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【ほねなしエッセイ#10】私と人を繋げてくれるもの

父が昨年退職した。家族の為に仕事一筋60年以上やってきた父から仕事がなくなってしまったらどうなるのだろうと私は少し心配していた。加えてこのコロナ禍である。孫とはたくさん遊べるようになるかと思いきや、会うことすら難しくなってしまった。

そんな心配をよそに父は悠々自適なのんびりライフを満喫していたようだ。近所を散歩するのが日課で近くの川にカワセミを発見したという。実家は結構な街中なので、こんなところにカワセミがいることに驚きつつ、こっそりと見守っているらしい。

この話を聞いて私は父の誕生日にコンパクトな双眼鏡と野鳥ハンドブックをプレゼントした。これには大変喜んでくれて、街中でもいろいろな鳥がいるんだと嬉しそうに教えてくれた。

両親とは色々な葛藤もあったけれど、やっぱりどこかで繋がっていたいと思うものだ。その繋げてくれるものというのがやっぱり私にとっては生き物だった。


私は雑草から庭木、野山の野草まで色々な植物の名前を知っていると夫に驚かれる。これは完全に母の影響で、花が好きな母はいつもあれが咲いている、これが咲いているとそこらへんの花の名前を教えてくれた。母と全く同じことをしていると気づくと時々自分で面白くなる。

家族で植物園や山などへ花を見に行く機会も多かった。家の小さい庭には梅の木にツバキ、ハナミズキなどが植えられており、春には水仙やアイリスが顔を見せてくれるのが嬉しかった。

私のお墓には菊じゃなくてユリを供えてほしいと言っているような母だ。母の日はありきたりなカーネーションじゃ満足しないだろうと思って、今年はどんな花をプレゼントしようか悩むのもまた楽しいものだ。

同じものを見て、感動を共有する。そんな機会を生き物はたくさん与えてくれる。人との心の繋がりを感じさせてくれる。

両親だけでなく、私は生き物を通じて本当にたくさんの人に出会ってきた。生き物がいなければ出会えなかった大切な人がたくさんいる。そして今もこうして生き物のことを書くことで繋がりを求めているのだろう。

いつもそばにいてくれる生き物が、私の人生を彩ってくれる生き物が心から大好きだ。そんな感謝を忘れずに、生き物と人とを繋ぐ使命を全うしたいと改めて思ったのだった。


☆生き物との出会いや体験を綴るエッセイ連載中☆

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