記事一覧
2024年3月の歌 題「食器」
亡き父の選んでくれし飯茶碗のぬくもりを手に今日を始める
つやつやと輝く庭の片隅に猫のタイガー静かに眠る
筒井みさ子
魚好きの夫を思いて夕餉には食器あれこれ並ぶ食卓
中年のブーゲンビリアは年毎に精彩欠きて吾と競いぬ
原 葉
うるし塗りふうのチープなプラ皿にだいふく乗せて茶の友とする
倒壊の家屋に降り積む真っ白な雪に罪などないのだけれど
藤代敏江
客用の器は棚の奥の奥使われる時を待ち
アロハ通信#20 動物園を行く
2月11日、ハワイ短歌会の有志四名は、ホノルル動物園に吟行に出かけました。動物園はワイキキの中心部から15分ほどの場所に、上野動物園とほぼ同じ大きさの300エーカーあまりの広さの土地を占め、約220種類の動物や鳥たちが緑ゆたかな園内に飼育されています。
参加者の誰もが動物園は久しぶりで、リュックに帽子といういでたちに身を固め、期待に胸ふくらませて入口に集まりました。園内に入ると、美しいピンクのフ
2023年11月の歌 題「大」
大福のほっぺにバナナや蒸しパンを小さな口から詰め込む一歳
一日中ピアノの響くキッチンで我が物顔に歩くゴキブリ
大室やよい
また一人励ましくれる人逝きぬ 庇護の大きさを知る事務所終い
自転車の前後と背中に子をのせてママはこぐこぐ仕事に急ぐ
小野貴子
大いなる自然の力よ大地揺れ宇宙の謎に思いを馳せる
大好きなきみの笑顔を見るために寄り道をしてチョコレートを買う
小島夢子
大い
アロハ通信#17 エレファントイヤー
エレファントイヤーはアロカシアという種に属する植物です。「象の耳」と名がついただけあって、里芋の葉によく似たハート形の葉をしています。巨大な里芋という感じですが、毒性があるので食べられません。従ってクワズイモ、という日本名がついています。ハワイで見られるエレファントイヤーの葉は、里芋の葉の五倍はあるような大きさで、雨が降れば傘になりそうです。人の背丈くらいの高さになり、水芭蕉に似た花を地面近くに咲
もっとみる2023年9月の選歌
黒焦げのバニヤンの木の声がする泣いてたまるか再び芽吹くさ
関本なつ
「気をつけて」車道の我に言いながら目の前の棒にぶつかる夫
大室やよい
電線に掛かりて朝の月淡し「昨夜(ゆうべ)はごめん」と夫にメールす
鵜川登旨
手を触れればブルーベリーのホロホロと落ちてバケツの重み増し行く
岡まなみ
秋風を待ちきれぬのか虫の声熱気の冷めぬ夜の庭より
森田郁代
蔓さきに目の
2023年10月の歌 テーマ(空港、駅)
ハワイへと嫁ぎゆく吾(あ)を見送りて母は声上げ泣きぬと聞きたり
高台の病院に並ぶ窓灯りそれぞれの窓にそれぞれの訳
鵜川登旨
「孫の手」の用途を説明する夫に笑いをこらえる保安検査員
ケンカする訳は色々あるけれど口がなければ「喧嘩」にならない
大室やよい
乗り換えのゲートを見つけて腰下ろし案じて待ちいる娘にラインす にわとりは網戸の外に猫は内に向かい合い