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生き物からのラブレター

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私と海のほねなし(海産無脊椎動物)たちとの出会いや体験を振り返るエッセイ。
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2021年4月の記事一覧

【生き物からのラブレター#17】生き物を守りたいのならまずは生物多様性を知ろう

【生き物からのラブレター#17】生き物を守りたいのならまずは生物多様性を知ろう

私の専門はヒトデの系統分類学だ。その基礎を身に着け、方向性を決定づけたのが大学3年次の佐渡臨海実験所での系統動物学実習だった。

なぜ臨海実験所で系統動物学をやるのか?答えは簡単で、海のほうが圧倒的に多様な生き物がいるからだ。

人間は陸で生活しているから動物の生活圏は陸中心だと勘違いしやすいが、そもそも地球表面の7割は海だし、海の平均水深は3000m。圧倒的に海のほうが多い。

それに多細胞動物

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【生き物からのラブレター#16】ヒトデのたいそう

【生き物からのラブレター#16】ヒトデのたいそう

「ヒトデは硬いか?柔らかいか?」

これは私の鉄板のネタである”ヒトデのたいそう”の講演時、最初にする質問だ。意見は大体半々に分かれる。実物を触ってもらっても半々くらい。

実はこれはイジワルな質問で、ヒトデは硬くて柔らかい。正確に言うと、自分の体を硬くしたり柔らかくしたりを自由に調節できる。

これって結構すごいこと。

例えば、私たちも筋肉にギュっと力を入れると一時的に体を硬くすることができる

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【生き物からのラブレター#15】ありがとうの花、カタクリ

【生き物からのラブレター#15】ありがとうの花、カタクリ

先日、仏教の六方礼経というものをやらせていただく機会に恵まれた。

“ありがとう“という言葉は仏教から来ているらしい。私たちが命をもらって生きているということは、盲目の海亀が海面に上がってきたときに、偶然流木の穴に顔を突っ込んでしまうぐらい有り難い奇跡なんだということを仏様が説いたそうだ。

これに習って、東西南北上下6方向に向かって感謝を放ちながら“ありがとう”と6回書く。さらに今回は特別にカタ

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【生き物からのラブレター#14】プランクトンの世界へようこそ!

【生き物からのラブレター#14】プランクトンの世界へようこそ!

海の中はプランクトンだらけだ!

海の食物連鎖は植物プランクトンから始まる。植物プランクトンを動物プランクトンが食べ、動物プランクトンを小型の魚や他の小さな動物たちが食べる。そして最終的には私たちの身にもなるわけだ。

普通に採取した海水を見ればプランクトンはいるにはいるのだけれど、もっと効率的にたくさん観察するために網を使って一網打尽にする。

と言っても小さいプランクトンはそんじゃそこらの網じ

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【生き物からのラブレター#13】君のすべてを知りたいんだ

【生き物からのラブレター#13】君のすべてを知りたいんだ

アメフラシは磯の人気者?である。磯遊びに行ったなら、どうしても気になってしまうアイツ。

春から夏にかけて磯に大発生し、生殖のため時には複数個体が連なることもある。その大きくて柔らかい体を引きずって海藻をひたすら貪り食う。

黒くて柔らかいのでナマコだと勘違いする人も多いようだが、実は巻貝の仲間だ。

しかもうっかり踏むと紫色の汁を出す。踏まれたほうも踏んだほうもたまったもんじゃない。汁に染まった

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【生き物からのラブレター#12】かわいいかわいいウニの妖精

【生き物からのラブレター#12】かわいいかわいいウニの妖精

一度でいいから見て欲しい!と思うのがウニの発生である。

高校生物を履修したなら誰もが習うはずのウニの発生。卵が受精し、卵割を始め、陥入、孵化した後も形を変えプルテウス幼生になるというやつだ。

いくら流れを知っていても、写真で見ていても、ホンモノには叶わないと心底感じたものの一つだ。

発生とはまさに命が創られていく過程。これほど神秘的なものはなく、発生学に魅了される人が多いのも頷ける。

しか

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【生き物からのラブレター#11】佐渡の海

【生き物からのラブレター#11】佐渡の海

海の生き物の研究がしたい。そう思っていた私が進学先を新潟大学に決めたのは佐渡に臨海実験所があるからだった。

しかし、当時の理学部生物学科における佐渡臨海実験所での実習は2年次と3年次に1回ずつ。そんなの待ってられない!と思っていた矢先、新潟大生なら誰でも参加できる実習があることを知り、1年生ながらさっそく申し込んだ。

これが初めての佐渡。この後結局2年、3年、そして4年次もティーチングアシスタ

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【生き物からのラブレター#0】ラブレター解読のためにエッセイを書いてみることにした

私はヒトデや海の生き物から膨大な数のラブレターを貰っているらしい。

郵便受けがもうパンパンだから、読んであげて!とある人に先日言われて驚いた。

え?どうゆうこと?

