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思い出

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大人になったら、フェンスを登れなくなった

大人になったら、フェンスを登れなくなった

僕の部屋は屋上にある。この言い方が合ってるかは分からない。詳しく言うと、僕のアパートは4階建てなのだが、最上階の廊下は天井がないということである。部屋以外の部分は開けた共同スペースになっているのだ。難しいけど分かってほしい。

大事なのは、僕が屋上で煙草を吸うのが好きで、今日もそうしていた、ということである。

さっき煙草を吸いながら、ふと思った。危ないことを、何歳まで自分は出来たんだろうか、と。

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三度目の冬

三度目の冬

京都に来て、三度目の冬が来た。
相変わらず底冷えのする、重たい冬だ。

空が広がり、空気が研がれる。川沿いの冷気から身を守るため、手袋が必要になる。そんな季節。

京都に来て初めての冬を思い出す。

一人暮らしをして初めての冬は、身も心も本当に寒くて、虚ろな日々だった。だからこそ、縋るしかなかった。

本当に好きだった人と、
本当に好きでいてくれた人。
素っ気ないLINEと安物の手袋。
信じていた

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梅雨のマニマニ

梅雨のマニマニ

長梅雨で最近外に出ていなかったから、お散歩を決行。誰にも会う訳でもないし、髭も剃らなくていいや。タバコとライターだけポッケに入れて、サンダルをつっかける。

増水した川音が唸る川沿いは、所々まだぬかるんでいた。賀茂大橋の工事はいつ終わるんだろう。赤と緑のランプが近眼にぼやけていた。

びちゃっ

残っていた水たまりを踏みつけて、サンダルの中に泥がたまる。ため息と共にライターを取り出して火をつけた。

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徘徊

徘徊

自由になりたい。陳腐だ。

眼鏡を外して外に出る。雨上がりの空気と右手の煙が肌を包んだ。イヤフォンからは流れる音楽は、歌詞のないものを選んである。

商店街のシャッターの柄はぼんやりして、街灯と信号の白赤青3色だけが視界を覆う。すれ違っても、顔が見えなければ人ではない。

デルタの真ん中に立って、イヤフォンを外す。カエルと虫と、車の音がする。世界に自分1人だけみたいだ、なんて思えない。だけど僕はど

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やっと

やっと

「9時かよ」

時計に向かって、1人の部屋で思わず声が出る。Twitterで見たそうめん混ぜそばを作って食べ終わったタイミングだった。徹夜してしまったのはわかっていたが、まだ6時くらいのつもりだったのに。

つい先ほど回したばかりの洗濯機が音を鳴らす。僕は気絶でもしていたのだろうか。とっくに脱水も終わっていた。多分一緒に洗っちゃいけなかったシャツが、シワシワだった。

今更寝る気にもならないし、と

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旅行と写真

旅行と写真

旅行の帰り。友人2人は寝てしまって僕も特にやることがなかった。かと言って寝る気にもならず、車窓をのんびり流れる田んぼと山に目をやった。こんなところにも人が住んでいるんだな、とぽつぽつ現れる民家を見て失礼なことを考える。

車内はちょっと暖房が効きすぎていて、線路の振動がゆりかごのように眠気を誘う。車内販売もないし、いよいよ自分も寝るかどうか思案するが、どうやら15分ほどで着くらしい。あまり寝る

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飲み会の跡(短編小説)

飲み会の跡(短編小説)

飲み会の最中。スマホに浮かない影を落とす君を気にしていた。わりと仲は良い方だけど席が離れていて、どうしたのと聞くことはできなかった。

2時間制のラストオーダーは90分で、みんなで最後の飲み物を思案していた。俺お冷でいいや、と顔をあげると君がいた席には座布団しかない。慌ててLINEを開く。聞けば親に門限の延長が認められず、先に帰るらしい。誰にも言わずに帰るところが君らしいと言えばそうなのだが、この

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起床

目が覚めた。雪はふっていないらしい。天気予報はあてにならない。ふっていてほしかった自分は昨日の夜に置いてきたみたいで、洗濯物干せるなあくらいしか思わない。

1人で起きるのは別に嫌いじゃない。コーヒーを入れてパンを焼けば充実してる感じは出せる。読むつもりの本は積み上がるばかりで、SNSをシュポシュポさせる。悪くないはず。

君がいた時を思い出す。考えたいわけではないが浮かぶ。君を起こさないようにそ

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煙草

煙草

君は紙巻きを吸わなかったな。東京で君はよくシーシャ屋に行っていた。「20歳になったら連れて行ってあげるよ」 その時まだ19の僕に4月生まれの君は笑っていた。

アパートの屋上。大文字山が東に、夕日が西に見える。煙草を1本取り出す。美味しいわけじゃないが、煙が手を這うのを見るのが好きだ。

今付き合っている彼女は煙草が嫌いだ。一度はやめたが、今は隠れて吸っている。バレているのかは分からないが、コソコ

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