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ゴシックかロマンチックか
序論 約半世紀の歴史を持つ「ゴス」という文化について僕は何かを書きたいと思っているのだけれど、そもそも僕はゴスについて何かを語れるような立場にあるのだろうか? 僕は今までの人生の中で何度も美意識を変えてきたが、ゴスという文化の中を生きた、と言える時期は一度もない。第一、ゴス系の服を着ても似合わないのだ。スージー・アンド・ザ・バンシーズやコクトー・ツインズといったゴスロックのサウンドは大好きだけど、
もっとみる本当に孤独は執筆に役立つのか
最近、知人友人との縁を失うことがやけに多い。それぞれの事態をよくよく検討してみると自分が悪かった場合もあれば相手が悪かった場合もあり、また自分も相手も悪くない場合もあるのだけれど、これほどまでに多くの縁を失うと、そろそろ「予防」ではなく「対処」を考えなければならないなあ、とも思うようになる。今の僕に必要なのは「孤独を避けるにはどうすればよいのか」という知恵ではなく、「孤独に耐えるにはどうすればよ
もっとみる〈認識の虫〉と〈飲食の虫〉
(Xより自主転載)
今朝はやけに頭、特に眉骨の辺りが痛かった。
僕と直接対面した人なら分かるだろうが、僕の下顎は上顎よりも前に出ている(所謂受け口)。眉骨と下顎が同時に軋む時、僕は「顔の内側」が「顔の外側」に飲み込まれてしまうのではないかと恐れる。この恐怖は受け口に関する美容的な苦悩を遥かにに上回る。
高校時代より、僕は人類という種族の形成について妄想的仮説を抱えている。人類という高等生
絵画における展望について
僕はハイキングと絵画鑑賞を趣味としている。また僕は、人文地理学に日頃から強い関心を持っている(決してその道に明るいとは言えないが……)。そして先日、僕はこれらの趣味が共通の欲望によって生じたものであることに気付いた。僕は「展望」を求める強い衝動に突き動かされている。だからこそ僕は、「展望」を与えてくれるものとしてハイキングや絵画や地理学に魅了されたのだ。
日頃、僕たちの視界はさまざまな障害物に
僕は彼にあなたを愛していると伝える。僕はあなたに彼を愛していると伝える。
第1章 僕が僕に彼を愛させている 僕は彼を愛している。そしてこの文章を通じて、僕は彼に「あなたを愛している」と伝えたいと願っている。しかし、それではなぜ今この文章を読んでいるのは彼ではなくあなたなのだろうか。彼に「あなたを愛している」と伝えるためには、僕はまずあなたに「彼を愛している」と伝えなければならないのだ。だからこそ僕は性懲りもなくこのような駄文を書き始めてしまったのである。
僕は彼を愛し
to be or not to be
第一節 僕は中学卒業以来、一過性の非打算的な熱情に浮かされてはしばらくして元通りの打算的な生活に舞い戻る、という反復運動を延々と繰り返している。ここで言うところの「非打算的な熱情」はしばしば恋愛や宗教にも向かったが、多くの場合は政治をその対象としていた。僕は幾度もなく左翼や右翼の急進思想に惹かれ、それらに基づいて世界に革命をもたらしたいと願ったのだ。熱情に駆られるたびに僕は非打算的な生活(たとえば
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