川島啓介

神職。日本語敎師。海外の祕境探檢と正字正假名遣ひと絕版圖書蒐集を愛好する。硏究分野は、…

川島啓介

神職。日本語敎師。海外の祕境探檢と正字正假名遣ひと絕版圖書蒐集を愛好する。硏究分野は、近代の神道思想・國語國字問題。國語の正常化と戰前の日本の價値再發見を志向する。同時に、異文化理解にも興味あり。

マガジン

記事一覧

小笠原諸島の神社 ~小笠原諸島紀行④

Shinto shrines in Bonin Islands 海外神社を調べてゐると、「日本人の行くところ神社あり」の聲が反響する。小笠原諸島でもまた、その聲を聞くこととなつた。 小笠原の…

川島啓介
3年前
4

鯨肉を愛するがゆゑに、鯨を見に行つた話 ~小笠原諸島紀行③

Whale watching in Bonin Islands 私は鯨肉が好きで、職場の晝休みにも、何度も鯨料理屋へ食べに行つたことがある。韓國の捕鯨基地がある蔚山へも、鯨を食べに行つたこと…

川島啓介
4年前
7

梅と闇齋

實際に、以下の通り京都と滋賀を旅したのは、今年の2月22日~24日。facebookに以下の記事を書いたのは、3月18日のことであつた。 Plum Blossoms in Kyoto 櫻が咲…

川島啓介
4年前
4

夜の街で軍事パレード ~極東ロシア紀行④

Military parade in Vladivostok at night 1年前の旅行記にこの續篇を書かうと思つたのは、今が5月だからである。6月になると、書き難くなるからである。少々、時局と…

川島啓介
4年前
3

ウスリースク逃避行 ~極東ロシア紀行③

Ussuriysk, Russia ウラジオストクに到着した日、坂の多い街を半日、距離にして30キロ步き囘つた。坂と軍港を特色とする街の景観を愛でつつも、喧騷とアジア系觀光客の…

川島啓介
4年前
6

ウラジオストクに蕎麦とニシンと文豪カフェを求めて ~極東ロシア紀行②

Vladivostok, Russia シベリア鐵道で、ナホトカからウラジオストクへ向かつた。これに乘るために、樂しみだつたホテルの朝食を斷腸の思ひで諦めたのであつた(電車の發車…

川島啓介
4年前
4

ナホトカの日本人墓地を訪ねて ~極東ロシア紀行①

令和元年5月8日執筆(facebookより轉載)。去年5月に、「極東ロシア紀行」を①~③まで書いたが、その續編④を今年の5月中に書きたくなつたので、こちらにも①~③を轉…

川島啓介
4年前
2

「7日間ブックカバーチャレンジ」…第8日目(番外編)『アルパカファン』

アルパカ好き必攜の書。人は誰しも、一度はアルパカになりたいと考へたことがあるはずである。ただ、實際にアルパカになるためには、輪廻轉生ぐらゐしか方法がない。それ…

川島啓介
4年前
2

「7日間ブックカバーチャレンジ」…第7日目『未成年』

facebookからの轉載。本日執筆。 ドストエフスキー著。1875年刊。次は、海外文學から選びたいと思つた。それならロシア文學がいいと思ひ、ロシア文學ならドストエフス…

川島啓介
4年前
6

「7日間ブックカバーチャレンジ」第6日目…『東海道中膝栗毛』

facebookからの轉載。本日執筆。 日本最初の職業作家と言はれる、十返舎一九著。享和2(1802)年~文化11(1814)年刊。思想・哲學から離れ、古典文學から、…

川島啓介
4年前
1

「7日間ブックカバーチャレンジ」第5日目…『死に至る病』

facebookからの轉載。令和2年5月16日(土)執筆。 キルケゴール著。1849年刊。西洋哲學より、誰もがその名を知っている作品をと思ひ選んだ。 はつきり言つて、最…

