見出し画像

【生き物からのラブレター#16】ヒトデのたいそう

「ヒトデは硬いか?柔らかいか?」

これは私の鉄板のネタである”ヒトデのたいそう”の講演時、最初にする質問だ。意見は大体半々に分かれる。実物を触ってもらっても半々くらい。

実はこれはイジワルな質問で、ヒトデは硬くて柔らかい。正確に言うと、自分の体を硬くしたり柔らかくしたりを自由に調節できる。

これって結構すごいこと。

例えば、私たちも筋肉にギュっと力を入れると一時的に体を硬くすることができる。でもそれを維持するにはエネルギーが必要で、ずっと硬い状態をキープするのは困難だ。

でもヒトデはカチっと留め具を止めるようにして硬さをキープすることができる。一度留め具を止めてしまえば維持するのにエネルギーは必要ない。そして弛めるのも自由だ。

究極に弛めると、そのまま千切れてしまうこともある。ヒトデは再生能力も超高いので問題ないのだが、自ら千切ってそのまま2匹に増えるなんて荒技を繰り出す種類もいるからビックリだ。

この性質を利用した面白い実験が"ヒトデのたいそう"だ。


ヒトデは口のある腹側と、肛門のある背側が区別できる。普段は背側を上にして過ごしているところを、ひっくり返してみるのだ!!!

よーく観察していると、真ん中にある口から腕の先にかけて伸びている溝からニョロニョロと細長いものがたくさん出て動いていることに気づくだろう。

実はこれがヒトデの足!

ヒトデは星型で5本足なんて言われることもあるのだけれど、あれは専門的には腕と呼ばれる。歩くために使われるのが足。アニメとかマンガとかの影響でヒトデが人のように2本足でトコトコ歩くと本気で思っている人がたまにいるのだけど、そんなわけあるか!!!

ヒトデは腹側にある無数のニョロニョロ足を使って、星型を崩さないままスルスルと海底をすべるように歩く。脳がないのにあんなに統率のとれた動きを滑らかにするのが本当にすごすぎる。

そしてもう暫くすると、体をぐにゃっと大きく反らして元に戻ろうとし始める。この動きを見れば、なるほどこんなに柔らかくなれるのね!と実感してもらえるだろう。

どの腕からどんな風に体操を始めるのか、個体やその場によって個性があってなかなかに面白い。でもどれも本当にストレッチをするような恰好になるのだ。何回やっても面白い。

この”ヒトデのたいそう”を見せた後、海に遊びに行った保育園児の子はそこらじゅうのヒトデをひっくり返して体操させていたそうだ。

わかるわかる。ついやっちゃうよね。水族館のタッチプールのヒトデもひっくり返しちゃうよね。

ヒトデはその形も腕の本数も千差万別!それぞれがまた違った体操をするはず。丸っこいヒトデは起き上がりにくそうだなぁ、腕が多いやつは動きが速そうだなぁ。

ヒトデに出会って十数年。まだまだ興味は尽きそうにない。



☆生き物との出会いや体験を綴るエッセイ連載中☆

他のラブレターも読んでみてね♡




地球レーベルの活動資金として「自然を守る」ために使わせてもらいます!ぜひサポートよろしくお願いします。