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2023年11月の歌 題「大」

大福のほっぺにバナナや蒸しパンを小さな口から詰め込む一歳    
一日中ピアノの響くキッチンで我が物顔に歩くゴキブリ
大室やよい

また一人励ましくれる人逝きぬ 庇護の大きさを知る事務所終い
自転車の前後と背中に子をのせてママはこぐこぐ仕事に急ぐ
小野貴子

大いなる自然の力よ大地揺れ宇宙の謎に思いを馳せる  
大好きなきみの笑顔を見るために寄り道をしてチョコレートを買う 
小島夢子

大いなる飯桐(いいぎり)の木に赫赫と午後の陽に照る飯桐の実は
上水のフェンスを絡みし野葡萄の実はそれぞれに自己の色持つ
近藤秀子

大きなる網を広げし蜘蛛の巣にからめとられし虫の残骸
登山道ふと見上げればアケビ蔓 風にゆれてる紫の実
関本なつ

大きくね開いた心爽やかにしあわせ受ける大きなお皿
すぐに死ぬ寿命の長さ短くもはかなさのゆえ大事に生きる
田中えり

滑走路に大型ジェットの重たげに機首を空へと向け上りゆく
バイバイと笑顔で幼児は画面から光とともにスイと消えたり
筒井みさ子

大いなる夕日彼方に消えてゆきだれもかれもが日輪のもと 
色あせし風鈴なれど風うけてカラコロカラと音流れゆく
原 葉 

新しい服はいつでも大き過ぎ入学写真のまじめ顔
日曜のどんより沈む夕暮れに笑いをくれた笑点大喜利
藤代敏江

英国のチャールス三世王様となりぬ修道院にて七十年ぶり        参加者は小雨に濡れおり国民も世界の高官も宮様までも        
三浦アンナ

電線で品定めするかカラスたち日ごと色づく大きな柿を      
酷暑のなか育てくれたる人を思う新米の香を楽しむ夕餉に    
森田郁代

大好きなゴン太と母の遺影に向かいありがとうねと朝晩話す       
朝露に光の射して輝ける草に見とれてシューズを濡らす      
山下ふみ子

組み合わせし大文字小文字のパスワード孫の初語にコンピュータ開く
柿の木に名残の秋の実がふたつ眺めいる間に夕闇包む
楽満眞美

大幅に痩せた姿を夢見ては日々筋トレと糖質制限 
傍らでまどろむ夫の手を取りて家族の旅路に思いを馳せる 
六甲もこ

亡き母の作りし黒豆艶々と大きな粒に笑顔映れる 
スパゲティをパスタと呼べばハイカラなイタリアの風を感じてみたり 
伊藤美枝子

夕光るカタリナ島にさりげなく別れを言いし人を忘れず
風薫るパサデナ街の道すがら汗ばむ手をとり君を知り初む
今森貞雄

大逆転を果たし勝利の一手指す藤井聡太の指は震えず   
八冠に沸き立つ瀬戸の人々と共に祝いのくす玉を割る   
鵜川登旨


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