川島啓介
4年前
2

「7日間ブックカバーチャレンジ」第4日目…『國體講話』

facebookからの轉載。令和2年5月15日(金)執筆。 戰前を代表する神道思想家、今泉定助の著。昭和13(1938)年刊。GHQ發禁圖書。 「神道思想は、西洋哲學に…

川島啓介
4年前
1

「7日間ブックカバーチャレンジ」第3日目…『世界史の哲學』

facebookからの轉載。令和2年5月14日(木)の記事。 京都學派第3彈。西田哲學の後継者、高山岩男の代表作。昭和17(1942)年刊(2001年に復刊あり)。 戰…

川島啓介
4年前
1

「7日間ブックカバーチャレンジ」第2日目…『世界史的立場と日本』

以下は、facebookからの轉載。令和2年5月13日(水)執筆。 京都學派第2彈。GHQ發禁圖書。昭和18(1943)年刊。當時を代表する哲學者4人(西田幾多郞門下生…

川島啓介
4年前
1

「7日間ブックカバーチャレンジ」第1日目…『善の研究』

最近更新してゐなかつたので、facebook上で書いた「7日間ブックカバーチャレンジ」の記事を轉載します。最初から聯動しておけば良かつたものを。それから、ルールを無視し…

川島啓介
4年前
1

戰略なき母島上陸作戰 ~小笠原諸島紀行②

母の日に母島のことを書かうとする氣がなかつたと言へば、噓になる。 船旅はいいものだ。極度に搖れたり、騷々しい乘客と同室になつたりさへしなければ。昨晩は極度に搖れ…

川島啓介
4年前
3
小笠原諸島の神社 ~小笠原諸島紀行④

小笠原諸島の神社 ~小笠原諸島紀行④

Shinto shrines in Bonin Islands

海外神社を調べてゐると、「日本人の行くところ神社あり」の聲が反響する。小笠原諸島でもまた、その聲を聞くこととなつた。

小笠原の神社を探るのも、今囘の旅の關心事であつた。そして、この島に獨自の神話とまではいかなくても(そもそも日本人在住の歷史に乏しいため、そこまで期待してゐなかつたが)、獨自の祭神を確認することはできるのであらうかと

もっとみる
鯨肉を愛するがゆゑに、鯨を見に行つた話 ~小笠原諸島紀行③

鯨肉を愛するがゆゑに、鯨を見に行つた話 ~小笠原諸島紀行③

Whale watching in Bonin Islands

私は鯨肉が好きで、職場の晝休みにも、何度も鯨料理屋へ食べに行つたことがある。韓國の捕鯨基地がある蔚山へも、鯨を食べに行つたことがある。大學生の時から、折に觸れて食べてゐる。

そんなこともあり、鯨には興味はあつたものの、生きたそれを見たことはなかつた。そして小笠原諸島を旅先として檢討してゐた時、この周邊には鯨がたくさんゐることを知つ

もっとみる
梅と闇齋

梅と闇齋

實際に、以下の通り京都と滋賀を旅したのは、今年の2月22日~24日。facebookに以下の記事を書いたのは、3月18日のことであつた。

Plum Blossoms in Kyoto

櫻が咲かうとしてゐるこの時期に、敢へて梅の花を揭載してみる。世間では、梅の花はもう散つたであらうか。無粹であらうか。このやうな古來から季節を告げる存在感の强い花を扱ふ場合、ネット上でも機を見るに敏でなければならな

もっとみる
夜の街で軍事パレード ~極東ロシア紀行④

夜の街で軍事パレード ~極東ロシア紀行④

Military parade in Vladivostok at night

1年前の旅行記にこの續篇を書かうと思つたのは、今が5月だからである。6月になると、書き難くなるからである。少々、時局と絡むことだからである。理由は、以下の通り。

少し繰り返しになるが、私は去年の改元の日(5月1日)から5日まで、ロシア沿海州に旅に出た。そして最終日前日(4日)は、ウラジオストクからウスリースクへ行き

もっとみる
ウスリースク逃避行 ~極東ロシア紀行③

ウスリースク逃避行 ~極東ロシア紀行③

Ussuriysk, Russia

ウラジオストクに到着した日、坂の多い街を半日、距離にして30キロ步き囘つた。坂と軍港を特色とする街の景観を愛でつつも、喧騷とアジア系觀光客の多さにだんだんうんざりし出し、逃避を考へ出した。

