2024年1月の歌
声に出し慰められたい甘えかも傷ついたようにわざと黙(もだ)しぬ
迷い道何をすべきか問う夜に星が答えを静かに囁く
小島夢子
子供の頃の思い出
新しい下駄音高く初詣吐く息白く鳥居をくぐる
寒風にかたい蕾はゆらゆらとしばし夢見つ春を待ちいる
関本なつ
夢のようあり得ぬことが起こる時うれしい自分しあわせずくし
しあわせは無限にくるよどこまでも想像越えてすべてを越えて
田中えり
クリスマスに
リモートでしばしば会いし孫は吾の顔を見るなり走り寄りたり
幼子が走り回れば首にかくる鈴の音(ね)遠のきまた近づけり
筒井みさ子
タンポポの小花群れ咲く裏通り三毛ねこ一匹通り過ぎゆく
雑煮餅数を聞き入る父の声夢の中でも父は餅焼く
原 葉
真ん中で寝ている猫に遠慮してベッドの端に身を横たえる
三ページぐらいまでなら気合い入れきれいに使う新品ノート
藤代敏江
恒例の我が社のXマスパーティーは幹事を悩ます芸達者多し 我先にと芸を磨きしスタッフは呑んで踊って宴たけなわなり
三浦アンナ
いくつものプレートに乗る島であると突き付けられたる年の始まり
うつむきて歩けばほのかに蝋梅の香のして時の訪れを知る
森田郁代
能登地震寒風の中立ち尽くす妻子失くせし人を見て泣く
冷え込みに鍋をつつきて熱き風呂布団にもぐるもニュースに寝付けず
山下ふみ子
こだわりの君に見つけしダークチョコわれの好みのアーモンド入り
蕎麦すする家族の威勢よき音に鴨だし漂う冬の団欒
楽満眞美
華やかな季節も過ぎてため息とともに財布の紐締めていく
オフィスビルの大きなツリーが仕舞われて何事もなく日々は過ぎゆく
六甲もこ
天災と事故に明けたる辰年に龍は暴れん日本の国に
はや我は七十代に入りしも年の初めを憧れて待つ
伊藤美枝子
アンニュイな一日の終わりに犬を連れ月の明るき夜へ踏み出す
ブロワーの音に会話はかき消され夫と黙して海に向きたり
鵜川登旨
またひとつ齢とるあした 年々にむきだしになる私という人
年明けの地震や事故は「目をさませ」 私たちへの再度の警告
小野貴子
演奏を終えて眠れぬ夜の二時夫と茶漬けで打ち上げをする
ご褒美は光る窓辺のパンケーキひときわ軽くほわっと甘い
大室やよい
ホリーデー後体重計の示したり非常時の備え十分ありと
宿題のスケッチせんと茄子見つめ初めて気付くその曲線美
岡まなみ
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