「この発言をしたら、相手が傷つくかもしれない」とか考えないで行動したい。

ウチは、いつも他者の中に存在している。

友達と映画の感想を言い合う時だって、ウチは素直に言い出せない。それは本を読んでも、なにをするにも同じこと。心のどこかで、褒めないといけない、なんてことを思っているのだと思う。

ノーと言

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【エッセイ】 期待の美学。

【エッセイ】 期待の美学。

また期待をしてしまった。

自分ではコントロールできないことに期待をするとロクなことはない。

評価とか、他人の気持ちとか。
どれだけ期待をかけたところで、自分じゃどうすることもできないんだから!

期待をすると、「応える」か「外れる」の二択になってしまう。「期待以上」のことって珍しい。ほとんどは期待外れに終わるんじゃないかしら。でも、その分、期待は応えてくれるだけで十分に嬉しいし満足がいく。

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【エッセイ】 山あり谷あり、美しきものなり。

【エッセイ】 山あり谷あり、美しきものなり。

人生、山あり谷ありという。

いい時もあれば、悪い時もある――ということ。でも、たぶん、それだけの意味じゃない。だって山も谷も美しいもの! だから、本当の意味は、「人生、山あり谷あり、美しきものなり」なんじゃないかしら。

いい時もあれば、悪い時もある。
でも総じて見れば、そのどれもが美しい。
だから、どんな人生だって美しいのだ。

・・・そんな言葉に見えてくる。とても元気をもらえる、素敵な言葉だ

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【エッセイ】 朝の時間。

久しぶりに朝早く起きた。朝なのか夜なのか分からない。午前4時。世界は静かで、雪も降っていないのに、しんしんとした空気が流れていた。動物たちも寝ている時間。外から歌声も聞こえてこない。聞こえているのは、安い壁掛け時計の秒針の音。歌詞みたいに、チクタクチクタクと鳴らしている。

みんなが寝ている時間に自分一人動き出すと、なんだかワクワクする。自分が今日という一日を動かしているような気分だ。大人ブリたか

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