その日泊まつた宿は、木賃宿とも言ふべき狹い部屋に異常に人を詰め込む安宿。ゴーリキーの『どん底』の舞臺となつた木賃宿のやうな、ロシア的な泥臭さと乱痴氣騷ぎを期待したがゆゑに

もっとみる
ウラジオストクに蕎麦とニシンと文豪カフェを求めて ~極東ロシア紀行②

ウラジオストクに蕎麦とニシンと文豪カフェを求めて ~極東ロシア紀行②

Vladivostok, Russia

シベリア鐵道で、ナホトカからウラジオストクへ向かつた。これに乘るために、樂しみだつたホテルの朝食を斷腸の思ひで諦めたのであつた(電車の發車時刻がやたらと早かつたのである)。

ウラジオストクでは、蕎麥とニシンの鹽漬けと文豪カフェを堪能しようと決めてゐた。蕎麥は麵ではなく、實(Гречка グレーチカ)を煮たものである。10年以上前に日本のロシアンバーで食べ

もっとみる
ナホトカの日本人墓地を訪ねて ~極東ロシア紀行①

ナホトカの日本人墓地を訪ねて ~極東ロシア紀行①

令和元年5月8日執筆(facebookより轉載)。去年5月に、「極東ロシア紀行」を①~③まで書いたが、その續編④を今年の5月中に書きたくなつたので、こちらにも①~③を轉載する。

旅は、令和元年5月1日~5日に行つた。

Nahodka, Russia

10聯休を利用し、ちょつとシベリア鐵道に乘つてきた。最初に向かつたのは、旅人がゐないナホトカ。ここでの最大の目的は、シベリア抑留者の「日本人墓地

もっとみる
「7日間ブックカバーチャレンジ」…第8日目(番外編)『アルパカファン』

「7日間ブックカバーチャレンジ」…第8日目(番外編)『アルパカファン』



アルパカ好き必攜の書。人は誰しも、一度はアルパカになりたいと考へたことがあるはずである。ただ、實際にアルパカになるためには、輪廻轉生ぐらゐしか方法がない。それには、途轍もない年月と途轍もない幸運が要求される。

そこで、我々にできる最善の手は、できるだけアルパカの勉强に勵み、できるだけアルパカに接し、少しでもアルパカの氣持ちを理解しようと努めることだけである。そこで、本書の出番が登場する。

もっとみる
「7日間ブックカバーチャレンジ」…第7日目『未成年』

「7日間ブックカバーチャレンジ」…第7日目『未成年』

facebookからの轉載。本日執筆。

ドストエフスキー著。1875年刊。次は、海外文學から選びたいと思つた。それならロシア文學がいいと思ひ、ロシア文學ならドストエフスキーだと思ひ、それなら「ドストエフスキー五大長編」には入つてゐるが、「四大長編」には入つてゐない、位置付けの厄介なこの作品がいいと思ひ至つた。『罪と罰』や『カラマーゾフの兄弟』を選ぶ人は多いだらうから、敢へてこの作品を選んでみたか

もっとみる
「7日間ブックカバーチャレンジ」第6日目…『東海道中膝栗毛』

「7日間ブックカバーチャレンジ」第6日目…『東海道中膝栗毛』



facebookからの轉載。本日執筆。

日本最初の職業作家と言はれる、十返舎一九著。享和2(1802)年~文化11(1814)年刊。思想・哲學から離れ、古典文學から、誰もが知つてゐる作品をと思ひ選んだ。

