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エッセイを書きたかったけど、書けずに、行き着いた場所。

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記事一覧

手放すときは、始めるときだ。

手放すときは、始めるときだ。

きっといつかは、「手放すとき」が来るだろう。

そんなことを思うときがある。

フィギュアを買ったとき。
本を手に入れたとき。
食器を購入したとき。
家電を買い替えたとき。
服を売ったとき。
親の老化を感じたとき。
子どもの成長を目の当たりにしたとき。
恋人へのハートが消えたとき。
人生に疲れたとき。
大金を手にしたとき。
ペットが死んだとき。
植物が枯れたとき。
季節が変わるとき。
友人が結婚し

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減らないクッキーは遺伝する。

減らないクッキーは遺伝する。

ウチの冷蔵庫には減らないクッキーがある。
白い丸皿の上に、いつもひとかけらのクッキーが残るのだ。

いざ食べようと思ったら、すぐになくなり、足らなくなって、そこに一枚か二枚クッキーを追加する。そして、食べる。でも、食べ切る前にお腹が膨れてしまう。だから、ひとかけらを残してラップをかけて冷蔵庫に戻す。

予備のクッキーが少なくなってきたら、スーパーで材料を買ってきて、新たなクッキー作りを開始させる。

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カフェでの一コマ

カフェでの一コマ

エスプレッソを追加した濃いめのソイラテが胃に落ちる。ドクンドクンと心臓のポンプが活気出した。駅徒歩0秒をうたうカフェのカウンター席でキーボードをタイプしていると、店内から生活の声が聞こえてくる。耳をそばだてる必要もなく、丸い声と四角い声が耳に入ってくる。

「この前の月曜と火曜でさ、久々にアキとヨーコと休日とってディズニー行って来たんだけど、ほんっと最高だった」

丸い声は、泡が弾けるみたいな話し

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書きながら考えてるんだわ!

書きながら考えてるんだわ!

ものごとを論理的に考えられる人に憧れがあった。喋る時も「結論から申し上げると」などと言える人になりたかった。だから、努力した。会話をする時も、一度、頭の中で整理をして喋ったり、台本を作るような感覚で自分の意見が短くストレートで伝わるように工夫した。実際に、台本を作ったこともある。頭の中だけでなく、文章も論理的な構成にしようと、アレコレ試してみた。

でも、無理だった。

まとまっているようでゴチャ

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カラフルな世界で生きたい!

カラフルな世界で生きたい!

最近、「原因は一つではない」ことを、意識している。意識しているというか、そう考えるクセを作ろうとしているといった方が正確かもしれない。

ことあるごとに「原因は一つではないぞ!」と自分に言い聞かせている。

特にテレビやネットニュースを眺めているときは、それを意識している。「円安経済なのは、総理が~」とか「政治ジャーナリストを刺した犯人は、彼の親が~」とか。人々の目を引くために、あらゆるパワーワー

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ウチは、ウチだし、あなたは、あなた。

ウチは、ウチだし、あなたは、あなた。

ウチは、ものっすごい人見知りだった。もう、これは保育園の頃からの筋金入りだ。園内でも緊張するのか、すみっこの方で三角座りをして、ずっと周りの友達や先生の顔色をうかがっていたんだとか。

もはや、ここまでくると人見知りというよりも、人間恐怖症の気配があるが、ウチとしては「人見知り」という認識で、やり過ごしてきた。

人見知りは「性格であり、個性」だと思うようになったのは、中学生くらいの頃からだ。小学

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苦手な人。

苦手な人。

すごく苦手な男性がいる。その人は、いつも自分が上位に立っているかのような挙動をとる。マウントを取る、というやつだ。そして、求めてもいないのに、勝手にアドバイスをぶつけてくるし、なにより言葉の一つ一つが乱暴で受け取るたびに、ズンと重いパンチをもらったような衝撃が走る。それが本当にイヤで、できれば一緒にいたくないし、離れたい気持ちはあるのだが、仕事上、そうもいかない時がある。

