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【エッセイ】 素直になりたい。

気をつかって生きるのをやめたい。もっと素直に生きていたい。自分の意見を率直に言える人が羨ましい。「この発言をしたら、相手が傷つくかもしれない」とか考えないで行動したい。

ウチは、いつも他者の中に存在している。

友達と映画の感想を言い合う時だって、ウチは素直に言い出せない。それは本を読んでも、なにをするにも同じこと。心のどこかで、褒めないといけない、なんてことを思っているのだと思う。

ノーと言えない日本人、なんて言い方があるけど、似てる感じかも。
ノー、とは言えるけど、「嫌い」とか「イヤ」なんてことを口に出せない。

たぶん、超がつくほど自意識過剰なんだろうね。自分の振る舞いが相手にどんな印象を与えてしまうか、なんてことばっかり考えている。そうしてイイヒトになりたいんだと思う。嫌われたくないんだと思う。なんでもかんでも、典型的、って感じ。

でも、体内には思うことがたくさんあるわけで、そんな老廃物を外に出さないわけにはいかない。吐き出す先は、だいたいココ。ネットの世界というよりも、文字を書き殴る世界のことで、実際、紙のノートにも書き殴ったりする。日頃の恨みつらみを文字化する。文字にするだけで、気持ちを吐き出せるし、スッキリするんだよね。とはいえ、デスノートみたいなモノではない。素直に「嫌い」とか「ムカつく」なんて書いてるだけの可愛いもの。

文字にはできるけど、じゃあ、それを口に出せるのか・・・。それが情けないことに難しいんだよね。口に出そうとすると言葉がつっかえたり、頭の中がパニックになったりする。だから、なんにしたって文字や原稿が必要みたい。なにを喋るかにも準備がいる。常に好きな人に告白する前のような気分。もちろん、高揚感感はない。

そんなウチだけど、唯一、飾らない言葉を全て吐き出せる相手がいる。それが母親だ。母親にだけはマシンガンのように話すことができる。他にはいない。母親にだけは、ウチがどう見えているか、という脳みそが働かないの。「受け入れてもらえる」という自信があるのかもしれない。

母は高齢者ということもあるのか、人間の深みも年々増してきている。今の母だから、受け止められることもあるのだと思う。でも、そりゃそうだよね。ウチの年齢が母が母として生きた年月なんだから。若い親たちは「ママ何年目、パパ何年目」などと言ったりするが、それでいったらウチの母は、ママ数十年目。人間が深いことにも頷ける。

母と話した後は、ノドが痛くなる。それくらい喋ってる。熱く、熱く、想いをぶつけてしまっている。たぶん、文字の外側にあるものが吹き出しているんだと思う。文字化できない感情や気持ちがある。そんな老廃物たちを、ウチは豪速球でぶつけてしまっている。職人レベルのキャッチャーは、いい音を出して受け止めてくれる。まだ現役だけど、もうミットはボロボロのはず。

そろそろ、ウチは母を卒業しないといけない。だからこそ、素直に生きたいと強く願っている。でも、でも、でも、と頭でブレーキを踏まないで。


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