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【小説】田舎暮らし案内人奮闘記 第13話

こんにちは、移住専門FP「移住プランナー」の仲西といいます。
ここでは、これまでの17年間の活動、2500組以上の移住相談対応から
皆さんに役立つ情報を書いています。
今回は、これまで受けた移住相談を小説風に書いてみました。
気に入った方は、フォローをしていただけると嬉しいです。


第13話 「空き家」の内覧で大暴れ!


私の朝の日課。

5㎞のジョギングとシャワー、梅干しと卵かけご飯、そしてスマホで為替相場をチェック。
やがて、遠くから小学校のベルが聞こえてくると、私も子供たちと同じ様に、書斎に向かいデスクに向き合う。
そして、教科書の代わりに、PCを開けて電源を入れる。

まずは、メールチェックが仕事のスタート。
本日も受信トレイには50件の未読メッセージ。
移住に夢見る人からの熱いメッセージが届いている。

相談メールをフォルダー移動し、着信の古いものから内容を確認。
子供のようにワクワクした気分でメールを開く。

本日の相談

こんにちは、〇〇県に住む杉山と言います。
昨年定年をして、田舎への移住を考えています。
独り者です。釣り好きなのでそちらの町が気になっています。

「空き家バンク」に掲載されている物件を内覧したいのですが、サポートをしていただけますか。物件番号は〇番です。

定年後にセカンドライフとして、田舎への移住を考える人はとても多い。
とくに、今回のように趣味を生かせた暮らしに憧れる人は多いと言える。
また、「独り者」と言うことで、移住へのリスクも少ない。

杉山さん
ご連絡ありがとうございます。
ご希望の物件番号〇番の案内は可能です。
こちらでサポートをさせていただきます。
どうぞ、よろしくお願いいたします。

翌週、杉山さんが自家用車を運転して、私の所に来られた。
背が高く気真面目そうな方に見える。
早速、私の車に乗り換えていただき、ご希望の空き家へご案内をした。

空き家に到着すると、近くに住む空き家の所有者が待っておられた。
内覧に来られるとのことで、朝から掃除をしていたとのことである。

所有者の誘導で、杉山さんと私は家の中へ。
このまま穏やかに進むかと思った矢先に、杉山さんが驚く行動に出た。

杉山さんが居間に入るなり、何度も何度も跳ねだしたのである。
恐らく、床の様子を確かめたいのだろうが・・・
木造の古い空き家である。
家がひどく振動をし、棚のガラスのきしむ音が聞こえる。
これには、所有者もひどく顔をしかめる。

その次に、すべての窓の開閉を確認を始めた。
その動作も荒っぽい。「窓ガラスが割れるのではないか」と思えるほどの大きな衝撃音が部屋中に響く。

さらに、ドア、押し入れ、タンス、そして食器棚まで、すべて引き出しの開閉を荒っぽくチェック。

私と所有者は目を合わせて、お互いに顔をしかめた。
所有者が同席していないのなら、まだこうした行為も見逃せたが・・・
所有者にとっては感情的に穏やかではなくなる。

一連の、確認を終えると、杉山さんはいくつか質問をし出した。
いや、質問と言うよりもクレームに近かった。

すっかり気分を損ねた所有者は「現状渡しです」を繰り返した。
そして堪り兼ねた所有者は、最後に「いらなければ結構です」と、少し声を荒げた。

しかし、杉山さんは所有者の態度に気付いていないのか、平然としている。
結局、杉山さんは平然としたまま帰っていかれた。

私はいつも、「空き家」の購入は「買い手よりも売り手」と話している。
これは、上から目線で話す購入者が多いからである。
空き家には所有者の思いが残っています。
先祖代々、守ってきた家。自分や家族が住んでいた家。
こうした所有者の思いを大切にし、交渉をする必要があります。

杉山さんは決して上から目線ではなかったのかもしれません。
しかし、所有者の大切な家を尊重することに欠けていたといえます。


一期一会

杉山さんが、どこかの町で幸せに暮らせることを祈って

(終わり)

#創作大賞2024 #お仕事小説部門


移住専門FP「移住プランナー」として活動をしています。これまで18年間2500組以上の移住相談に対応をしてきました。ここでは、私の経験からお役に立てる情報を日常的に綴っていきます。「移住」という夢の実現にお役に立てればうれしいです。大阪出身、北海道と鹿児島の3拠点生活中。