飲み会の時だった。中華

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最強王な性格。

最強王な性格。

世の中には色々な人がいる。それぞれが強烈な個性の色を出していて、その発色はまぶしいくらいだ。そうとは思えないけれど、ウチだって強烈な個性の持ち主の一人なんだろう。

誰一人として同じ人間はいない。でも不思議なもので、似たような属性を持った人がいて、それを「リーダータイプ」などとジャンルで括ってみたり、もう少し細かくした「穏やかな性格」といった分け方をしてみたりする。

そこで最近思っていることがあ

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期待に応えようとしちゃう症候群。

期待に応えようとしちゃう症候群。

誰かに何かを言われたワケでもないのに、期待に応えようとしちゃう。つい褒められたくて、すごいって言って欲しくて、力んでしまう。頑張ってしまう。これを【期待に応えようとしちゃう症候群】と呼ぶ。

この病気は、年中無休の長引く病だ。

でも特効薬もある。

それは「リラックスしなよ」という言葉。

そう、この病気にかかると、どうしても力みが生じてしまう。真面目だからこそ、自分ならもっと出来ると思っている

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「イメージュ」を追い越したい!

「イメージュ」を追い越したい!

人間に与えられた最も優れた能力は「想像力」だと思ってる。イマジネーションだ。たとえば小説を読んでる時は、登場人物の姿、形、声、姿勢、歩き方などをイメージしながら読み進める。すごい能力だと思う。頭の中の世界には限界がなく、どこまでも想像力の世界は広がっていく。

もちろん、人間であるウチの中にも想像力はある。でも、実は「想像する」という行為にたどり着く前に出来上がってるような、もっとぼんやりとした、

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誰かと思考する、ということ。

誰かと思考する、ということ。

っていう、メモをスマホに残していた。正直な言葉だなと思った。とっさにメモ書きに殴りつけるようにして入力したんだろうね。



この日、ウチは飲み会に参加していた。以前から飲みの約束をしていたらしい同僚チームと、たまたま帰宅タイミングが重なったことで、「軽くいく?」とノリで誘われたのだ。

一人で過ごすことの多いウチは、飲み会に参加することなんて滅多にない。でも、ここのところ、一人で思考することの

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自分を見ているのは、いつも他人だった。

自分を見ているのは、いつも他人だった。

ファッションは他人が見るものだ。

だから、自分のファッションセンスを信じない方がいい。鏡を見て、自分を確認する時間は、1日のうちでほんのわずか。どれだけ自分ではお気に入りの服を着ていたとしても、そのほとんどの時間は他人が見ている。いや、見せられているのだ。

独特のファッションセンスを見せられる相手の気持ちを想像してみてほしい。とりあえず「オシャレだね」と言うしかないが、心の中では「こんな奴に隣

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今日も小さな成功体験を積む。

今日も小さな成功体験を積む。

豆腐メンタルのウチは、成功体験を積み重ねることを自分のルールに課している。ミスを恐れ、失敗に悩み、不安に苛む日々からの脱却ばかり考えた結果、辿り着いた自分なりの戦闘スタイルだ。

だから、ウチは小さなことでも「成功したぜ!」と言い聞かせることにしている。たとえば休みの日なのに、早起きをすると決める。そうして、本当に起きる。

「起きれた! ウチって、意思が強いんだ!」

些細なことかもしれないけど

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時計が喋った!

時計が喋った!

ウチの部屋にある壁掛け時計は、たまに喋る。一時間ごとに「ケロケロ」とカエルみたいな声をあげるのだ。時計の中心には、小さなカエルの絵が刻まれており、喋る時には目を光らせる。

いつからこの時計がウチの部屋にあるのかは覚えていない。自分の部屋を与えられたのは小学校高学年の頃だったけど、たしか、その頃からカエルは部屋にいた。それから一人暮らしを始めても、カエル時計は一緒にいる。ずっと一緒だ。

カエルは

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