2人のふざけた男が、江戶を出發し、伊勢で神宮を參拜し、大阪まで旅をするといふそれだけの話。道中、駄洒落を言ひ、狂歌を詠み、一々騷動を起こす。

狂氣を感じさせるほど、ふざけてゐる。が、それ

もっとみる
「7日間ブックカバーチャレンジ」第5日目…『死に至る病』

「7日間ブックカバーチャレンジ」第5日目…『死に至る病』



facebookからの轉載。令和2年5月16日(土)執筆。

キルケゴール著。1849年刊。西洋哲學より、誰もがその名を知っている作品をと思ひ選んだ。

はつきり言つて、最初は極めて取つ付き難い。19世紀の異端哲學者として竝び稱されるニーチェの方が、遙かに取つ付きやすい。日本人には絕對的に分かり難いキリスト敎信仰の道を志向してゐる爲であらう。對して、それを否定するニーチェの方には、破壞の爽快感

もっとみる
「7日間ブックカバーチャレンジ」第4日目…『國體講話』

「7日間ブックカバーチャレンジ」第4日目…『國體講話』



facebookからの轉載。令和2年5月15日(金)執筆。

戰前を代表する神道思想家、今泉定助の著。昭和13(1938)年刊。GHQ發禁圖書。

「神道思想は、西洋哲學に對抗できるのか」「そもそも、神道に哲學と同列に論じるだけの理論が存在してゐるのか」「あるいは、存在し得るのか」
私は、かうした問ひを長期間持ち續けてゐた。そんな時、一條の光明を與へてくれたのが、本書の存在だつた。そこには、雜

もっとみる
「7日間ブックカバーチャレンジ」第3日目…『世界史の哲學』

「7日間ブックカバーチャレンジ」第3日目…『世界史の哲學』



facebookからの轉載。令和2年5月14日(木)の記事。

京都學派第3彈。西田哲學の後継者、高山岩男の代表作。昭和17(1942)年刊(2001年に復刊あり)。

戰時下といふ緊迫した狀況において、日本哲學が見せた極點の一つ。「嘗て、日本に哲學があつた」と不甲斐ない現狀への寂寥の念と共に、偉大な過去の業績に陶醉させてくれる作品。

哲學によつて、果敢にも世界觀の鬪爭(アングロサクソン的世

もっとみる
「7日間ブックカバーチャレンジ」第2日目…『世界史的立場と日本』

「7日間ブックカバーチャレンジ」第2日目…『世界史的立場と日本』



以下は、facebookからの轉載。令和2年5月13日(水)執筆。

京都學派第2彈。GHQ發禁圖書。昭和18(1943)年刊。當時を代表する哲學者4人(西田幾多郞門下生。高坂正顯・西谷啓治・高山岩男・鈴木成高。鈴木の專攻は、歷史學)による、知的報國の記錄。西洋の歷史哲學を咀嚼した上での哲學的叡智によつて、日本の世界史上の立場と進路を摸索した、壯大な座談會を描いたもの。哲學(廣い意味で、學問)

もっとみる
「7日間ブックカバーチャレンジ」第1日目…『善の研究』

「7日間ブックカバーチャレンジ」第1日目…『善の研究』

最近更新してゐなかつたので、facebook上で書いた「7日間ブックカバーチャレンジ」の記事を轉載します。最初から聯動しておけば良かつたものを。それから、ルールを無視し、段々解說が增えて行きます。

執筆は、令和2年5月12日(火)。

正字正假名の使用で繫がつた國語問題協議會の織田先生より、「7日間ブックカバーチャレンジ」のバトンが囘つてきました。今までこの手のものに關はつたことがなかつたのです

もっとみる
戰略なき母島上陸作戰 ~小笠原諸島紀行②

戰略なき母島上陸作戰 ~小笠原諸島紀行②

母の日に母島のことを書かうとする氣がなかつたと言へば、噓になる。

船旅はいいものだ。極度に搖れたり、騷々しい乘客と同室になつたりさへしなければ。昨晩は極度に搖れたが、それは過去の話。過去の感覺なんて、感覺として意味をなさない。今日は天氣も氣分もいいから、やはりこの船旅は快適至極である。

思へば、船旅の記憶は、深く心に刻まれてゐることが多い。そんなことを思つてゐると、過去の良き船旅の囘想が延々と

もっとみる