そりゃ私は海の生き物大好きだし、生き物と接することで学んだことはたくさんあるけれど・・・ラブレターはちょっとよく分からない・・・

と思っていたのだが、ピコーンと今閃いた。

私が出会ってきた海のほねなしたちのことを書いてみよう!

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【生き物からのラブレターα】10本投稿したので中間報告&お知らせ

【生き物からのラブレターα】10本投稿したので中間報告&お知らせ

こんにちは、ひとでちゃんです☆
はじめましての方もいつも読んでくれている方もご訪問ありがとうございます。

生き物からのラブレターを解読しようと始めたエッセイの連載ですが、とりあえず10本投稿することができました!

10本投稿してみて色々と思うところ、変更点など出てきたのでご報告いたします。

エッセイのタイトルを「ほねなしエッセイ」→「生き物からのラブレター」に変更します。”ほねなし”とは、無

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【ほねなしエッセイ#10】私と人を繋げてくれるもの

【ほねなしエッセイ#10】私と人を繋げてくれるもの

父が昨年退職した。家族の為に仕事一筋60年以上やってきた父から仕事がなくなってしまったらどうなるのだろうと私は少し心配していた。加えてこのコロナ禍である。孫とはたくさん遊べるようになるかと思いきや、会うことすら難しくなってしまった。

そんな心配をよそに父は悠々自適なのんびりライフを満喫していたようだ。近所を散歩するのが日課で近くの川にカワセミを発見したという。実家は結構な街中なので、こんなところ

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【ほねなしエッセイ#9】幼少期の記憶。トンボとハネアリとコウモリと。

【ほねなしエッセイ#9】幼少期の記憶。トンボとハネアリとコウモリと。

3歳くらいまでは父の実家に住んでいた。祖父が建てたその家は古い木造2階建ての一軒家で、隣には川が流れていた。

この家での記憶は非常に限られたものである。
その中でも印象的なのが、トンボとハネアリとコウモリ。

母に”ねるねるねるね”というおやつを買ってもらった日のこと。ねるねるねるねというのは、粉に水を混ぜると紫とか緑とかのネバネバした謎の物体ができるグロテスクな子供のお菓子である。今考えるとす

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【ほねなしエッセイ#8】吸い込まれそうなくらい青い奄美大島の海と黒いナマコ

【ほねなしエッセイ#8】吸い込まれそうなくらい青い奄美大島の海と黒いナマコ

海の生き物好きを自覚したのは中学2年生ぐらいにテレビでタコクラゲの特集を見たときだったけれど(#2参照)、それ以前から海の生き物に惹かれていた証拠が発見された。

実家の自分の部屋を片付けていた時に出てきた、奄美大島への旅日記。

奄美大島へ行ったのは小学6年生の時。しかもまさかの一人で。3つ上の姉が高校受験を控えていたため夏の家族旅行がなくなったので、母が子供だけの体験学習ツアーに申し込んでくれ

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【ほねなしエッセイ#7】チンアナゴ、ブーイングを受ける

【ほねなしエッセイ#7】チンアナゴ、ブーイングを受ける

「チンアナゴって魚なんですか!?」

けっこうな確率で驚かれるのだけど、チンアナゴは魚です。

でも気持ちはわかる!あのニョロニョロの奇妙な体は魚っぽくないよね。そして、普段は魚には目もくれず変な形のほねなし動物ばかり追っている私もチンアナゴは大好きです♡やっぱり形が面白いから。

水族館でも大人気で、今やどこにでもいる。
そして、だいたい皆が見やすいように目線の高さの水槽にチンアナゴだけ、もしく

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【ほねなしエッセイ#6】サッカー部,夏の昆虫観察記②

【ほねなしエッセイ#6】サッカー部,夏の昆虫観察記②

相変わらず新潟大学女子サッカー部の練習場は昆虫観察が楽しい場所である。こうして振り返っていると,サッカーして,昆虫観察して,私は小学生男子か!?と突っ込みたくなるけどれっきとした女子大生だったはずだ。

まぁでも私の小5病は一生ものだと諦めているので,このまま楽しく生きていこうと思う。

ある日の練習終わり,グラウンドの脇に置いてあった小さなサッカーゴールのネットにカマキリがくっついていた。綺麗な

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